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17.触感
卒業に遭って俺は人より近くの席に座り壇上も見ずにぼんやりとしていた。
暇潰しに携帯を見ている教師が数人いた。
歯を噛み締めると目の前が真っ赤になった。
「壊してやる。」
「え?」
「だって。」
星奈はなぜかいつも孤独に堪え兼ねるような目をしていた。周りの奴らは段々まともにもなっていった。
「私はね、明日になったら服を買うな。藻ノくんは?」
「…明日話す。」
冗談じゃない。密度の濃い気配が目の前をくすんで揺れていって、読み過ぎた小説のようだ。
酒は成人式の日にしか飲んだ事なかったが、また溺れてしまいそうだ。
どうせ帰る場所なんかない。
真っ暗闇に赤が照らして、捨てられた名前を笑っている。
笑っている。
「で、それでね、卒業式なんだって。」
星奈は幼い。
そういえば、と親の姿を探す。
藻ノ 筒木と藻ノ 由々子は、やっとのことで体育館に集まっていた。
教師たちから探されて話しかけられている。
ここからなら話は聞こえない。
卒業式が終わり、俺は椅子の鉄パイプを触り、無造作に指で折った。
萱だけが見ていた。




