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紋章の勇者  作者: 新
二章 前兆
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【幕間】 報告

今回は番外編です。ここで一区切りつけようかなと


それでは、どうぞ

その日オーゼンは悠斗とバーキィの二人と話した後、ギルドの二階に上がってある部屋に向かった。

カルンとブブルのギルドは大きさは違えど、建物の構造は似たようなものだ。オーゼンは迷わずその部屋に着くと、扉をノックした。


「オーゼンです。入ってもよろしいですか?」

「入っていいよ」


凛とした声が聞こえてくる。

その言葉を確認したオーゼンは扉を開けた。

そこにいたのは――ブブルのギルド長カレンだ。

非常に整った顔立ちに金髪のロングストレート。女性にしては背が高い、スラッとした体型をしている。

種族はエルフだ。そのため、見た目は若いがグロウズと同じかそれ以上は歳を重ねている。


机の席に座っているカレンに声をかけようとして、その横にいる人物に気づく。


「グロウズさん。いたんですね」

「うむ、少しカレンと話すことがあってな」


グロウズとカレンは元冒険者仲間だ。パーティ―を組んで依頼を受けることがほとんどだった。

その時の交友は今でも続いている。他にも仲間はいるが、カレン以外は他国かそれ以上に離れたところにいるため、簡単に会うことは出来ない。そのため、たまにカレンのいるブブルへグロウズは訪れていた。

もっとも、ギルドの仕事もあるため長居は出来ない。今回は別だったりするのだが。

オーゼンも一応顔見知りだったりする。依頼でこの街に来ると一度は顏を会わせるのだ。


「いつもの世間話をしていただよ。それでオーゼン。私になにか用?」


真っ直ぐとした瞳でオーゼンを見つめてくる。


「先日の魔物の襲撃についてです」

「ああ、無事に撃退出来てよかったよ。私も街にいたなら加勢したんだけどね。どうやら私がいなくても問題なかったようね」


横にいるグロウズを一瞬見て答えた。

カレンはギルドの仕事で王都に出張していたのだ。そのため、魔物襲撃について知ったのは昨日だった。


「そうですね。他の冒険者達がいたからなんとかなりました。カルンからも駆けつけてくれて感謝してます、グロウズさん」


グロウズに礼をする。


「当たり前だ。ブブルには多くの冒険者の身内がいる。それにカレンがいる街だ。私が駆けつけないわけがない」


当然とばかりに頷きながら返した。

カレンは苦笑した。


「その時私は街にいなかったんだけどね。それに、護られるほど私は鈍ってないよ」


その瞬間、カレンの体から闘気が噴き出た。

部屋の中がピリピリとし、オーゼンは冷や汗が出る。


「……流石、【森の狂戦士】ですね。まだまだ現役でもいけるのでは?」

「冗談。今の時代は私より強い冒険者なんていっぱいいるでしょ? それにその呼び名、私は好きじゃないわ」

「エルフという種族なのに近接戦闘に長けたあなたにピッタリでは?」

「……私は魔術より直接戦う方が楽しいわ」


カレンは拗ねたような声でそう答えた。


「その思考から既にエルフのそれじゃないと僕は思うんですが……」


若干呆れが籠った声で呟いた。


「はいはい、この話はおしまい。重要な事を私に報告しに来たんでしょ?」


やや強引に話を戻すと、スッと目を細めてオーゼンを見る。


「よくわかりましたね」

「オーゼンがいちいちここまで来るときは大体重要な件が多いからね。まぁだいたい予想はついてるよ」


机に置いてある紙を手に取った。


「予想通り、さっきも話した魔物の襲撃についてです」

「ゴブリンとオーガの混成。それに巨人(サイクロプス)か……」

「はい。それらは冒険者達の活躍で撃退できたので問題はなかったです。僕が報告したいのはその魔物たちを指揮していた者についてです」


その言葉に疑問を覚えるカレン。


「その言い方だと人が魔物を指揮していたように聞こえるけど?」

「確証はないですが、恐らく人に近い種族が指揮を執っていたかと」

「へぇ……。で、そいつは見つけられたの?」


オーゼンならそれだけで終わるはずがない。という確信を持っているカレン。

その言葉に頷き、オーゼンは説明していく。


「バーキィと一緒に森へ入ったところ、少し奥に魔物に守られて佇んでいるのを発見しました。そのままバーキィが囮を買って出て僕がその者を追いました。そこから偶然会話ができたんですが、こちらが理解できる人語を喋っていたため人に近い種族だと、僕は思いましたね」


あの時の事を思い出すオーゼン。少し眉を(しか)めた。

あの嘲笑混じりの声を思い出すと沸々と怒りが湧いてくる。だが、二人がいるため怒りを鎮める。


「なるほどね。確かに重要な報告だったわ。ありがとう。他にも気になる点はあったかしら?」

「そうですね……話した時の性別は男とわかりました。あと、フードを被っていたので顏は分からなかったですが、肌の色は青かったですね……そんな種族、僕は知りませんが」


詳しくローブの男の情報を話していく。


「肌が青い、ねぇ。私もそんな種族は見たことがないわね。他にはない?」


そう言われてオーゼンは思い出す。悠斗が言っていたことだ。


「あと一つあります。僕の仲間が言ってたことなんですが、敵の巨人(サイクロプス)の大将が人語を喋ったそうです」

「魔物が人語を……?」


カレンは何かを考えるように腕を組んだ。


「……私じゃわからないわね。それも含めて近いうちに王都の本部へ報告しに行くわ。もしかしたらあそこにいる研究者ならなにかわかるかも。それでいいかしら?」

「はい。気に留めてもらえれば十分です。以上僕からの報告でした」


そこで息を吐いてリラックスするオーゼン。

カレンは苦笑してイスの背もたれに体重をかけた。


「話は終わったか? ならば私はカレンと話の続きがしたいのだが……」

 

今まで黙っていたグロウズが二人に声をかけた。

特に口出ししなかったのはオーゼンを信用しているためだ。

そもそもグロウズは戦闘に集中していたため、周りの情報は皆無と言ってもいいだろう。

なので口出し以前に文句など言えるほど情報は持っていない。


「そうですね。じゃあ僕はこれで」


踵を返して扉に向かっていく。


「ああ。またなオーゼン」

「またね」


背中に別れの言葉をかけられてオーゼンは退室した。



~~~~~~~~~~~~~~~



その後オーゼンはギルドを出て、悠斗とバーキィが泊まっているという宿へ向かった。

が、満室だったので別の宿で泊まることにした。夜も遅い。そう急がずとも明日でもいい。

そう思って就寝した。

そして翌日。今度こそ二人に会うため宿へ向かった。

宿の主人に二人の部屋の場所を聞く。だが、悠斗だけは既にいないと言われた。

とりあえず階段を上っていく。


「ここか」


扉の前に止まるとノックをする。

するとすぐに扉が開けられた。


「なんだ、オーゼンか。なんかようか?」

「いや特に用はないけど、ハルト君ってどこいったの?」


バーキィに尋ねる。

バーキィは頭をカリカリと掻いて、あくびをした。


「あー、確か朝早くにここに来たな。確か先にカルンへ戻るって言ってたぜ」

「なんだ、カルンに戻っちゃったんだ」


少しだけ落胆する。

この街を悠斗に案内しようかと思っていたオーゼンだった。

武具屋、道具屋、料理屋など色々とカルンより充実しているのだ。


「よくわかんねェけど急いでたみたいだから急用じゃねーか?」

「ふーん。ハルト君がいないならここに用はないや。じゃあね」


とりあえず昼食を食べてなにをするか考えるオーゼン。

考えながら下に降りていくオーゼンを見送ってバーキィが呟く。


「ったく、なんなんだあいつは……」


扉を閉めてベッドに戻っていった。

誤字や脱字、おかしな部分は気づき次第修正します。


近いうちに新しい作品投稿する予定です。

活動報告に乗せるので、見てくれると助かります。

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