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紋章の勇者  作者: 新
二章 前兆
32/41

31話 ブブル到着

前話にも書きましたが、二章 王都へ は、二章 前兆 に変えました。

あと、前話のグロウズの戦闘シーンですが、とどめのところを加筆しました。

急いでいたため、迫力ないかな? と思い、追加しました。もしかしたらあんまりかわらないかも……。


それでは、どうぞ

グロウズは斧の刃を消すと、残った柄を腰に差す。そして悠斗達がいる場所に歩いていく。

「少し、張り切り過ぎたか……」

自分で作ったクレーターを見ながらそう呟いた。直後、体がよろめく。

「くっ……久しぶりに使ったが、キツイものだな……」

なんとか立て直し、歩いていくグロウズ。


最後に放った戦技。斧系戦技【剛斧撃】は闘気を大きく消費する。いわば必殺技のようなものだ。

腕に闘気を集中させ、それをインパクトの瞬間に斧に対して一気に闘気を移動させる。

そうすることによって威力が大幅に上がる。


普通に斧に闘気を纏わせるのとはどう違うのか?

――それは闘気の密度だ。

通常、闘気を武器に纏わせると時間が経つにつれ、どうしても闘気が徐々に消えていく。そのため、攻撃の瞬間には闘気が減ってしまうのだ。つまり威力も落ちてしまう。だが、体に纏う闘気は消えたりはしない。それを利用しながら攻撃に転じるのが【剛斧撃】だ。


グロウズはゆっくりと歩いていると、悠斗達がこちらへ向かって来た。

「グロウズさん! 大丈夫ですか?」

「ああ、すまないな少年」

悠斗はグロウズに近づき、肩を貸す。

「少しばかり、闘気を消耗しすぎた。なに、ブブルの救援までには回復させてみせるさ」

ニコリと笑顔を作るが、足は震えている。

「……そうですか。なら、グロウズさんはすぐにテントで休んでてください。まだ夜なんですから」

「そうさせてもらう……。なにかあれば呼んでくれ」

他の冒険者に肩を貸されながらテントへ向かった。


「さて、僕も休む前に……。ゴブリンの死体を脇にどけないといけないかな」

散乱している死体を見る。馬車が通るための道だ。そこに障害物があると出発が遅れる。なのであらかじめ取り除いておく。他の冒険者もそう思いゴブリンの死体を運んでいた。


「さっさと運んで休もう……。魔闘変化(チェンジ)

その夜。悠斗は闘気を全身に纏い、ゴブリンの死体を走りながら脇に投げるという暴挙にでた。

その様子を見ていた他の冒険者はまたも驚いていた。その暴挙のおかげか、死体の片づけは早く終わり、休憩の時間が長くなった。だが、そこで悲しい知らせが入ってくる。見張りをしていた冒険者二人が殺されていたのだ。二人とも決して弱くはなかったが、一刀のもとに斬り殺されていた。それを悠斗達冒険者は森に穴を掘り、丁重に埋める。少し祈りを捧げ、テントに戻っていった。


~~~~~~~~~~~~~~~


朝日が昇ってくる。

「くぁ……」

目を覚ました悠斗。あくびをして起床する。

悠斗がテントに入って5時間ほどで朝になった。睡眠としては少し物足りないが、戦うくらいなら大丈夫、と判断した悠斗はテントを出ていく。


「む、起きたか少年」

テントを出た先にはグロウズが準備体操をしていた。どうやら悠斗より少しだけ早く起床していたようだ。

「はい、グロウズさんはもう大丈夫なんですか?」

「うむ。……全快とはいかないが、普通に戦う分には問題ない」

「そうですか。なら、いつ出発するんですか?」

「そうだな。とりあえず少しだけ待ち、起きるのが遅い者は叩き起こす。全員起きたら朝食を少しだけ食べて出発だ」

準備体操をしながらそう答える。


その後、悠斗も軽く運動をしていると続々と冒険者達が起床してきた。いつまでも寝ている者もいたが、他の者に叩き起こされていた。皆が揃ったら朝食を食べ始める。干し肉と水だ。昨日の晩より少ないが、これからあの激しい動きの馬車に乗るのだ。これだけでも十分だろう。

朝食を食べ終わると、装備の確認をする。そして馬車に皆が乗り込んだのを確認したグロウズは、御者をしている者に出発を命じる。馬車は相変わらず揺れが激しい。急いでいるのだから当たり前なのだが。

二時間ほど馬車に揺られていると、グロウズが話を始める。


「もうすぐ、ブブルに着く。恐らく死人も出るだろう。……覚悟はいいか?」

この馬車にいる冒険者達は、金貨に釣られたわけではない。もちろん報酬のためというのもあるが、ほとんどの者は人助けが主な理由だのだ。ブブルの街には身内がいる。友達がいる。世話になった人がいる。

主な理由はそれぞれだ。いつもは乗り気ではない緊急依頼だが、今回は自ら名乗り出る。そんな冒険者が多かった。最初はその様子に驚いていたグロウズだったが、近くの冒険者に耳打ちされて理解した。

そうして集った冒険者達に感謝し、馬車で出発を開始していた。


「ギルド長。俺らは自分からここに集まったんですぜ? ……覚悟なんてとっくのとうにできてまさぁ!」

「そうだ! 金貨なんて無くたっていい! 俺の親父とおふくろがあそこに住んでんだ。助けるために命を賭ける! なぁそうだろみんな!」

「「「応!」」」

一致団結とは、こういうことを言うのだろう。

「……けど、金貨は欲しいな……」

誰かがぼそりと言った。

「ばっか! 今の雰囲気が台無しじゃねーか!」

さっきの言葉を呟いた冒険者を別の人が小突く。そして巻き起こる笑い。

その一部始終を見ていたグロウズは苦笑していた。

「全く。命を賭けるのはいいが、賭けた命はちゃんと戻ってくるんだろうな?」

遠回しに『死ぬな』と言っている。それを理解した男達は満面の笑顔で返した。


(今から戦いにいくのに……死ぬかもしれないのに、笑えるんだ。……強いなぁこの世界の人達は)

悠斗はなにか眩しいものを見るような目になる。だが、悠斗はもう冒険者だ。帰れるかもわからない世界で、危険な職に就いた意味を理解し、覚悟もしてある。白い世界で誓ったように、悠斗は救える命は救ってみせる。その誓いを胸にシュカも助けたのだ。ならば迷う必要はない。ただ危ないから助ける。それだけの理由があれば悠斗には十分だった。


「見えてきました!」

御者がそう言う。馬車を包んでいる布を少しめくり、外を見る。


――街が見えた。大きな街だ。カルンの街より三倍は大きいだろうか? 白い壁が街を囲っている。防壁だろう。だが、その白い壁には無数の魔物が群がっていた。


ゾッとする悠斗。今からあれの相手をするか? と考える。対してこちらは三十人の冒険者。

本当にあの数を追い払えるのか。どんどん不安になっていく。他の冒険者も表情が暗くなるものがいた。

――突然、大きな声が響いた。

「貴様ら!!!! 怖気づいたのか!? さっきの覚悟はどこへいった! 貴様らの覚悟とはその程度のものか、貴様らの大事な者達はその程度の価値なのか!」

後ろを走っていた馬車にも聞こえるかのような大声だ。

「違う!」

「そうだ!」

「俺たちはビビってるわけじゃねぇ!」

次々と冒険者達が叫ぶ。

「ならば、さっきの表情はなんだ? あの程度の魔物の大群を見て怖気づくような覚悟は捨ててしまえッ! 捨てないと言うのなら、その情けない覚悟を強くし私に続け! 」

いつの間にか街の近くに馬車が止まっていた。悠斗達がいる馬車の周りには冒険者達が立っていた。

「いいか、もう一度言う。怖気づくような覚悟なら捨ててしまえ。捨てないというのなら、私に続け! 覚悟を強くしろ! 決して折れない一本の剣にしろ! それを武器に戦え!」

それはグロウズなりの激励だったのだろう。


「「「「「「「応ッ!応ッ!応ッ!」」」」」」」

冒険者全員による覚悟の表れが、言葉に乗って響き渡る。その様子に悠斗も熱くなり、感情が昂る。

「行くぞ貴様ら! ブブルを救うぞ!」

おおー! という叫び声を上げながら突撃していく。


(待っていてくださいね二人とも! 今助けに行きます!)

悠斗はその冒険者達の後ろに付きながら、ブブルの街へ近づいていく。

誤字脱字やおかしな部分は気づき次第修正します。

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