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紋章の勇者  作者: 新
二章 前兆
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39話 カルンへの帰還

昨日は新プロローグだけ投稿でしたね。

読んでくれた人はいるのかな?

まぁそれは置いておきます。


それでは、どうぞ


翌日の朝。悠斗はいつもの時刻に起床する。

背伸びをして床に降り、昨日の風呂の事を思い出した。


(昨日は久しぶりのお風呂に入ったけど、気持ちよかったなあ……。カルンにもあったらよかったのに……)


この世界の平民は基本的に風呂に入るという習慣がない。というより、風呂がないというのが正しいだろう。

ほとんどのものは濡れた布で体を拭くという簡単な行為しかしない。週に一度水浴びなどもするが、完全に汚れが取れるわけではない。悠斗は毎日水浴びをしていたが、やはり暖かい風呂に入りたいと思うのは日本人の性だ。



(この街に住みたいなぁ……けど、王都にも行かないといけないし、カルンにはお世話になってる人がいっぱいいるから無理そうだなぁ…)


悠斗はそこで水浴びの事を思い出すと、溜息を吐いた。


(冷たい水で体を洗う、流石に続けるとお風呂が恋しくなってくる……。それに、前みたいにシュカと鉢合わせしちゃったらそれこそなぁ……あれ?)


そこで悠斗はある事に気づく。


「そういえば、カルンを出て何日経ったっけ……。途中で野宿して1日、戦闘の怪我で寝てて1日、そして今日が3日……!」


指で数えながら考え、気づいた。


「シュカに渡した宿代は3日分だ! 流石に女将さんが宿代払えないからって追い出すとは思えないけど、心配だな……あの二人はまだやることがあるみたいだし、僕だけでも帰るか……?」


悠斗は一瞬悩んだが、すぐにカルンの街へ帰ることを決めた。


(僕が世話をするって言ったのにほったらかしは流石に男として駄目だと思う。うん、カルンに戻ろう)


そうと決まれば悠斗は部屋を出る。

悠斗は一直線にある部屋へ向かった。

その部屋の前に止まると、扉をノックした。

だが、その部屋の主は出てこない。仕方ないので呼びかけることにする悠斗。


「バーキィさーん! ちょっといいですかー?」


声を大きくして呼びかけた。

その場で待つこと数十秒。扉がゆっくりと開かれる。


「あー……? こんな早い時間になんか用かハルトォ? 」


目を擦りながら出てきたバーキィ。どうやら寝ていたらしい。

悠斗が起床する時間は普通の人より数時間ほど早いのだ。

というのも、日本にいた頃の癖であったりする。


バーキィは眠そうな顔で悠斗の言葉を待っていた。


「えっと、僕は先にカルンへ戻ろうと思うんですけど、バーキィさんはどうしますか?」

「……まだやることがあるからなぁ……。俺は残る……」


悠斗の言葉にボーっとしながら返事をした。

今にも倒れて寝てしまいそうに体がふらついていた。


「えっと、オーゼンさんも用事があったりするんでしょうか?」


慌てて悠斗はオーゼンのことも尋ねた。


「そう、だな……。多分ギルドで色々あるだろ……。もう寝ていいか……? ふわぁ……」


目を半開きにしながらあくびをし、悠斗に聞いた。


「はい、早い時間にすいません。それじゃあ僕は先に帰らせてもらいますね」

「おう……。気ィつけてなァ……俺は寝る」


その言葉を残してバーキィは扉を閉めた。


「はい、おやすみなさい」


小さく扉の前で呟いて、悠斗は階段を降りて宿を出て行った。


悠斗は宿を出ると、出口の門へ向かい外を少し歩いたところで立ち止まっていた。


「ここらへんでいいかな、出来るだけ急いで行きたいし……魔闘変化(チェンジ)


悠斗の体から魔力が減り、闘気が爆発的に増えた。

そのまま体に闘気を纏わせていく。手を握ったり開いたりを繰り返し、ジャンプもしてみる。


「っし! 怪我から二日経ったら流石に治ってるか。我ながら便利なもんだぜ」


怪我の確認をしていたが、どうやら骨の痛みも無くなり完治していた。

軽く運動をして体を温めると、森の方へ顏を向ける。


「確か、あっちから来たんだったな。とりあえず足に集中させて行くか」


闘気を足に纏わせていく。もちろん加減をしているので消耗も軽い。

纏わせた後、森に向かって走っていく。かなりの速度で走る。

先日のように、全身に闘気を纏わせているわけではないが、足だけに集中するとそれだけ走る速度が上がる。

ただ、薄い闘気を体に纏っているので、軽い打撃程度なら防御してくれる。


「この速さだとカルンまで数時間ってとこか……。魔物は無視して突っ走るとするか」


悠斗は森の中を走っていく。たまにゴブリンやビッグラットが襲ってくるが、悠斗の速さについていけずその姿を見ただけで何もできない。そのため、安全に走っていられる。

道中に冒険者らしき団体とすれ違ったが、驚きの表情を浮かべていた。

特に気にせず追い抜いていった。そして、悠斗がカルンに着いたのは走ってから三時間後だった。


~~~~~~~~~~~~~~~


「女将さん、シュカいますか?」


悠斗は街に着くとすぐに宿へ向かい、扉を開けて女将に尋ねた。


「あら、もう帰ってきたのかい? あの子ならギルドへ出かけてたよ」

「そうですか、ありがとうございます」


その言葉を聞くと礼を言って、すぐに宿を出て行った。


「なにをそんなに急いでるのかねぇ?」


残った女将は一人で不思議がっていた。




悠斗はギルドに向かっている。

途中、屋台の食べ物の誘惑に負けそうになるが、先ずはシュカだった。

自分から世話をすると宣言しておいて三日も放っておいてしまった、と悠斗は反省している。

緊急依頼で仕方なかったとはいえ、女の子を一人で居させるのが悠斗には心苦しかった。

ついさっきまでは忘れていたのだが。だが、悠斗は精神的にはまだ子供だ。二度の激しい戦闘で肉体的にも精神的にも疲労が溜まっていた。肉体的疲労は紋章の力【高疲労回復】が働いているため解消されている。

昨日の風呂で疲れを癒したため、精神的に余裕を持つことができたのだ。

紋章の力があるとはいえ、悠斗はただの高校生。

鍛えられた歴戦の戦士とは違う。他の事まで気が回らないのは仕方がないだろう。


ギルドにつくと、周りを見てシュカがいるか探していた。

だが、見当たらない。そうなると人に聞くのが一番だ。

悠斗は受付のリンに聞くことにした。


「あの、リンさん」

「ハルト君! 無事でよかったよ!」


悠斗を見たリンは、受付から上半身だけを出して悠斗を抱きしめた。丁度、悠斗の顏にリンの胸が当たる。

抱きしめられた悠斗は、顏が真っ赤になった。


「あのリンさん!? ちょっと聞きたいことがあるので離してもらっても!?」


腕を叩きながら必至に声を出す。緊張で少し声が上擦っているが、リンには伝わった。


「あ、ごめんね。ハルト君の事すごく心配してたから……そういえば、他の冒険者はいないの?」


ギルド内を見たリンだが、緊急依頼に行けなかった冒険者しか見えない。


「僕だけ先に帰ってきたんですよ」

「あっそうなんだ? でも、無事でよかったわ。ハルト君が怪我しないって事は魔物の規模は大したことなかったのね」

「いえ、結構いましたよ? けど、その話は今度します。今はシュカについて聞きたいんですが、ギルドに来ましたか?」


不安げな顏でリンに尋ねる。

ギルドにいない場合の事を考えると心配になってきた悠斗。


「聞きたいことってそれね。確かにギルドへ来て、真っ先にここへ向かってきたわね。けど、その時の担当は私じゃなくて……」

「はいはーい。私だよ」


リンの後ろからひょこっと現れたエリナ。

どうやら後ろで悠斗達の会話を聞いていたようだ。


「そうそう、エリナが担当だったのよ。私は後ろで見てたの。ていうかあんた、聞いてたんなら早めに出てきなさいよ」


エリナをジト目で睨む。


「ごめんごめん。二人の会話の邪魔したらダメかなーってね。でも、ハルト君が無事で私も安心したよ~。リンなんて心配過ぎて仕事が疎かになってさ~」


飄々とした風に会話に参加するエリナ。


「ちょっとエリナ! そんなこと言わなくていいのよ! ていうかあんたも仕事中ボーっとしてたでしょ!」

「いやいや、アレは疲れたから休憩してただけだよ?」


リンの思わぬ反撃に、言い訳をするエリナ。

相変わらずの二人に、悠斗は苦笑を漏らした。


(やっぱりこの二人は仲がいいな)


少しの間二人の様子を見ていた悠斗。ようやく二人の言い合いが終わると、エリナが悠斗に声をかける。


「あーごめんね。シュカちゃんだっけ? あのヒューマン(・・・・・)の子なら、ここで冒険者登録していったよ」


その言葉を聞いて悠斗は少し驚く。

冒険者になろうと考えるような子ではない。悠斗はそんなイメージを持っていた。


「……シュカは登録してからどこに行ったんですか?」

「んーと、平原だね。ハルト君もしたと思うけど、ビッグラットの駆除だよ」

「ビッグラットの駆除……。ということはシュカは戦えるんですか?」


そう、最初にその依頼を受けれるということは、多少は戦えるということだ。

確かにシュカを助けた時、同じくらいの体格の気絶した悠斗をここまで運んできたのだ。腕力は相当あるだろう。


「うん。戦技を一つ使えるみたいだし、そんなに心配しなくてもいいんじゃない?」

「そうですね……。それで、いつ依頼を受けたんですか?」


少し納得してエリナに尋ねた。


「二時間くらい前かな。ギルドが開いてからすぐに来たんだよ。多分だけど、もうすぐ帰ってくるんじゃない? って噂をすればほら」


悠斗に答えた後、ギルドの出入り口を指さした。

そこには、銀髪の少女が立っていた。

腰の袋はパンパンに。腕には通常サイズのナイフが装着されていた。

そのまま受付へ歩いてくると、悠斗の方へ向かって


「おかえりなさい、ハルトさん」

「……ただいま」


安心した悠斗は笑顔になって言葉を返した。

誤字や脱字、おかしな部分は気づき次第修正します。


そのうち加筆するかも……。

10/26少し修正入れました。

次回の更新は明日の17時予定です。

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