38話 ブブルのギルドで&お風呂
昨日は投稿できなくてすいませんでした。
16時頃にアクセスしてくださった人、すいません。
ここでも書いときますが、活動報告にも書いてあります。
プロローグを変えようと思っています。話の大筋は変わらないので、ご心配なく。
今回は少し多めに書かれています。
それでは、どうぞ
二人はギルドに入ると、オーゼンが寝ているテーブルに向かっていく。
そこには既に眠りから覚めているオーゼンが座っていた。
「おう、起きてたか。まだ寝てたなら叩き起こしてやろうと思ったのによォ」
「オーゼンさん、おはようございます」
からかい口調でバーキィは声をかけ、悠斗も若干からかいながらそのテーブルの席へ着く。
「……変なとこを見られてしまったね。まさか酔って眠ってしまうとは……」
暗い表情でそう呟いた。
その様子にバーキィはポカンと口を開けて見ていた。
いつもなら反撃の一言や二言があるのだが、今回はないようだ。
それだけ気分が落ち込んでいるのだろう、と一人納得する。
「大丈夫です。先日の戦闘で疲れてたんですよきっと。だから気にしないでください」
「そうだぜ。あの時俺が見つけなかったらお前、多分魔物に食われてただろうな」
バーキィは愉快そうに笑う。
その笑いにムッとくるオーゼン。
「バーキィだってボロボロだったじゃないか。僕はゴブリンにでもやられてこないんじゃないかと思ってたよ」
「んな雑魚にやられてたまるか! 俺をなんだと思ってんだ!」
「……脳筋?」
「テメェ……」
流れるように喧嘩に発展させていくオーゼン。
悠斗は慌てて制止する。
最近これが悠斗の役割になりつつある。
悠斗がいなかった時は恐らく初めて街、カルンのギルドで喧嘩をしていたように、暴れまわるのだろう。
ここはブブルの街だ。グロウズのように二人を止めれる実力者は少ないだろう。
もっとも、ウェイトレスはその様子をしっかり見ているので、もしギルドの備品が壊されたら後が怖いだろう。
「お二人とも、そこまでにして……オーゼンさんの話の続きを聞きましょう?」
悠斗に制止された二人は不満そうにイスに戻る。
そのままバーキィはウェイトレスを呼び、食事を注文。
それに便乗するように悠斗とオーゼンも注文する。
「……腹減ったからな。待ってる間に話せよ」
「そうだね。えっと……酔ってたから途中までしか覚えてないな。確か、僕がその男の正体について聞いたところは話したっけ?」
「はい、何者かを聞いたんですよね?」
「うん、聞いたらヒントだけ教えるって言われたんだ。でも結局教えてもらえなかったけどね。というより僕は聞く前に意識が途絶えたんだ。途絶える前になにかあった気がするけど……思い出せないな」
思い出そうと唸るが、溜息を吐いて断念する。
「で、他に話すことはないのか?」
バーキィは肘をつきながら話を聞いていた。
なんともつまらなさそうな顏をしていた。
バーキィの予想では、もっと面白い話が聞けると思っていたが、ただオーゼンが男に質問して気絶しただけの話にしか思えなかった。
「……まだあるよ。その男、僕より足が速かった。戦技を使ってる気配はなかったし、凄い身体能力を持っていたよ」
その言葉に少し興味がでたバーキィ。
「へぇ、そいつぁ凄いな。お前より足が速いとなると、上級クラスか」
「さぁどうだろう。戦闘したわけじゃないからハッキリわからないけど、かなり強いのは確かだね」
オーゼンは真剣な顏で二人に告げた。
「まあ、僕の話はこれだけかな。よく考えるとギルド長に知らせるほど重要な話じゃなかったよ」
「だな。ただ強い奴が魔物を扇動してたってだけだしな」
「ん? 扇動?」
バーキィの言葉に首を傾げる。
その様子に呆れながらバーキィは口にする。
「はァ? お前が言ったんだぞ。魔物を指示してる者がいるから森に行くって」
「……どうやら、僕は大分酔ってたらしいね。記憶が混濁してる」
頭を振って記憶を探る。必死に思い出そうとすると、空白の部分の記憶が蘇ってくる。
オーゼンは確かに森の中へ自分から行った。それから魔物とあの男に出会い、追跡を開始した。
その後は闘気が切れ、あの男と少し会話をし、オーゼンは気絶した。
だが、やはり一部空白の部分がある。それをなぜか思い出せない。
そこでハッとする。
「……思い出した。魔物を扇動してたってことは、魔物とのコミュニケーションが取れてたってことだ。こんな重要な事を忘れてたなんて……後で報告しないと」
「あ? まぁ、確かにすげェよな。魔物を大群で攻めさせるとかよ」
「うん。扇動か……思い出せてよかったよ。ありがとう」
バーキィにお礼を言うオーゼン。
珍しくお礼を言われたバーキィは目を瞬かせる。
そしてゆっくりと口角をあげてオーゼンを見る。
「……なに?」
「いやァ? なんでもないぞ」
ニマニマ笑っているバーキィを怪訝そうな顔で見た。
その二人の様子に悠斗は、また喧嘩にならないかと心配する。
だが、突然いい匂いがしてきた。その匂いの元を辿るように三人の視線は横に向く。
「お待たせしましたー。注文された品です」
ウェイトレスが料理を持ってきてくれたのだ。
おぼんの上には、それぞれパンとサラダ、なにかの肉とエールが三組乗っていた。
お得なセットを注文した三人。悠斗の場合、二人を真似て注文していた。
それをウェイトレスは一つずつテーブルに乗せていき、乗せ終ると次の客に呼ばれその場を離れる。
「料理が来たから食べようか」
「そうですね、温かいうちに食べましょう」
「だな」
三人はそう口に出すと、食事を開始した。
悠斗はパンにかじりつきながら肉を咀嚼する。
先にサラダを食べ、肉と一緒にパンを食べる。
この世界の料理は日本と比べると質が落ちるが、食べれないほどではない。
カルンの街で食べたロックバードのように、日本ではなかったような美味しい食材もあるのだ。
作り手によって味も千差万別。ギルドではなく、ちゃんとした料理店に行くと満足したものが食べれるだろう。もっとも、冒険者のほとんどはギルドで食事をする。バカ騒ぎをしながら食事をする者が多いため、ギルドは冒険者にとっての休息の場となっている。あまりハメを外しすぎると手痛い目にあってしまうが。
黙々と食事を続ける三人。悠斗はエールを少し飲んでみるが、口に合わずバーキィに譲る。
その時、悠斗は気になったことがあるのを思い出し、二人に尋ねてみた。
「あの、一つ聞きたいことがあるんですけどいいですか?」
そう尋ねると、二人は食事の手を止めた。
そのまま口に入っているものを咀嚼しながら、悠斗の話の続きを待っていた。
「えっとですね、単純なことなんですけど、魔物って喋れるんですか?」
悠斗が言っているのは巨人のガガルゴのことだ。今まで戦った巨人は知性を感じさせない叫び声ばかりだった。そこにガガルゴが現れ、片言といえ人間が理解できる言葉を喋ったのだ。悠斗のこの世界の知識は乏しい。なので、その疑問は二人に聞くことが解消するための一番の近道と思っていた。
「喋る魔物だァ? 聞いたことねェなァ」
「僕も聞いたことないね。けど、古代竜は高い知能を持っていて人語を話すって聞いたことがあるよ?」
「へぇ~そうなのか。だそうだぞ、ハルト」
二人はそう答えた。
オーゼンが言っている古代竜というのは、長い年月をかけて体の魔力が増えていった結果、強大な力を持った竜のことだ。大抵は秘境と呼ばれるところに棲んでいるため、滅多に人里に現れない。そのためここ何百年は姿を見たものはいない。他の魔物とは一線を画する強さを持っていると言われている。それを恐れた人々には伝説として語り継がれている。そもそも竜は魔物ではないと言われているため、悠斗がいう喋る魔物というカテゴリーには入らないのかもしれない。
「バーキィが感心してどうするんだよ。それで、なんでそんな事を僕達に聞いたんだい?」
呆れ顔でバーキィを見た後、悠斗の方へ向く。
バーキィは酒を一口飲んで話の続きを待っている。
「えっと、僕が戦った巨人なんですけど、喋ったんですよ。片言なんですけど、人が理解できる言語を喋ったので驚いたんです。だから喋る魔物って他にもいるのか気になってお二人に訊いたんですが……」
悠斗がおずおずとそう言うと、二人は目にわかるように驚いていた。
オーゼンは目を見開いた後、何かを考える表情に変わりブツブツと呟き始めた。
バーキィも驚いていたがすぐに表情を戻し、酒を飲み始める。
頭脳労働は完全にオーゼン任せなのだろう。
一分ほどするとオーゼンは考えるのを止めて席を立った。
「食事が途中だけど、僕は報告することが増えたから行ってくるよ。代金はここに置いておくから後よろしくね」
「あっはい」
「お前の残りは俺が食べとくぞー」
オーゼンはそう言うと、ギルドの受付に向かっていった。
その後ろ姿を眺めて二人は食事を再開する。
(やっぱり喋る魔物って珍しいのかな? 巨人なのに名前があったし……あっ、これ言うの忘れてたや。オーゼンさんが戻ってきたら言わないと)
そんな事を考えながら食事をする。
十分ほど会話をしながら食べ終わると、代金をウェイトレスに払い、バーキィと一緒に宿へ戻った。
自分の部屋へ戻った悠斗は軽い運動をして就寝しようとしたが、部屋の扉をノックされる。
「はーい」
返事をしながら扉を開けると、そこにはバーキィがいた。
なにやら手には布と服を持っていた。
「よう。いきなりだが風呂に行かねェか? 体が泥臭くってよ。一気に洗いてぇ気分なんだ」
「お、お風呂があるんですか!?」
風呂。この世界に風呂があると女将には聞いていたが、まさかここで入れるとは思わなかった悠斗。
悠斗は日本人だ。今まで水浴びで我慢していたが、やはり熱いお風呂に入りたかった。だが、贅沢もいってられないほど忙しい日々。この世界に慣れるために半ば風呂は諦めていた。しかし、バーキィから風呂という単語を聞いて悠斗のテンションは上がった。
「お、おう。宿出て少し歩いたら大浴場があるぞ……行くか?」
「勿論です! すぐ行きましょう!」
悠斗はバーキィの背中を押して急かす。
「お、おい、慌てんなって! 押すな押すな!」
「お風呂が入れる……お風呂が……」
バーキィの言葉は耳に入らず。
今の悠斗の頭にあるのは風呂の事だけだ。
テンションが高い悠斗とその様子に困惑しているバーキィの二人は、大浴場に着くと悠斗は感動して涙を流していた。
それを見ていた周りの人達は可哀想な者を見る目で悠斗を見ていた。
バーキィはその視線が恥ずかしくなり、悠斗を引っ張っていく。服を脱がし、浴場に足を踏み入れるとそこは様々な種族が裸になって風呂に浸かっていたり、体を石鹸らしきもので洗っている様子が見られた。もちろん、男性用と女性用で別れている。この世界でも常識だ。
またや感動して足を止める悠斗を引っ張っていく。端っこに行くと、バーキィは持っていた袋から小さな石鹸を取り出し、それを布に含ませて体を洗い始めた。この石鹸は風呂に入る前にバーキィが買ったものだ。もちろん、悠斗も購入している。銀貨五枚という中々高価な値段だが、悠斗は惜しみもせず即購入した。
体を洗った後大きな湯舟に向かって歩き、ゆっくりと体を浸からせる。
「ふぅ……やっぱりお風呂はいいですね」
「ああ……体が温まるぜ」
悠斗はしみじみとそう思う。
二人はくつろぎながらゆっくりと風呂を楽しんでいた。
その間悠斗は周囲に視線を巡らし、他の種族を見ていた。
エルフ、ドワーフ、ヒューマン、ビーストがいた。
ドワーフを見たことがなかった悠斗は、少し観察をしていた。
(やっぱり、身長が低いなぁ。この世界のドワーフってやっぱり鍛冶をするんだろうか? 後でバーキィさんに聞いてみよう)
そう考えて思考をやめ、風呂に深く浸かる。
特に何事も起こらず、ゆっくりと風呂を楽しんだ二人は宿へ戻っていく。
悠斗は終始ニコニコしていた。その様子にバーキィは連れて行って良かった、と思った。
その後、いい気持ちで悠斗は就寝する。
久しぶりの風呂は悠斗にとってこの世界で一番幸せな時間だっただろう。
翌日、あることに気づくのだが。
誤字や脱字、おかしな部分は気づき次第修正します。
書いてないですけど、バーキィは裏でちゃんと聖魔術で回復してもらってあります。
悠斗の治療は、怪我人が多かったため後回しに。結局メイのとこで治療してもらってました。
10/25 文章を少し修正しました。




