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18.君の笑わせ方

その日は。


暗くて。


真っ暗で、だから、誰がいたかも分からなかった。だからって薄暗い路地裏で寝るとゲームが壊されて人に見つかるので、俺はいつも通り家の四畳半に横たわった。

虫が出たら無造作に笑い掛けては殺されるのを見ていた。


食べ物ばかりは許されなくて、いつも古いアイスばかり食べていた。

倒されていく過程を見守るようにしていると、俺はまるで子供のようになる。


ソロモンの知恵

引用

あるところ王のソロモンは、二人の女性を呼び出しました。二人の女性は二人とも子供を身籠り、十月十日間は安全でしたが、生まれてすぐに片方の女の子供は、もう片方の女に寝ている時に寄りかかられ死にました。双子だったのです。


沙羅双樹 引用

馬車の中から釈迦を産む前のある女は身分が低く、袖の下には日本の実林檎を携えていました。林檎を赤ん坊だと偽り、袖の下から出し、子供の方を養わなくていいようにして、馬車の外に投げ捨てました。



俺は暗闇から映る、殴られていく母を見ていて、その人がずっと吸ってる煙草も、足だけ使わない動作も、まるで全てが予定調和のようで、死にかけになった僕を助ける手が真っ白で綺麗で、そのまま運ばれて行った先は病院ではなくただの民家で、笑い掛けたその人達は暗闇を知っている目をしていて、僕に萱という名前を教えた。

……そのときに勘違いしたんだろうな。


早吹じゃなくて、一吹だった。

一吹 早志、それが転生する前の俺の名前だった。


倒れた。

心が真暗に覆われて、ころころ転がっていると単調さに目眩も全て何もかもを忘れる気がして、

「早志。」

「ひっ。」


呼ばれて目を開けると目が合って、相手の発熱しない体温を思わせて僕は身体が文字列の宝庫のようになって消えていくようだった。

「あはは。」

僕が笑うと、つまらなそうに痛む身体をよじって、部屋に転んだ。



……

林檎があったので不思議に思った。


「これ、なんですか?」

「デザート。描くんだよ。」


「…ふうん。」

尚のこと不思議に思い、僕は星奈を振り返った。

「あ、はい。」

笑っていない。


星奈は色んなことを分かってくれるだろうか。

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