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紋章の勇者  作者: 新
二章 前兆
28/41

27話 再び白い世界&少女の世話

ネット小説大賞にも応募しました。


この作者一体いくつ応募するんだよ……。と思ったそこのあなた。とりあえず応募なので気にしないでください(?)


それでは、どうぞ

気づくと、視界全体に白い世界が広がっている。

――ここって……また来ちゃったのかな?


「そうですよ」


僕の疑問に答えるように声がかけられた。

――女神様。久しぶりですね

僕の目の前には将来が楽しみな美少女が立っていた。


「はい、お久しぶりですね。それで、今回は一体なんの用でこちらに?」

首を傾げる。可愛い。じゃなくて。あれ、口元がぴくぴくしてる。

――えっと、いつの間にか来てました。


「そうなんですか。ということは無意識に来たんですか?」

僕にそう聞いてきた。正直よくわからない。あれ、なぜか女神様は頬を赤くしている。やっぱり可愛い。すると、女神様はさらに赤くなっていた。なんでだろう?


「……それ、わざとしてますか?」

わざと? 一体なんのこと……あっ。


――すいません。心読めるんでしたね


「そうですよ、全く。可愛い可愛いと言われると嬉しくて笑顔になるとこでした」

プンプンと擬音が付きそうな感じで怒っている。そうですか。嬉しかったんですか。……女神様可愛い。

「……力、没収しちゃいますよ?」

――ああ! すいませんでした!

そう言われるとやめないはずがない。この世界で僕なんかが生きるには【天の紋章】だけじゃ色々と足りないから没収は困る。というか没収できるんですか。こわいなぁ……。


「はぁ……とりあえずこの話は終わりです。それで、今回はどういう経緯でここに?」

女神様は溜息を吐いて僕に聞いてきた。前回は闘気を使い果たした結果、気絶したんだっけ。

――今回も、気絶したんだと思います。……ああ、初めて人を……殺してしまったんです

僕は女の子を助けるために、躊躇する心を消すため魔闘変化(チェンジ)をしたんだ。別に、後悔はしていなかった。遅かれ早かれ、そういう事をすることになっていただろう。

――だから、人を守るために使いました。僕は間違っていたでしょうか?


「……何が間違いか、何が正解なのかは答えられません。ですが、あなたの行いは人として間違っていましたか?」

――いえ、間違ってないと思います。あのまま無視して街へ戻っていたら、きっと僕は後悔していました


僕はそう断言する。助けられるならどこまでも。僕の力が役に立つなら。ただの子供の僕にはこれくらいしか考えられなかった。


「……ならそれが、あなた自身の信念なのです。それを大事にしていってくださいね?」

微笑みながら話しかけられる姿は、正に女神。

「褒めてもなにもでませんよ」

淡々と言われた。なんだか悲しい。けど、色々話せてスッキリしたし、女神様はやっぱり女神様だった。


「よくわかりませんが、ありがとうございます」

流石に耐性がついたのか、顏が赤くならない。

「……そろそろ、目覚める時ですよ」

――誤魔化そうとしてます?

「違いますっ! ……あなたの肉体が目覚めようとしています。なので、今回はここまででしょう」

僕の方を見ながらそう言われた。そっか、僕倒れたまんまだった。てことは森の中かな? 動物に咬まれてたりして……。


「大丈夫です。どこかの建物に寝かされています」

――よかった。なら、お別れですね。色々話せてよかったです

「はい、またなにかあれば来てくださって構いませんよ? 来る方法はこの世界を思い浮かべて意識を落とすことです」

――なるほど、眠るとかでもいいんですか?

「はい。というか、それが一番いいんですけど、あなたは気絶ばかりしていて心配です」

――いやぁ……はは。これからは気を付けます

「本当に、気をつけてくださいね? 私との約束ですよ?」

上目づかいに僕を見てそう言った。可愛い。


「……そろそろ肉体が目覚めますよ」

顏が赤いのはバレバレなんですけど……。ってあれ。なんだか視界が……


「また会いましょう。悩みがあればまた聞きますので、待ってますよ」

その言葉を最後に聞いた僕は………


~~~~~~~~~~~~~~~


悠斗は目を覚ます。まず目に入ったのは、ギルドの受付嬢リンだ。そして悠斗が寝ているのはベッドのようなものだ。

「あ、起きたのね。怪我は大丈夫? 一応、ポーションを染み込ませた包帯を巻いてるけど……」

開口一番。そう言われて脇を見ると、青色に滲んだ包帯が巻かれていた。痛みは少ないようで、しっかりポーションは効いているようだ。

余談だが、この世界の薬。ポーションは飲まないとその真価が発揮しなかったりする。振りかけても効果はあるが、傷の治りが遅い。緊急時はほとんど体にかける人が多いのだが。特定の患部のみ効果を当てたいなら、今のように包帯や布に含ませてあてるといい。そうすると効果は集中する。


「えっと、僕はどうやって森を……」

疑問があった。女神が言ったように、ここは街のどこかの建物の中だろう。リンがここにいることがそれを表している。

「……私が、運んできました」

「えっ?」

声が聞こえたほうに顏を向けると、銀髪の少女がそこにはいた。身長は悠斗と同じぐらいだろうか。イスに座っているため、正確なところはわからない。顏はよく整っている。

その少女を見た悠斗はポカンとして口を開く。

「君は……君が、僕を運んでくれたんだ……」

そう、その少女は悠斗が助けた少女だ。

「はい。その節は……本当にありがとうございました」

「たまたま通りかかっただけだよ。けど、無事でよかった」

深々と礼をする少女にそう声をかけた。


「この子も切り傷だらけでびっくりしたけど、ハルト君は結構深い傷だったのよ? あらかた理由はこの子に聞いたけど、あんまり無茶したらダメだよ?」

「でも……」

「でもじゃない。もし同じことが起きたら、もう少し頭を使って戦った方がいいわ。ハルト君はまだ下級冒険者。経験が一番足りないからね」

そう言われるとぐうの音もでなかった。

「まぁ、説教はこれくらいにして。ハルト君歩ける?」

「はい、多分大丈夫です」

ベッドから足を降ろし、立つ。試しに足踏みをしてみる。

「ッ!」

「やっぱり痛い? ポーションがもっと効くまで休んでいく?」

「いえ、少し痛むだけなので大丈夫です」

一歩歩けばズキっとする。そのうち【高自然治癒】で回復するだろうと思った矢先に、痛みがなくなった。

「でも、ここって街のどこなんですか?」

周りを見渡す。ベッドの他に椅子や机、その上に本や食べ物が乗っている。広さはまあまあといったところか。


「最初にこの子がハルト君を運んできたのはギルドだったのよ。ハルト君の脇から血がにじんでるのを、発見した冒険者の人が私を呼んでね。あまり動かすのもあれだと思ったから、ギルド職員の休憩所に運んだわけなのよ。ね?」

「はい。近くの街まで運べたのはいいんですが、その……治療してくれるとこがわからなかったので、一番大きい建物に駆け込みました」

リンがその少女に訊くと、そう答えた。

「そうだったんだ。本当にありがとう。君がいなかったら多分僕は死んでいただろうね」

確かに、悠斗が一人森に残されていたら死んでいた可能性はあっただろう。だが、少ない魔力で【高自然治癒】が発動したなら、そのうち目が覚めて一人で街へ帰れたかもしれない。


「いえ、私こそ辱められてまたあそこに……」

表情が暗くなる。それを見ていたリンは

「ハルト君。この子は君が世話してあげなさい」

「え、僕が……ですか? でも僕は男だし……」

「宿だけでも紹介しなさいってことよ! ……この子、この街じゃ独りぼっちよ? それでもいいの?」

ここでハッとする悠斗。悠斗も最初この街へ来たときは独りだった。後にあの二人に出会わなければずっと独りだったかもしれない。独りが辛いのはよくわかっている悠斗。最初にこの世界へ来た時の不安を思い出す。


「その子は、僕が面倒見ます」

真剣な顔で呟く。

「そうそう。それでいいのよ男の子は」

何かに納得したリンは横の机に置いてあった布を悠斗に渡す。

「これは……服ですか」

「そうよ。ハルト君が着てたのは血が滲んでたから捨てちゃった。だから代わりにそれあげる」

そう言って手渡されたのは如何にも普通ですと言った感じの服だ。

「それ着て、この子にこの街を案内してあげなさい。一週間もこの街にいたらだいたいわかるでしょ?」

「詳しいとこはしらないですけど……」

不安そうにリンを見る。

「はいはい! 傷は大丈夫なんでしょ? ハルト君がそう言ったんだからさっさとここを出ていく! そしてこの子を案内する! はい!」

凄い勢いで背中を押されていく悠斗達。扉まで迫っていく。そこでいったん押すのを止めたリンはこう言った。

「一応、治療所に行くのよ。私たちは怪我専門じゃないからね」

そう言って扉を開けた。どうやらギルドの裏口の様だ。外はまだ明るい。外に押されていく二人。

「じゃあね二人とも。依頼があるならまたきてちょうだい」

その言葉を残して扉が閉められる。

「……お礼言えなかったなぁ。今度ギルドへ行ったら言うかな」

ぼんやりとそう言った悠斗。だが、次の瞬間には元気な笑顔を浮かべて少女の方へ向き直る。少女を不安にさせないためだ。見知らぬ男と居るため、できるだけ無害というのをアピールしていく。少し無理があるが。

「よし! とりあえず、リンさんに言われたようにこの街案内するよ! えっと……君の名前は?」

そういえ名前を聞いてなかったなと思い、そう聞いた。

その勢いに少女は苦笑し、こう答えた。

「私はシュカです。街案内、よろしくおねがいします」


その返事を聞いた悠斗は純粋な笑顔を浮かべた。



誤字やおかしなところがあれば修正します。

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