19.大層な欲
殺すよ?
「…星奈。入学おめでと。」
「何それ。ありがと!」
堕とされた闇の中では、人はみんな…
「星条 星奈は、……」
「私は、一吹さんに会ったよ。」
「会った?俺に?」
暗闇から見た時の目は、明る過ぎて目を焼くんだ。そして何も生み出しはしない。
「綺麗すぎる。」
「え?」
「藻ノくんの言葉は綺麗すぎるよ。」
え?
光から見た時の暗闇の目は…まるで集積し間違えられた誤字のように、光を熱く焼き抱く。
「じゃ、死ねたら許してやるよ。」
「死ぬ?なんで?」
「なんて普通なの。」
日常と時間を過ごすとき、時間だけが邪魔なのは。
ああ。
あの日暗闇に取り憑かれた僕は、二度と戻れない光も知った。
理解と把握。
「あ、ところで。」
「うん。」
僕は確かに照りつけるような汚い心を知っているけど、照らし合わせるような他人同士の痛みは、そのまま消えていけばただの怒りで片付けられる。
「俺、入試満点だった。俺的に。」
「かっこいいー」
星奈が笑わない。
俺は焦った。
自己採点は95点だった120点満点のテストは、実質は86点だったが合格した。
痛い。
「星条って家はね、出来なくてもいいの。」
「う、うん。」
合わせていく。
それなに?
中学校一年生になった。あ、やば。
答案用紙忘れた。
「俺、忘れ物取ってくる。」
「うん。」
先生に聞けば分かるだろう。
もう押収されているだろうから。
無事見つかった答案用紙と解答用紙を持ち出して藻ノ 守理と書かれたのをぼんやりと見る。
「涙が出るようなら大丈夫だな。」
「あ、星条。」
「うん。」
…笑った。




