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紋章の勇者  作者: 新
一章 異世界
21/41

22話 ギルドのエリナ

ちょっと遅くなりましたが投稿しました。

宿を発って大通りにでた悠斗は肝心なことを忘れていた。

「あ……。この街って服屋ってあるのかな」

一応この街には服屋はある。宿、服屋、武具屋、食事処、道具屋 etc……

田舎の街だがそれなりに人は来るため、店は充実している。なお、悠斗はギルド以外行ったことがない。

「うーん……。今更戻って女将さんに場所聞くのもあれだしなぁ」

宿を出たばかりですぐ戻ると間抜けみたいだと思っている悠斗。実際戻れば女将に笑われるだろう。

「知り合いは少ないし、ギルドのリンさんに聞いてこよう」

目的が出来るとギルドへ向かって歩き出す。


「それにしてもお腹すいたなぁ~。朝食食べずに出てきたのはまずかったか~」

軽い後悔、今手持ちのお金は銀貨六枚と銅貨五枚。

「……これで、ちょっと屋台の食べ物買おうかな。でも、服の値段わからないしなぁ」

買うかどうかを悩んでいるが、ふわーっといい匂いが漂ってくる。


ぐぅ~……


「………」

遂ふらふらと匂いの元に行くと、何かの肉を串に刺して焼いている、串焼きの屋台に辿り着いた。

肉を五つほど串に刺し、鉄板で焼く。焼き加減が良くなったらタレを塗る。これがいい匂いの正体だ。

肉を裏返してまたタレを塗る。その動作をしていた主人に悠斗はたまらず

「すいません……。それ、一つください」

「おっ、銅貨1枚になるぞ」

「はい、どうぞ」

銅貨を手渡して串焼きを一本受け取る。少しだけ、なんの肉か考えたが、とりあえず食べる。食欲には抗えないのだ。

「モグモグ……。美味い……」

恍惚の表情を浮かべる。空っぽだった腹に染み渡る。日本でいう鶏肉に近いのだが、少し違う。タレと相まって美味だ。

「あの、これってなんの肉ですか?」

「あん? 兄ちゃん、ニワトリ食ったことねぇのか?」

「えっ、これ鶏の肉なんですか?」

「そうさ。普通に売ってるやつだよ。それを俺が特製のタレで味付けして焼くんだ。美味いだろ?」

「はい、それはもちろんです。これが鶏の肉……。あの、もう一本貰っていいですか?」

そういうと屋台の主人は、ニカりと笑った。


「毎度あり~」

串焼きをもう一本貰った悠斗は、食べながらギルドへ向かう。


~~~~~~~~~~~~~~~


「ふぅ、やっと終わった。まったく朝はいつもいつも忙しいわね~。受付が少ないのが問題なのよ……」

朝のギルドで憂鬱そうにぼやくこの女性はリン。

ギルドは朝になると冒険者が依頼を受注しようと受付に殺到する。大抵は下級一位か高くても中級の依頼しか受けない。ここが田舎というのもあるが、ランクが高い依頼が少ないのだ。それをこなす冒険者もだが。

「朝が終わったら昼からちらほら来る冒険者の相手かー。もっとカッコイイ冒険者とかならテンション上がるんだけどなー……」

「なーに言ってるのー?」

独り言をしていると後ろから声をかけられる。

「なんでもないわー。朝はいつも忙しいなーって」

「まぁ仕方ないでしょ。下級の依頼は早いうちに受けないとすぐなくなっちゃうし、冒険者も稼がないと食っていけないんだよ」

声をかけてきたのはエルフ族のエリナ。一昔前は耳長族と呼ばれていた種族。数百年前にある人族(・・)の男が耳長族の事をエルフと呼んだことから始まり、その当時の族長はそれを気に入ったため、今の種族名に至る。


「まぁねー。そんなにくいぶちないなら農民にでもなったらいいのに」

「それだとお金少ないでしょ? やっぱり冒険者になって自由にお金使いんでしょ。まぁ、危険な仕事はしたくない、って人がここには多いから下級の依頼ばっか受けてるんだけどね」


ここに所属している冒険者はほとんど平民上がりの冒険者だ。多少腕に覚えがあるのもいるが、大抵は雑用の依頼や、下級の魔物退治の依頼などを受ける者がほとんどだ。

バーキィやオーゼンはこの街が気に入ってるため居座っている。

たまに大きな依頼をするときは、遠出をする。その時は二人のPTで依頼をこなす。片方が危険になればフォローするためだ。あまり仲はよくないように見えるが、戦闘ではお互いを信頼していた。


「けど、最近は可愛い冒険者が入ったじゃない? 昨日来てた……なんて子だっけ」

「ハルト君ね。確かに、見た目は子供だけど、あれでも十五歳らしいわよ?」

「うっそ! あの見た目で? 若いっていいわね……」

「なに言ってんのよ……。あんたまだ十八歳でしょ? 十分若いっての」

リンはジト目でエリナを見る。ちなみに、リンは二十三歳だ。リンの方が年上だがエリナは敬語を使わない。エリナの性格のせいもあるが、特にリンが咎めてくるわけでもないので現状こうなっていた。

「あはは~。ついね」

「まったく、あんた私よりおばさんくさいわよー? 歳が若いうちは楽しまないと、私みたいに行き遅れちゃうわよ?」

と遠い目で言われた。無駄に説得力があるリンだった。


「それじゃあ今度ハルト君と一緒に、どっかで遊んでこようかなーなんて」

「はぁ? あんたまだ会って一日も経ってないでしょ。しかも証明部位数える時だけ」

「リンだってまだ二日じゃない。別に日が浅いからって遊びに誘っちゃダメなんて誰が決めたのよ」

「いやいや……。確かにそうだけど、いきなり遊びに誘うってどうなの? もっと会話とかして距離縮めてからとか……ほら?」

「若いからわかりませーん」

とふざけたように返すエリナ。

「むぐ……。私がおばさんで悪かったわね!」

ツーンといった感じにそっぽを向く。

「ああ、ごめんごめん。……ってあれ、ハルト君?だよね。君」


リンの機嫌を取ろうとして気づく。受付カウンターの少し前に悠斗が立っていたことに。

「あ、はい」

「えっ? ハルト君きてたの」

リンも気づいた。

「なんでそこで立ってるの? あ、私はエリナね」

と聞くエリナ。ついでに名前も教える。

「えっと、話しかけようとしたらお二人が会話を始めたのでそこに割り込むのも悪いかなって……」

後ろ手で頭を掻きながら言う悠斗。

「そっか、ごめんね? それで、なにかようかな?」

「えーっと、小さいことなんですけど。この街に服屋ってありますか? 僕、この街に来たばっかなのでよくわからなくて……。知り合いも少ないのでリンさん頼りに来ました」

恥ずかしそうに言う。その悠斗を見てリンは眩しそうなものを見る目になっている。

「くっ……。これが若さか、可愛い……」

「えっ?」

「あ、なんでもないよ。この人今日調子おかしいみたいだから」

エリナが代わりに言い訳する。


「それで、服屋だったよね? えっとね……ああ、こっちのがはやいか」

ニヤっとする。

「そうだね。私が案内してあげるよ、服屋に」

「えっ、エリナさんがですか?」

「そうそう。今暇だからさ、昼までだったら付き合えるけど、どうする?」

「ちょっとエリナ。仕事放棄するつもり?」

「放棄じゃないよ。困ってる冒険者を助けるだけだよ?」

リンの言葉にそう答える。

「でもエリナ」

「はいはい。決定。それじゃハルト君。私が案内するからさっさと行きましょ」

そういうとカウンターを飛び越えて悠斗の方へ行った。それを制止しようとするリン。

「ちょっと待ちなさい! エリナ!」

「ほら、冒険者の人がきたよ? ちゃんと受付嬢の仕事をしてね~」

リンは受付カウンターの裏から出て追いかけようとしたが冒険者が依頼達成報告のため、受付にやってきた。


「ほらほら、あの人が来る前にギルドでましょ」

そう言いながら悠斗の背中を押していく。

「いいんですか? 仕事が……」

「いいのよ、私今日は暇だったし。それに昼までに戻ってきたら問題なし」

心配そうにきいた悠斗だが、エリナは大丈夫と言った風な顏をしてそう答える。


(それに、この子の人柄も知っておきたいしね)

そんなことを考えながら、悠斗を案内し始める。

誤字などあれば修正します。


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