27話 再び白い世界&少女の世話
ネット小説大賞にも応募しました。
この作者一体いくつ応募するんだよ……。と思ったそこのあなた。とりあえず応募なので気にしないでください(?)
それでは、どうぞ
気づくと、視界全体に白い世界が広がっている。
――ここって……また来ちゃったのかな?
「そうですよ」
僕の疑問に答えるように声がかけられた。
――女神様。久しぶりですね
僕の目の前には将来が楽しみな美少女が立っていた。
「はい、お久しぶりですね。それで、今回は一体なんの用でこちらに?」
首を傾げる。可愛い。じゃなくて。あれ、口元がぴくぴくしてる。
――えっと、いつの間にか来てました。
「そうなんですか。ということは無意識に来たんですか?」
僕にそう聞いてきた。正直よくわからない。あれ、なぜか女神様は頬を赤くしている。やっぱり可愛い。すると、女神様はさらに赤くなっていた。なんでだろう?
「……それ、わざとしてますか?」
わざと? 一体なんのこと……あっ。
――すいません。心読めるんでしたね
「そうですよ、全く。可愛い可愛いと言われると嬉しくて笑顔になるとこでした」
プンプンと擬音が付きそうな感じで怒っている。そうですか。嬉しかったんですか。……女神様可愛い。
「……力、没収しちゃいますよ?」
――ああ! すいませんでした!
そう言われるとやめないはずがない。この世界で僕なんかが生きるには【天の紋章】だけじゃ色々と足りないから没収は困る。というか没収できるんですか。こわいなぁ……。
「はぁ……とりあえずこの話は終わりです。それで、今回はどういう経緯でここに?」
女神様は溜息を吐いて僕に聞いてきた。前回は闘気を使い果たした結果、気絶したんだっけ。
――今回も、気絶したんだと思います。……ああ、初めて人を……殺してしまったんです
僕は女の子を助けるために、躊躇する心を消すため魔闘変化をしたんだ。別に、後悔はしていなかった。遅かれ早かれ、そういう事をすることになっていただろう。
――だから、人を守るために使いました。僕は間違っていたでしょうか?
「……何が間違いか、何が正解なのかは答えられません。ですが、あなたの行いは人として間違っていましたか?」
――いえ、間違ってないと思います。あのまま無視して街へ戻っていたら、きっと僕は後悔していました
僕はそう断言する。助けられるならどこまでも。僕の力が役に立つなら。ただの子供の僕にはこれくらいしか考えられなかった。
「……ならそれが、あなた自身の信念なのです。それを大事にしていってくださいね?」
微笑みながら話しかけられる姿は、正に女神。
「褒めてもなにもでませんよ」
淡々と言われた。なんだか悲しい。けど、色々話せてスッキリしたし、女神様はやっぱり女神様だった。
「よくわかりませんが、ありがとうございます」
流石に耐性がついたのか、顏が赤くならない。
「……そろそろ、目覚める時ですよ」
――誤魔化そうとしてます?
「違いますっ! ……あなたの肉体が目覚めようとしています。なので、今回はここまででしょう」
僕の方を見ながらそう言われた。そっか、僕倒れたまんまだった。てことは森の中かな? 動物に咬まれてたりして……。
「大丈夫です。どこかの建物に寝かされています」
――よかった。なら、お別れですね。色々話せてよかったです
「はい、またなにかあれば来てくださって構いませんよ? 来る方法はこの世界を思い浮かべて意識を落とすことです」
――なるほど、眠るとかでもいいんですか?
「はい。というか、それが一番いいんですけど、あなたは気絶ばかりしていて心配です」
――いやぁ……はは。これからは気を付けます
「本当に、気をつけてくださいね? 私との約束ですよ?」
上目づかいに僕を見てそう言った。可愛い。
「……そろそろ肉体が目覚めますよ」
顏が赤いのはバレバレなんですけど……。ってあれ。なんだか視界が……
「また会いましょう。悩みがあればまた聞きますので、待ってますよ」
その言葉を最後に聞いた僕は………
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悠斗は目を覚ます。まず目に入ったのは、ギルドの受付嬢リンだ。そして悠斗が寝ているのはベッドのようなものだ。
「あ、起きたのね。怪我は大丈夫? 一応、ポーションを染み込ませた包帯を巻いてるけど……」
開口一番。そう言われて脇を見ると、青色に滲んだ包帯が巻かれていた。痛みは少ないようで、しっかりポーションは効いているようだ。
余談だが、この世界の薬。ポーションは飲まないとその真価が発揮しなかったりする。振りかけても効果はあるが、傷の治りが遅い。緊急時はほとんど体にかける人が多いのだが。特定の患部のみ効果を当てたいなら、今のように包帯や布に含ませてあてるといい。そうすると効果は集中する。
「えっと、僕はどうやって森を……」
疑問があった。女神が言ったように、ここは街のどこかの建物の中だろう。リンがここにいることがそれを表している。
「……私が、運んできました」
「えっ?」
声が聞こえたほうに顏を向けると、銀髪の少女がそこにはいた。身長は悠斗と同じぐらいだろうか。イスに座っているため、正確なところはわからない。顏はよく整っている。
その少女を見た悠斗はポカンとして口を開く。
「君は……君が、僕を運んでくれたんだ……」
そう、その少女は悠斗が助けた少女だ。
「はい。その節は……本当にありがとうございました」
「たまたま通りかかっただけだよ。けど、無事でよかった」
深々と礼をする少女にそう声をかけた。
「この子も切り傷だらけでびっくりしたけど、ハルト君は結構深い傷だったのよ? あらかた理由はこの子に聞いたけど、あんまり無茶したらダメだよ?」
「でも……」
「でもじゃない。もし同じことが起きたら、もう少し頭を使って戦った方がいいわ。ハルト君はまだ下級冒険者。経験が一番足りないからね」
そう言われるとぐうの音もでなかった。
「まぁ、説教はこれくらいにして。ハルト君歩ける?」
「はい、多分大丈夫です」
ベッドから足を降ろし、立つ。試しに足踏みをしてみる。
「ッ!」
「やっぱり痛い? ポーションがもっと効くまで休んでいく?」
「いえ、少し痛むだけなので大丈夫です」
一歩歩けばズキっとする。そのうち【高自然治癒】で回復するだろうと思った矢先に、痛みがなくなった。
「でも、ここって街のどこなんですか?」
周りを見渡す。ベッドの他に椅子や机、その上に本や食べ物が乗っている。広さはまあまあといったところか。
「最初にこの子がハルト君を運んできたのはギルドだったのよ。ハルト君の脇から血がにじんでるのを、発見した冒険者の人が私を呼んでね。あまり動かすのもあれだと思ったから、ギルド職員の休憩所に運んだわけなのよ。ね?」
「はい。近くの街まで運べたのはいいんですが、その……治療してくれるとこがわからなかったので、一番大きい建物に駆け込みました」
リンがその少女に訊くと、そう答えた。
「そうだったんだ。本当にありがとう。君がいなかったら多分僕は死んでいただろうね」
確かに、悠斗が一人森に残されていたら死んでいた可能性はあっただろう。だが、少ない魔力で【高自然治癒】が発動したなら、そのうち目が覚めて一人で街へ帰れたかもしれない。
「いえ、私こそ辱められてまたあそこに……」
表情が暗くなる。それを見ていたリンは
「ハルト君。この子は君が世話してあげなさい」
「え、僕が……ですか? でも僕は男だし……」
「宿だけでも紹介しなさいってことよ! ……この子、この街じゃ独りぼっちよ? それでもいいの?」
ここでハッとする悠斗。悠斗も最初この街へ来たときは独りだった。後にあの二人に出会わなければずっと独りだったかもしれない。独りが辛いのはよくわかっている悠斗。最初にこの世界へ来た時の不安を思い出す。
「その子は、僕が面倒見ます」
真剣な顔で呟く。
「そうそう。それでいいのよ男の子は」
何かに納得したリンは横の机に置いてあった布を悠斗に渡す。
「これは……服ですか」
「そうよ。ハルト君が着てたのは血が滲んでたから捨てちゃった。だから代わりにそれあげる」
そう言って手渡されたのは如何にも普通ですと言った感じの服だ。
「それ着て、この子にこの街を案内してあげなさい。一週間もこの街にいたらだいたいわかるでしょ?」
「詳しいとこはしらないですけど……」
不安そうにリンを見る。
「はいはい! 傷は大丈夫なんでしょ? ハルト君がそう言ったんだからさっさとここを出ていく! そしてこの子を案内する! はい!」
凄い勢いで背中を押されていく悠斗達。扉まで迫っていく。そこでいったん押すのを止めたリンはこう言った。
「一応、治療所に行くのよ。私たちは怪我専門じゃないからね」
そう言って扉を開けた。どうやらギルドの裏口の様だ。外はまだ明るい。外に押されていく二人。
「じゃあね二人とも。依頼があるならまたきてちょうだい」
その言葉を残して扉が閉められる。
「……お礼言えなかったなぁ。今度ギルドへ行ったら言うかな」
ぼんやりとそう言った悠斗。だが、次の瞬間には元気な笑顔を浮かべて少女の方へ向き直る。少女を不安にさせないためだ。見知らぬ男と居るため、できるだけ無害というのをアピールしていく。少し無理があるが。
「よし! とりあえず、リンさんに言われたようにこの街案内するよ! えっと……君の名前は?」
そういえ名前を聞いてなかったなと思い、そう聞いた。
その勢いに少女は苦笑し、こう答えた。
「私はシュカです。街案内、よろしくおねがいします」
その返事を聞いた悠斗は純粋な笑顔を浮かべた。
誤字やおかしなところがあれば修正します。




