【幕間】 報告
今回は番外編です。ここで一区切りつけようかなと
それでは、どうぞ
その日オーゼンは悠斗とバーキィの二人と話した後、ギルドの二階に上がってある部屋に向かった。
カルンとブブルのギルドは大きさは違えど、建物の構造は似たようなものだ。オーゼンは迷わずその部屋に着くと、扉をノックした。
「オーゼンです。入ってもよろしいですか?」
「入っていいよ」
凛とした声が聞こえてくる。
その言葉を確認したオーゼンは扉を開けた。
そこにいたのは――ブブルのギルド長カレンだ。
非常に整った顔立ちに金髪のロングストレート。女性にしては背が高い、スラッとした体型をしている。
種族はエルフだ。そのため、見た目は若いがグロウズと同じかそれ以上は歳を重ねている。
机の席に座っているカレンに声をかけようとして、その横にいる人物に気づく。
「グロウズさん。いたんですね」
「うむ、少しカレンと話すことがあってな」
グロウズとカレンは元冒険者仲間だ。パーティ―を組んで依頼を受けることがほとんどだった。
その時の交友は今でも続いている。他にも仲間はいるが、カレン以外は他国かそれ以上に離れたところにいるため、簡単に会うことは出来ない。そのため、たまにカレンのいるブブルへグロウズは訪れていた。
もっとも、ギルドの仕事もあるため長居は出来ない。今回は別だったりするのだが。
オーゼンも一応顔見知りだったりする。依頼でこの街に来ると一度は顏を会わせるのだ。
「いつもの世間話をしていただよ。それでオーゼン。私になにか用?」
真っ直ぐとした瞳でオーゼンを見つめてくる。
「先日の魔物の襲撃についてです」
「ああ、無事に撃退出来てよかったよ。私も街にいたなら加勢したんだけどね。どうやら私がいなくても問題なかったようね」
横にいるグロウズを一瞬見て答えた。
カレンはギルドの仕事で王都に出張していたのだ。そのため、魔物襲撃について知ったのは昨日だった。
「そうですね。他の冒険者達がいたからなんとかなりました。カルンからも駆けつけてくれて感謝してます、グロウズさん」
グロウズに礼をする。
「当たり前だ。ブブルには多くの冒険者の身内がいる。それにカレンがいる街だ。私が駆けつけないわけがない」
当然とばかりに頷きながら返した。
カレンは苦笑した。
「その時私は街にいなかったんだけどね。それに、護られるほど私は鈍ってないよ」
その瞬間、カレンの体から闘気が噴き出た。
部屋の中がピリピリとし、オーゼンは冷や汗が出る。
「……流石、【森の狂戦士】ですね。まだまだ現役でもいけるのでは?」
「冗談。今の時代は私より強い冒険者なんていっぱいいるでしょ? それにその呼び名、私は好きじゃないわ」
「エルフという種族なのに近接戦闘に長けたあなたにピッタリでは?」
「……私は魔術より直接戦う方が楽しいわ」
カレンは拗ねたような声でそう答えた。
「その思考から既にエルフのそれじゃないと僕は思うんですが……」
若干呆れが籠った声で呟いた。
「はいはい、この話はおしまい。重要な事を私に報告しに来たんでしょ?」
やや強引に話を戻すと、スッと目を細めてオーゼンを見る。
「よくわかりましたね」
「オーゼンがいちいちここまで来るときは大体重要な件が多いからね。まぁだいたい予想はついてるよ」
机に置いてある紙を手に取った。
「予想通り、さっきも話した魔物の襲撃についてです」
「ゴブリンとオーガの混成。それに巨人か……」
「はい。それらは冒険者達の活躍で撃退できたので問題はなかったです。僕が報告したいのはその魔物たちを指揮していた者についてです」
その言葉に疑問を覚えるカレン。
「その言い方だと人が魔物を指揮していたように聞こえるけど?」
「確証はないですが、恐らく人に近い種族が指揮を執っていたかと」
「へぇ……。で、そいつは見つけられたの?」
オーゼンならそれだけで終わるはずがない。という確信を持っているカレン。
その言葉に頷き、オーゼンは説明していく。
「バーキィと一緒に森へ入ったところ、少し奥に魔物に守られて佇んでいるのを発見しました。そのままバーキィが囮を買って出て僕がその者を追いました。そこから偶然会話ができたんですが、こちらが理解できる人語を喋っていたため人に近い種族だと、僕は思いましたね」
あの時の事を思い出すオーゼン。少し眉を顰めた。
あの嘲笑混じりの声を思い出すと沸々と怒りが湧いてくる。だが、二人がいるため怒りを鎮める。
「なるほどね。確かに重要な報告だったわ。ありがとう。他にも気になる点はあったかしら?」
「そうですね……話した時の性別は男とわかりました。あと、フードを被っていたので顏は分からなかったですが、肌の色は青かったですね……そんな種族、僕は知りませんが」
詳しくローブの男の情報を話していく。
「肌が青い、ねぇ。私もそんな種族は見たことがないわね。他にはない?」
そう言われてオーゼンは思い出す。悠斗が言っていたことだ。
「あと一つあります。僕の仲間が言ってたことなんですが、敵の巨人の大将が人語を喋ったそうです」
「魔物が人語を……?」
カレンは何かを考えるように腕を組んだ。
「……私じゃわからないわね。それも含めて近いうちに王都の本部へ報告しに行くわ。もしかしたらあそこにいる研究者ならなにかわかるかも。それでいいかしら?」
「はい。気に留めてもらえれば十分です。以上僕からの報告でした」
そこで息を吐いてリラックスするオーゼン。
カレンは苦笑してイスの背もたれに体重をかけた。
「話は終わったか? ならば私はカレンと話の続きがしたいのだが……」
今まで黙っていたグロウズが二人に声をかけた。
特に口出ししなかったのはオーゼンを信用しているためだ。
そもそもグロウズは戦闘に集中していたため、周りの情報は皆無と言ってもいいだろう。
なので口出し以前に文句など言えるほど情報は持っていない。
「そうですね。じゃあ僕はこれで」
踵を返して扉に向かっていく。
「ああ。またなオーゼン」
「またね」
背中に別れの言葉をかけられてオーゼンは退室した。
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その後オーゼンはギルドを出て、悠斗とバーキィが泊まっているという宿へ向かった。
が、満室だったので別の宿で泊まることにした。夜も遅い。そう急がずとも明日でもいい。
そう思って就寝した。
そして翌日。今度こそ二人に会うため宿へ向かった。
宿の主人に二人の部屋の場所を聞く。だが、悠斗だけは既にいないと言われた。
とりあえず階段を上っていく。
「ここか」
扉の前に止まるとノックをする。
するとすぐに扉が開けられた。
「なんだ、オーゼンか。なんかようか?」
「いや特に用はないけど、ハルト君ってどこいったの?」
バーキィに尋ねる。
バーキィは頭をカリカリと掻いて、あくびをした。
「あー、確か朝早くにここに来たな。確か先にカルンへ戻るって言ってたぜ」
「なんだ、カルンに戻っちゃったんだ」
少しだけ落胆する。
この街を悠斗に案内しようかと思っていたオーゼンだった。
武具屋、道具屋、料理屋など色々とカルンより充実しているのだ。
「よくわかんねェけど急いでたみたいだから急用じゃねーか?」
「ふーん。ハルト君がいないならここに用はないや。じゃあね」
とりあえず昼食を食べてなにをするか考えるオーゼン。
考えながら下に降りていくオーゼンを見送ってバーキィが呟く。
「ったく、なんなんだあいつは……」
扉を閉めてベッドに戻っていった。
誤字や脱字、おかしな部分は気づき次第修正します。
近いうちに新しい作品投稿する予定です。
活動報告に乗せるので、見てくれると助かります。




