16.凛々
気付けば春も濃くなり、寒々しい空からは無数の光が乱行していた。
完璧に一人だった。
「お前なんなの!?」
「教えてあげない。」
え?
「魔王は私だ。」
?
「魔力の強い自我を持つ一吹 と、早吹というのがあって、冗談だとは思うが……」
おれ?
「早く死ねたらな。」
なに?
「二つの人格を統合させて、この世を一つの変化とするがな。」
なんだって?
「なに話してんですか。この俺に。」
「一吹家か早吹家か知りたかろうと思ってな、お前らなら。」
「早吹ではないです。そんな花ないし。」
「そうか。」
真っ暗闇から呼びかける声がする。
「そうか。ならば死ね。」
先のことまでは分かりませんよ。
俺が魔王になれば、永久不滅の命が手に入るんだ。
だれ?
萱?
なんで、何考えてんの?
別に良いけど…俺。
「はあ、全く…」
え?
「これだから前世の記憶のない阿呆どもは。」
なんだ。
「まるで自分の立場を分かっていないな。」
闇。
そういうことか。
「闇がある人間は強い。比較などないくらいにな。」
わ!
ここはどこだ?
戻された?
教室。
いつか思い出すだろうか。
「黙れ……」
え?
あ。
「萱だよ。覚えてる?守理くん。」
「よく分かったな、俺の学校。」
「うん。書いてあったからね、入院資料に。卒業式も間近だね。」
「まあね。さんきゅ」
俺は何もしなかった訳じゃない。
ここ最近も練習くらいはしていたし、弱くなりかける精神の話とか、聞かないこともなかった。
「で。」
「うん。」
人の多さが何を物語っているかわからない訳ではなかったが、俺は出来る限り気配を消した。授業もあと少しで終了だ。
春が来ていた。




