2 ミステリーの五つのポイント
ミステリーを創作するときには「キャラクター」「世界観」「ストーリー展開」「トリック」「文章」の五つの点に、気を配るべきでしょう。
それで「トリック」と申しましたが、実はミステリーに「トリック」は必ずしも必要ではなくて……というと、語弊がありますな。トリックの定義が曖昧で困りますが……探偵や刑事を欺くための、驚くべき犯罪の手段というようなものは必要でないわけです。
事件が起きる。犯人が分からない。これで基本形は大丈夫です。そこには「犯人は誰か?」という立派な謎がありますから、ミステリーとして成立しているわけです。
犯人が手品みたいなトリックを使わないでも、犯罪の手口があって、事件が起こったのであれば、そこにはトリックがあると言って、差し支えないと思うわけです。
僕は、さらにミステリーの要素としては「トリック」「ロジック」「ハプニング」の三点こそ抑えておくべきと思っています。
ところが、これも何一つなくても良いと思うのです。つまり、氷で人を刺し殺す必要もなければ、足跡から犯人の特徴を割り出す必要もなく、犯人がうっかり触ってもいない彫刻を拭いて、現場に指紋を残してゆく必要もないわけです。
だから、要するに「謎があり、それが解決する」これが基本の基本だと思うんです。そして、ロジックをこねまわさなくても、警察の捜査の末に目撃者を見つけ出しても、犯人が勝手に自供しても良いのだと思うのです。
なぜ、僕がこういうことを思ったのかと言いますと、つまり、ごりごりのミステリーではなくても、面白いものが沢山あるからです。
トリックがあって、ロジックがあって、ハプニングがあってと、それは立派ですし、僕なんかそういう作品が大好きですけど、意外な真相だけでも、かなり面白くなると思うんです。ロジックで「AだからBであり、BだからCだ。Cだから、Xは犯人ではありえない。よってYが犯人」というようなことを必ずやる必要はない。
反対に言えば、こういうようなロジックはあって、真相は、まるで意外ではないという作品があっても良いのです。
それでは「キャラクター」「世界観」「ストーリー展開」「文章」だけで良いじゃないかと思われるかもしれない。でも、どっかでミステリー要素がなければつまらない。それをここでは「トリック」と捉えたわけです。
基本は「謎があり、真相がある」これで良いと思います。
ミステリーはさらに「謎さえあればいい」と言い切ることもできます。
それについては、またいずれ、述べたいと思います。




