15話 ビッグラット&悠斗の異変
どうも、新です。
今回は少し長めになりました。
戦闘描写があれなのは、魔物相手だからですね。そのうち人の相手をさせます。
途中視点が変わりますが、変だったら指摘くれると嬉しいです。
それでは、どうぞ。
三人はギルドを出て、門の前に着く。
「んじゃ、行くとするか」
「うん」
「はい」
二人は返事を返す。
平原を出ようとして門をくぐってすぐ、横から声をかけられた。
「おっ、ハルトじゃないか。今から依頼か? 横の二人は……オーゼンとバーキィか。なんだ?、ハルトの付き添いかなにかか?」
声をかけてきたのは門番のエリックだ。
「はい、初めての依頼なのでお二人にアドバイスなど貰おうと思いまして」
「へぇ~。この二人がいると頼もしいな。なんたってこの街一番の使い手だからな、まずハルトが危険な目に会うことはない」
オーゼンとバーキィの事を絶賛する。
「おいおいエリック。褒めたってなにもでないぞ? けど、その話をもっと聞きたいから今度酒奢ってやるよ」
上機嫌になるバーキィ。物凄くチョロい。
「……よし、酒代がういた」
小声でそう言った。
「褒めてくれるのはありがたいけど、ちゃんと仕事しなよ?」
「っと、そうだな。俺はしっかりと見張っとくから、お前らも依頼頑張れよ!」
そんな事を言いながら門の横へ戻っていく。
歩きながらオーゼンに色々教えてもらう。
「まず大事なのは敵を目視することだよ。じゃないと奇襲を受けたりして大変な目に合うからね」
「はい、気を付けます」
「まぁ俺なら奇襲を受けても返り討ちにするけどな!」
ドヤ顔で言い放つ。
「はいはい、凄いね。それじゃあハルト君、ビッグラットをまず見つけようか」
バーキィは不満顔でオーゼンを睨む。オーゼンは無視しているのだが。
歩き始めて一分ほどすればビッグラットに遭遇した。
「ぢゅうぢゅう!」
警戒するビッグラット。三人で固まっているので容易には近づいてこなかった。
「やっぱり、このネズミみたいなのがビッグラットか……」
それは悠斗が昨日出会った、ネズミらしき生き物だ。
「ん? ハルト君は戦ったことある?」
「はい、何度か平原を歩いていたら襲ってきました」
昨日の事を思い出すが、ふと疑問が生まれた。
(……あれ? そういえばお腹が痛くないな。昨日は突進をくらった直後痛くて死ぬかと思ったけど……)
そのあとも鈍痛が続いたが、歩けないほどではなかった。そもそも街に入る前に痛みはなくなっていたのである。
(これも、普通じゃないなきっと。なにか原因があるだろうしまた考えよう)
とりあえず目の前の事を考えることにした。
「そうなんだ。ならビッグラットの対処法も分かってるかな?」
ビッグラットに目線を向けながら訊く。
「そう、ですね。とりあえず戦ってみます」
そう答えたあと悠斗は剣と盾を出しながらビッグラットに向かって近づいていく。
ピクッと反応するビッグラット。しばらく悠斗を見ていたが、一人でしか向かってこないと確認したビッグラットは喜々として悠斗に突進を開始する。
「ぢゅううううう!」
「相変わらずそれしかできないんだ……」
悠斗は呆れた。突進してきたビッグラットを横に避けながら胴体を上から下に斬りつける。
「ぢゅっ!」
ビッグラットの胴体は真っ二つになって地面を滑っていく。
「やっぱ斬るって感触は嫌だな……。けど、慣れていかないときっと……」
そのあとの言葉は口にしなかった。
「完璧だよー!」
「俺が見込んだだけはあるな!」
二人は歩きながら悠斗に大声で声をかける。
「まぁ昨日少し戦っていたので、慣れていました」
「それでも、天紋を使って一日とは思えないね。そんなハルト君に朗報だよ。さっき僕たちが大声出したでしょ?」
「……? はい、出してましたね……?」
突然の問いかけに困惑する。
「ある紋様術を使いながら発声したからもうすぐ……」
チラッとバーキィを見る。
「おう。すぐ集ってくるだろうな、ビッグラットが」
悠斗は訝しげな顏をした。
「ビッグラットがですか?」
「おう、いちいち探さなくて済むようにしたんだ。俺たちに感謝しろよ?」
「まぁこれは裏技みたいなものだから、ほんとは探したほうがためになるけど、ハルト君の戦闘技術を見ること優先にしようかなってさっき相談してたんだ」
ハルトが戦っていたちょっとの間に二人は話し合いをしていた。
「そうですか。けど、全然こないで………?!」
悠斗はまわりを見渡して気づく。視界に見える全ての平原から砂煙がたっている。
『ドドドドドドドドド……!!』
四方八方から音が近づいてくる。
「な、なんですかぁ?!」
驚愕と恐怖が混ざったような声をだした。次の瞬間、悠斗達の周囲からビッグラットが次々とでてくる。
「はっはっは! 結構な数がいるじゃねェか! おいオーゼン! これはちと呼びすぎたかァ?」
「うん。想定外だけど、僕たちがいるから問題ないでしょ」
「問題おおありですよぉ! こんな数が一斉に襲ってきたら……」
どんどん囲まれていく。100体は超えるだろうか? その光景はまるでネズミの軍隊の様だ。オーゼンは意外とスパルタ教育を行うことができる人物らしい。
「さて、覚悟はいいかいハルト君? この戦いを切り抜けたらグンと成長するの間違いなしだよ」
「そうだぜハルト。紋様闘術の事をまだ教えてねェからな、死ぬんじゃねェぞ!」
「死ぬほど危険なんですか!?」
二人に向かって叫ぶ。
「……すまん、冗談だ。大怪我するんじゃねェぞ!」
「それも嫌なんですけ……」
その声を遮りながらバーキィは言い放った。
「話してる暇はねェ! くるぞォ!」
その言葉が合図だったかのようにビッグラットの軍隊は一気に押し寄せてくる。
「………死なないように……怪我しないように……」
涙目になってか細い声で呟いく。
~~~~~~~~~~~~~~~
左に避ける。右に避ける。斬りかか……っぶない! 正面から来てた!
攻撃する暇がない! 僕の訓練のためだからって無茶すぎるよ!
チラっと二人の方を見る。
バーキィさんは鬼神の様だった。突進してくるビッグラットを殴り返して逆にふき飛ばしたり、突進を喰らってもビクともしていない。どうなってるのあの人の体……。よく見ると、腕の一部が薄く発光していた。紋様術を使ってるからあんなパワーがでるのかな? 後で教えてもらわないとなぁ……。
あ、ビッグラット引きちぎっちゃったよ……こわい。
「オラオラァ! こんなもんかァ!? もっときやがれェ!」
すごい叫んでる。大丈夫そうだね。
「オーゼンさんは! 大丈夫かなっと!」
僕はなんとか突進を避けながら斬撃をおみまいしていく。
途中で突きや斬り払いなどの方が有利に戦えることに気づく。
もちろん斬撃もいいんだけど、ビッグラット相手だと突きぐらいが丁度いいかな?
「それっ!」
ビッグラットの胴に突きを放つ。
うん、上手いこと急所に突きをすると仕留められるね。急所を外しても動きが止まるし、よし。
そうと決めたら突きの練習だ。避けて突き……避けて突き……。
あ、オーゼンさんの様子も見ないと……。
「オーゼンさんは……いた。……『速い』」
オーゼンさんの戦闘を見た僕が最初に言葉にしたのは、『速い』だった。
ビッグラットが突進する前に群れに飛び込み、まるで嵐のようにビッグラット達を切り刻んでいく。
やっぱりあの二人おかしいよ……。
上級とか超級は一体どんな凄い人達がいるの……。
僕はビッグラットの相手をしながらそんなことを考えていた。考える余裕がでてきていた。
「それにしても、数が減らない……。あれからまた追加できたっぽいし。そろそろ僕の体力が尽きちゃう!」
僕は焦った。焦ったため、石に躓いてこける。
「うわぁ! ……また石か!」
前もこんなことなかったっけ?!
ビッグラットが突進してくる。
「ぢゅううううう!」
僕は咄嗟に盾を右手に出す。
「くううう……!」
ビッグラットの突進を受け止めた。
手が痺れる……!
受け止めてすぐ起き上がり、
「お返しだ!」
思いっきり頭に剣を叩きつけた。
グシャッ!
頭が真っ二つになった。返り血が顏に飛んできたけど気にしない。
次がもう来てるからだ。
「はぁ……疲れた」
突進を避けて斬る。飽きてきたなぁ。数も多いし別の訓練を……
そこでふと僕は思いついた。
「別の武器って出せるかな……?」
とりあえず試してみることにする。突進してくるビッグラットは避けながらイメージを開始した。
よし。槍だ。槍をイメージ……きた!
シュン
槍が僕の右手に出てきた。柄が白く、穂先にナイフを付けたような槍だ。イメージは成功、これで……戦う!
僕は槍を両手で持って勢いよく突く。
「せいっ! だっ!」
やっぱり軽いな。僕の力で武器を出せば軽くなるのかな? それも後で試してみるか。
けど、槍は突きやすいな。まぁ突き専用武器って感じだし、当たり前か。
「……槍だとこんなにも違うのか、やっぱり武器の相性はあるね」
楽しい。なぜだろう。最初は恐かったのに段々楽しくなってきている。胸が熱い。頭が……冴えてくる。
頭の中で、なにかのスイッチが切り変わっていく感じがした。
だけど、嫌な感じはしなかった。
「あはは! もっとこいよ! もっと俺を楽しませろぉ!」
俺は獰猛な笑みを浮かべる。次々と馬鹿の一つ覚えのように突進してくるくそねずみたちを突き殺していく。
「体力の限界なんか知ったことじゃない! 突いて殺す! ……ああ、他にも出してみるか」
俺は唐突に次の武器のイメージを開始する。そうだなぁ、一気に吹き飛ばしたいからアレを出してみるか。
俺の記憶から思い出していく。
シュン
俺の右手に現れたのはバトルアックスと言われるものだ。刃の部分が俺の胴より三倍ほど大きい。
もちろん柄は白い。まぁ、ネズミたちの血で赤くなるだろうけどな。
「これなら、まとめて殺せるよなぁ……?」
ギロリとネズミ達を見る。ネズミ達は動かない。
「そうかい、なら……」
柄を強く握りこむ。ギチっと音がした。
突進を待つのではなく、突っ込んでいく。
「こっちからいかせてもらうぜぇ!!!」
技術も何もない、ただ武器を力まかせに振り回す。だがそれだけでネズミ達は蹴散らされていく。
「あーはははは! 楽しいねぇ! なんでこんなネズミを恐がってたか不思議だなぁ!」
逃げようするネズミを叩き殺していく。
「おら! おら! 死ねぇ!」
俺は次々とネズミを殺していった。
「はぁ……はぁ……はぁ」
楽しいなぁ。まぁ……流石に疲れてきた。体力の限界は知らないが、怪我をしたら元も子もねぇ。
「とりあえず向かってくる奴だけ、殺すとするか」
そう言って呟いてから俺は、突進してくるネズミだけを殺していく。
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「ふぅ。こんなものかな」
ピッ とナイフについていた血を払う。
ビッグラット達は数が少なくなると蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
「バーキィ、そっちは大丈夫かい?」
辺りを見まわす。
「おう。俺がこんな雑魚にやられるわけねェだろ」
オーゼンの後ろで戦っていたようだ。振り返ると、血まみれのオーゼンがいた。
「うわ……。ちゃんと街に戻った洗うんだよ?」
「わーッてるよ! 俺だって臭くて仕方ないんだっつーの……」
体に付いた匂いを嗅ぎながら返事をする。
「にしても、お前はあんまり血がついてないな……」
「僕、汚れるの好きじゃないし。ちゃんと注意して立ち回ったからね。まぁそれでも多少はつくけど仕方ないね」
オーゼンの体はぽつぽつと血がついているだけで、そこまで酷くはなかった。むしろ大群の中で斬りまわっていたのに少量の返り血で済むあたり、流石中級一位と言えるだろう。
「ハルトは……お、いたいた。おーい!」
悠斗は少し離れたところで佇んでいた。
両手には斧らしきものを持っている。
「ハルト君は剣以外も武器を出せるのか……。不思議な天紋だ」
「とりあえずハルトのとこへ行くぞ」
「うん、怪我がないか心配だしね」
二人は悠斗のところへ向かった。
この変化は近いうちにわかるようになります。
次回投稿は明日の16時になる予定です!
9/25 21時頃 ビッグラッドとなっていた箇所を修正。 数ヵ所おかしい文字を修正しました。




