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紋章の勇者  作者: 新
一章 異世界
23/41

24話 【無詠唱魔術】発動&弟子入り?

MF新人賞4に応募してみました。

受賞するとは思えないので、とりあえずです。

皆さんも、私は語彙力や表現力が乏しいなって思ってると思いますが、すいません。勉強してきます。


それでは、どうぞ。

 マローはゆっくりとこちらに戻ってきた。手には一冊の本を持っていた。

「ふぅ……ふぅ……。年甲斐もなく興奮してしまったわい」

どうやら冷静になったようだ。少しばかり疲れている様子。

「大丈夫ですか? このイスに座ってください」

そう言って近くにあったイスをマローのほうへ勧める。

「おお……すまんのぅ。ふぅ……。……って違うわい! ワシは魔術を見せるために『これ』を取ってきたんじゃ!」

『これ』と言いながらは手に持っている本を悠斗に差し出す。保存状態は良かったのだろう。あまり汚れや傷は見当たらない。悠斗はその本を受け取る。


「これは……何の本ですか?」

「これは魔術書じゃ。といっても下級魔術しか載っておらん初心者用のやつじゃの」

「魔術書ですか……。これをどうしろと?」

「まずはワシがそこに載っている魔術を一つ使う。それを真似して使ってみるのじゃ」

そう指示してマローはなにかをブツブツと呟き始めた。

「炎よ、我に力を与えたまえ――【ファイア】」

手を前へかざす。すると拳ほどの炎の塊が飛んでいった。その先には本棚があった。

「!?」

咄嗟に悠斗は盾を顕現し、その炎へ当てようと振りかぶる。

(当たるかわからないけど、火事になったら大変だ!)

必死に狙いを定める。が

「本棚まで飛んでいったら大惨事じゃからの、ほいっと」

かざしていた手をグッと握ると、炎は消えた。

「ほっほっほ。流石に自分の魔術はコントロールできるぞい。ん? なんで盾を持っとるのじゃ? というかどこから……」

「……いえ、なんでもありません」

盾を消して魔術書に目を向けた。一応読めるのだが、いまいちサッパリな悠斗。

どこをどう読むと魔術が発動するかさえわからないようだ。

「今、盾を消したのか……。いや、それはいいじゃろ。どうじゃ坊主、それは読めるかいのぅ?」

「読めるのは読めるんですが、意味はわからないですね……」

「まぁ今の若いのはそんなもんじゃろ。じゃから! ワシが特別に【無詠唱】を教えてやろう」

悠斗の言葉に納得し、ドヤ顔で言い放つ。


「【無詠唱】ですか。それって難しいですか?」

「そんなことはないぞ? 50年ほど修行すれば千人に一人は使えるようになるかものぅ」

「すごく難しいじゃないですか! それなら文字の意味を理解して普通に【詠唱魔術】を習ったほうが早いですよ」

「いいからいいから。騙されたと思って一回やってみんかの? なんとなくじゃが、坊主ならできる気がするのじゃ」

目が点になる悠斗。

「……どうやるんですか?」

「ほほっ。やる気になったのぅ。【無詠唱】は色々な説があったりするのじゃが、わしはイメージが大事だと思っとる。頭の中で行使する魔術を浮かべてそれを解き放つ。そんなイメージじゃ。ちなみにわしはたまにしか成功せん」

人差し指を立てて悠斗に説明し、最後に飄々とそう言った。

「たまにって……。とりあえずイメージですね」

そう言ってからイメージを開始する。頭の中にはさっきマローが発動した魔術を浮かべる。拳だい程の炎。

それを手から発射する。そんなイメージを浮かべ、手を前へかざす。

「ふっ!」

するとイメージしたよりも強い炎が、マローの炎より三倍は大きい炎が飛び出していった。

――轟音。炎が着弾した。壁が真っ黒に焦げていた。

幸い、本棚の方ではなく、壁に飛んで行ったため、火事には到らなかった。


「あ、あの……壁焦がしてしまって……」

「ほっほ! 視えてた通りいい魔力を持っておるの! しかも【無詠唱】も成功させおった! こりゃあ逸材を見つけたぞぃ!」

マローは興奮して悠斗の事の肩を掴む。

「ちょ、ちょっと、マローさん?!」

「お、おぉ。すまんすまん、また興奮してしまったわい。ゴホン」

マローは一度咳払いし、悠斗にこう言った。

「坊主、ワシの弟子にならんかの?」

その言葉に目を瞬かせた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「それじゃあ明日からここに来るんじゃぞ〜」

笑顔になって悠斗を見送り、家のドアを閉めた。

「ふぅ。疲れたなぁ。あんなに必死になって頼まれたら断れないや」

あの後、悠斗が返事を渋っていたら必死に弟子になってくれと懇願された。「この老いぼれ最期の頼みじゃ!」と言われて悠斗は仕方なく弟子入りさせてもらった。

「日銭を稼ぐのに苦労するから、あんまり時間は使いたくなかったんだけど。まぁ、魔術を教えてくれるならありがたいかな」

そんな風に納得する。

「それにしても魔力が視える、か。この世界には特殊な能力を持った人がまだまだいるのかな?」

悠斗もその中の一人なのだが、それにツッコんでくれる人はいない。


「とりあえず宿に戻ってこの服を置いて、何処かで昼食摂らないとね」

くぅ。と小さな腹の虫が鳴く。

「よーし! そうと決まれば走って宿に向かうかな!」

買った服が入った袋を肩にさげ、走り出す。

その時、無意識に【身体強化】をかけていた。

走る速度がグングンと上がる。

「はやいはやい〜!」

調子に乗ってそのまま走っていく。

そうなると、闘気が消費される。消費されると……


悠斗は宿に着く頃にはクタクタになっていた。

体内の闘気が少なくなってきたためだ。

「はぁ……はぁ……これは、宿で少し休まないと……はぁ……ダメだな……」

宿に入る前に深呼吸する。この状態で入ったら女将にからかわれるだろう。悠斗は年上女性の性格を徐々に学んでいた。

せめて一瞬でも呼吸を整えてから、宿に入りたかった。

深呼吸で息を整えた悠斗は宿の入り口を開ける。


なにか作業をしていただろう女将は悠斗に気づくと顏を上げた。

「おかえり」

「ただいまです」

軽い挨拶だけして悠斗は部屋へ戻ろうとする。

「もう用事は終わったのかい?」

「えっと、少しだけ自分の部屋で休んでまた出かけようと思ってます」

「そうかい。引き止めて悪かったね。ゆっくりしてきな」

そう言うと女将は作業に戻った。


バタンとドアを閉める。悠斗は備え付けのイスに座って休む。

「ふぅ、ちょっと休憩だ。それにしても、ホントに闘気が少ないんだなぁ。魔闘変化(チェンジ)しないとやっぱりだめかな……少し走るだけで疲れちゃったよ。なにか対策はないかなぁ」

座りながら背伸びをして考える。といっても、日本にいた頃より、何倍も体力がついていた。

闘気を身体エネルギーとすると、魔力は精神エネルギーのようなものだ。この世界に来てから悠斗にも闘気や魔力が宿った。悠斗が生まれ持っている|潜在能力(器)を世界が認識し、その器に闘気と魔力を注ぐ。それによって身体能力は決まる。つまり、悠斗は日本にいた頃より丈夫で、なおかつ魔術が使える体になっているのだ。

それが、元々の闘気の量や魔力の量を魔闘変化(チェンジ)で変えれること自体おかしいのだ。極端に変わるものの、量が増えるというのは選択肢が一気に増えるということだ。ここは流石女神の力と言えるだろう。


「今そんな事考えてても仕方ないか……。安定した収入を稼がないとね。それに、王都に行くのにどれくらいかかるんだろ? 女将さんに聞いてから昼食食べに行こうかな」

休憩が終わった悠斗は下に降りて行った。女将はさっき同様なにか作業をしているようだ。

「あの、女将さん。ちょっといいですか?」

「ん? どうかしたのかい?」

「聞きたいことがあって。この街から王都ヴェンゼスに行くには、どれくらいの距離がありますか?」

「そうだねぇ。ここから歩いて1週間くらいじゃないかい? あんた、王都に行ってなにかするのかい?」

「えっと、知り合いがそこにいるので、会いに行こうかなって」

「あら。遠いとこにいて大変だね。なら、しっかりこの街で稼いでから出発しなよ?」

「はい。まだ一回しか依頼をこなしてないですけど、頑張って稼ぎますよ」

悠斗は咄嗟に嘘をついたが、人に会いに行くのは間違ってはいない。それに、王都までいかずとも悠斗を探している者達がいるらしいので、遭遇するのもいいかと思っている。


「とりあえず、また出かけてきます。帰りは夜になるかもしれません」

「あいよ。晩御飯作って待ってるよ。あぁ、そういえば言ってなかったけどあの二人。今朝ギルドで依頼を受けて遠くに行ったからいないよ」

女将は思い出したかのように悠斗にそう告げた。

「依頼で遠くに……どれくらいの期間ですか?」

「確か、一週間ほど空けるとか言ってたね。坊やを一人にするのを心配してたけど、大丈夫かい?」

その言葉に悠斗は不安になった。一人で依頼をこなせるのか? この街で一人で四日間過ごせるのか? など。

(けど、こんな事言ったら多分、二人に笑われちゃうな)

「そうですか。あのお二人がいないと寂しいですけど、なんとか頑張っていきます」

「ならいいんだけどね」

「はい、それじゃあ行ってきます」

「いってらっしゃい」

暖かい笑顔で悠斗を送り出す。


「昼食を食べたらギルドに行こうかな? 僕がどれくらい戦えるか確認もしないといけないし。ああ、やることが山積みだ……」

そんなことをぼやきながら大通りを歩いていく。




誤字などあれば修正します。


最近ブックマークが2桁にはいって嬉しい作者です。

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