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4.欠乏症
強くなるってことは、鍛錬だよな?
たんれん。
うん。
警察官になるとか?
あれ、魔王ってどこだっけ?
まあいいや。
今はな。
「あ、戻ったの?守理。」父さんだ。母さんも居る。俺は死んだんだ。
間違えじゃない。
ゲームのし過ぎだ。
まだショックで頭がぼんやりとしている俺は、あーとかうーとか言っていた。
「どうした?泣かないか、守理。」
「泣かないのねー、いいのよー?」
お父さんとお母さんだ。
怖がってはいられない。
魔王に立ち向かうのは普通なら勇者だけど…俺はそんな出来のいい人間じゃないから、選ばれしものじゃないから……
でも、仇なすってことは、敵対してるってことだ。ならつまり、俺は魔王対とした人間で…もしかしたら勇者?
でもそれでいい。
振り返らないんだ。
覚悟がストンと胸に落ちた。
ヒロイン誰だよ。
聖女か?
「…守理。」
一つずつ覚えていかないといけない。
まず名前。
「藻ノ、守理よ。」
「もー?」
もの?
難しい漢字だな。
そんな感じがする。
書けるかな。
学校には行くよな。
うん。
えっと……えっと。
まずいな、俺。
てかだから早吹 一志。
は、死んだ。
俺が居ない。




