24話 【無詠唱魔術】発動&弟子入り?
MF新人賞4に応募してみました。
受賞するとは思えないので、とりあえずです。
皆さんも、私は語彙力や表現力が乏しいなって思ってると思いますが、すいません。勉強してきます。
それでは、どうぞ。
マローはゆっくりとこちらに戻ってきた。手には一冊の本を持っていた。
「ふぅ……ふぅ……。年甲斐もなく興奮してしまったわい」
どうやら冷静になったようだ。少しばかり疲れている様子。
「大丈夫ですか? このイスに座ってください」
そう言って近くにあったイスをマローのほうへ勧める。
「おお……すまんのぅ。ふぅ……。……って違うわい! ワシは魔術を見せるために『これ』を取ってきたんじゃ!」
『これ』と言いながらは手に持っている本を悠斗に差し出す。保存状態は良かったのだろう。あまり汚れや傷は見当たらない。悠斗はその本を受け取る。
「これは……何の本ですか?」
「これは魔術書じゃ。といっても下級魔術しか載っておらん初心者用のやつじゃの」
「魔術書ですか……。これをどうしろと?」
「まずはワシがそこに載っている魔術を一つ使う。それを真似して使ってみるのじゃ」
そう指示してマローはなにかをブツブツと呟き始めた。
「炎よ、我に力を与えたまえ――【ファイア】」
手を前へかざす。すると拳ほどの炎の塊が飛んでいった。その先には本棚があった。
「!?」
咄嗟に悠斗は盾を顕現し、その炎へ当てようと振りかぶる。
(当たるかわからないけど、火事になったら大変だ!)
必死に狙いを定める。が
「本棚まで飛んでいったら大惨事じゃからの、ほいっと」
かざしていた手をグッと握ると、炎は消えた。
「ほっほっほ。流石に自分の魔術はコントロールできるぞい。ん? なんで盾を持っとるのじゃ? というかどこから……」
「……いえ、なんでもありません」
盾を消して魔術書に目を向けた。一応読めるのだが、いまいちサッパリな悠斗。
どこをどう読むと魔術が発動するかさえわからないようだ。
「今、盾を消したのか……。いや、それはいいじゃろ。どうじゃ坊主、それは読めるかいのぅ?」
「読めるのは読めるんですが、意味はわからないですね……」
「まぁ今の若いのはそんなもんじゃろ。じゃから! ワシが特別に【無詠唱】を教えてやろう」
悠斗の言葉に納得し、ドヤ顔で言い放つ。
「【無詠唱】ですか。それって難しいですか?」
「そんなことはないぞ? 50年ほど修行すれば千人に一人は使えるようになるかものぅ」
「すごく難しいじゃないですか! それなら文字の意味を理解して普通に【詠唱魔術】を習ったほうが早いですよ」
「いいからいいから。騙されたと思って一回やってみんかの? なんとなくじゃが、坊主ならできる気がするのじゃ」
目が点になる悠斗。
「……どうやるんですか?」
「ほほっ。やる気になったのぅ。【無詠唱】は色々な説があったりするのじゃが、わしはイメージが大事だと思っとる。頭の中で行使する魔術を浮かべてそれを解き放つ。そんなイメージじゃ。ちなみにわしはたまにしか成功せん」
人差し指を立てて悠斗に説明し、最後に飄々とそう言った。
「たまにって……。とりあえずイメージですね」
そう言ってからイメージを開始する。頭の中にはさっきマローが発動した魔術を浮かべる。拳だい程の炎。
それを手から発射する。そんなイメージを浮かべ、手を前へかざす。
「ふっ!」
するとイメージしたよりも強い炎が、マローの炎より三倍は大きい炎が飛び出していった。
――轟音。炎が着弾した。壁が真っ黒に焦げていた。
幸い、本棚の方ではなく、壁に飛んで行ったため、火事には到らなかった。
「あ、あの……壁焦がしてしまって……」
「ほっほ! 視えてた通りいい魔力を持っておるの! しかも【無詠唱】も成功させおった! こりゃあ逸材を見つけたぞぃ!」
マローは興奮して悠斗の事の肩を掴む。
「ちょ、ちょっと、マローさん?!」
「お、おぉ。すまんすまん、また興奮してしまったわい。ゴホン」
マローは一度咳払いし、悠斗にこう言った。
「坊主、ワシの弟子にならんかの?」
その言葉に目を瞬かせた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「それじゃあ明日からここに来るんじゃぞ〜」
笑顔になって悠斗を見送り、家のドアを閉めた。
「ふぅ。疲れたなぁ。あんなに必死になって頼まれたら断れないや」
あの後、悠斗が返事を渋っていたら必死に弟子になってくれと懇願された。「この老いぼれ最期の頼みじゃ!」と言われて悠斗は仕方なく弟子入りさせてもらった。
「日銭を稼ぐのに苦労するから、あんまり時間は使いたくなかったんだけど。まぁ、魔術を教えてくれるならありがたいかな」
そんな風に納得する。
「それにしても魔力が視える、か。この世界には特殊な能力を持った人がまだまだいるのかな?」
悠斗もその中の一人なのだが、それにツッコんでくれる人はいない。
「とりあえず宿に戻ってこの服を置いて、何処かで昼食摂らないとね」
くぅ。と小さな腹の虫が鳴く。
「よーし! そうと決まれば走って宿に向かうかな!」
買った服が入った袋を肩にさげ、走り出す。
その時、無意識に【身体強化】をかけていた。
走る速度がグングンと上がる。
「はやいはやい〜!」
調子に乗ってそのまま走っていく。
そうなると、闘気が消費される。消費されると……
悠斗は宿に着く頃にはクタクタになっていた。
体内の闘気が少なくなってきたためだ。
「はぁ……はぁ……これは、宿で少し休まないと……はぁ……ダメだな……」
宿に入る前に深呼吸する。この状態で入ったら女将にからかわれるだろう。悠斗は年上女性の性格を徐々に学んでいた。
せめて一瞬でも呼吸を整えてから、宿に入りたかった。
深呼吸で息を整えた悠斗は宿の入り口を開ける。
なにか作業をしていただろう女将は悠斗に気づくと顏を上げた。
「おかえり」
「ただいまです」
軽い挨拶だけして悠斗は部屋へ戻ろうとする。
「もう用事は終わったのかい?」
「えっと、少しだけ自分の部屋で休んでまた出かけようと思ってます」
「そうかい。引き止めて悪かったね。ゆっくりしてきな」
そう言うと女将は作業に戻った。
バタンとドアを閉める。悠斗は備え付けのイスに座って休む。
「ふぅ、ちょっと休憩だ。それにしても、ホントに闘気が少ないんだなぁ。魔闘変化しないとやっぱりだめかな……少し走るだけで疲れちゃったよ。なにか対策はないかなぁ」
座りながら背伸びをして考える。といっても、日本にいた頃より、何倍も体力がついていた。
闘気を身体エネルギーとすると、魔力は精神エネルギーのようなものだ。この世界に来てから悠斗にも闘気や魔力が宿った。悠斗が生まれ持っている|潜在能力(器)を世界が認識し、その器に闘気と魔力を注ぐ。それによって身体能力は決まる。つまり、悠斗は日本にいた頃より丈夫で、なおかつ魔術が使える体になっているのだ。
それが、元々の闘気の量や魔力の量を魔闘変化で変えれること自体おかしいのだ。極端に変わるものの、量が増えるというのは選択肢が一気に増えるということだ。ここは流石女神の力と言えるだろう。
「今そんな事考えてても仕方ないか……。安定した収入を稼がないとね。それに、王都に行くのにどれくらいかかるんだろ? 女将さんに聞いてから昼食食べに行こうかな」
休憩が終わった悠斗は下に降りて行った。女将はさっき同様なにか作業をしているようだ。
「あの、女将さん。ちょっといいですか?」
「ん? どうかしたのかい?」
「聞きたいことがあって。この街から王都ヴェンゼスに行くには、どれくらいの距離がありますか?」
「そうだねぇ。ここから歩いて1週間くらいじゃないかい? あんた、王都に行ってなにかするのかい?」
「えっと、知り合いがそこにいるので、会いに行こうかなって」
「あら。遠いとこにいて大変だね。なら、しっかりこの街で稼いでから出発しなよ?」
「はい。まだ一回しか依頼をこなしてないですけど、頑張って稼ぎますよ」
悠斗は咄嗟に嘘をついたが、人に会いに行くのは間違ってはいない。それに、王都までいかずとも悠斗を探している者達がいるらしいので、遭遇するのもいいかと思っている。
「とりあえず、また出かけてきます。帰りは夜になるかもしれません」
「あいよ。晩御飯作って待ってるよ。あぁ、そういえば言ってなかったけどあの二人。今朝ギルドで依頼を受けて遠くに行ったからいないよ」
女将は思い出したかのように悠斗にそう告げた。
「依頼で遠くに……どれくらいの期間ですか?」
「確か、一週間ほど空けるとか言ってたね。坊やを一人にするのを心配してたけど、大丈夫かい?」
その言葉に悠斗は不安になった。一人で依頼をこなせるのか? この街で一人で四日間過ごせるのか? など。
(けど、こんな事言ったら多分、二人に笑われちゃうな)
「そうですか。あのお二人がいないと寂しいですけど、なんとか頑張っていきます」
「ならいいんだけどね」
「はい、それじゃあ行ってきます」
「いってらっしゃい」
暖かい笑顔で悠斗を送り出す。
「昼食を食べたらギルドに行こうかな? 僕がどれくらい戦えるか確認もしないといけないし。ああ、やることが山積みだ……」
そんなことをぼやきながら大通りを歩いていく。
誤字などあれば修正します。
最近ブックマークが2桁にはいって嬉しい作者です。




