5.タイトル
世の中そんなに上手くはいかないみたいだった。
例えば、お隣の家の星奈さんよー、みたいなことは無かった。
俺は少しふてくされて、どうでもいいや、と思った。
「守理。」
もう一回自分の名前を確認する。
ん?
ゆゆ子?
「ゆゆ子、お前はがんばったよ。てゆうか医者。」
は?
「だ、大丈夫よ、これくらい、いた!!!」
え?
なにが?
なにが?
なにが?
帝王切開?
麻酔切れだろ?
だから痛み止めの分痛い?
痛くないはずないから、全く痛く無かった?
どっちだ?
俺への愛はどこにあったんだ?
「…それによって対処が……いやでも、愛情による痛みの分け前なんか………よし。」
俺は素早く父さんが付けていたマフラーを手に取る。
母さんの腰に巻き付けて、腹の中を見て、俺以外に子供を、つまり双子を産まないことを確認するとともに、ん?
無駄な糸が入っている。
危ないやつだ。絶対。
あとで神経細胞に絡まったら、体内で腫瘍が出来るだろう。
治す。
俺は素早く注射器を奪い、先の尖った部分で糸を完璧に掬い取る。
取れた!
「は、はあ、はあ。」
「医者はお前じゃないんだぞ、父さんは、別に、おま、お前を怒ったんじゃな」
そんなこと今はいい!
俺は目の前が真っ赤になる。
血だけが嫌に深刻に俺の頭を威圧した。
「………父さん、ごめん。」
俺はまた泣いた。
勝手なことしてる。
それに、母さんが死んでたらどうするんだ。
「そんなことありません!!」
え?




