1話 2話 日常の終了
このプロローグは大幅に修正されております。後に続く話に違和感があるかもしれませんが、文章の問題なので徐々に改善していくと思います。前のプロローグより無駄なところを削ったため、少しだけ文字数が少ないです。
それでは、どうぞ。
ここはとある城の禁書庫。その薄暗い書庫で一人の老人がある本を探していた。
「違う……違う……どこじゃ、どこにあるんじゃ……」
その老人は独り言を呟きながら、手に持てる燭台に蠟燭を乗せ、その光源で本を漁っていく。
すると、一つの本を手にした時、その老人の動きが止まった。
「これじゃ……! 確かこの本に……」
老人は本を捲っていく。
捲り続けて五分ほど経って、一つの紋章とそれについての記載を見つけた。
「……やはり、メリア様が言っていたのはこれに間違いないのぅ……」
ページを捲って記載されていることを読んでいく。
一通り読み終わると本を元の場所に戻し、禁書庫から出た。
禁書庫の外は真っ暗だった。外の月明かりが窓から漏れている。
「今日はもう遅い。明日、メリア様の部屋に行って報告せねば……」
老人は自室へ帰ろうと城の中を歩いていく。
階段を上っていくと老人の自室があるのだが、足を止めて階段を降りて行った。
そのまま地下まで行き、通路に出る。
その通路を真っ直ぐ進むと、木の扉が見えてきた。
「……一応、ここを見てから戻るとするかのぅ……」
老人はその扉を開けて部屋の中に入っていった。
中はそこそこの広さだった。床には魔術陣が書かれていた。
「ふむ……少し埃っぽいが、使えるのぅ」
老人は部屋の中を歩き回って魔術陣を確認していた。
数分歩き回って満足したのか、部屋を出て行き自室へ戻ろうと階段を上がっていく。
その道中、老人は考えながら階段を上がっていた。
(【魔の紋章】……恐ろしい。あの禁書に書かれていた伝承通りなら、メリア様には辛い思いをしてもらわないといけなくなってしまう……だが、世界のためじゃ。この老いぼれの命などくれてやっても構わん)
手の平をグッと握って意気込む。
その後、明日の段取りを考えながら自室に戻り、その老人は就寝した。
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日が昇って少し経った時刻。住宅街にある一軒家でその少年は目覚めた。
「……朝か」
その少年は今まで自分が寝ていたベッドからゆっくりと降り、背伸びをしてあくびを漏らす。
「学校に行く準備、しなきゃ」
クローゼットの前に立ち、ハンガーにかけてある制服を取り出す。
そして真後ろにある机に向かい、その上に乗っているシャツとズボンを手に取る。
前日に用意していた着替えだ。制服を着た後はタンスから靴下を取り出して履き、自室を出る。
そのまま階段を降りてリビングに入っていく。
親の姿はない。共働きのため朝はいないのだ。だが、朝食はキチッと作って置いてある。
リビングの机に置いてあるラッピングされた朝食を見て、ソファーに座りながら黙々と食べ始めた。
パンとサラダ、後はベーコンと目玉焼きだ。日本の朝食としてはスタンダードだろう。
ほとんど食べ終わった後、残りはコーヒーだけだった。そのコーヒーに手をつけると、カップの下に紙が下敷きになっているのを発見した。
『ちゃんと朝ご飯食べるのよ悠斗』
そう書かれていた。字体と語尾を見る限り、母親の字だ。
「わかってるよ、お母さん」
牛乳を飲みながら独り言を言う。この少年の名は悠斗、姓は倉野で名は悠斗だ。
朝食を食べ終わった悠斗は、洗面台に行き顏を洗って歯磨きをして玄関へ向かう。
靴を履いて外に出て行く。
「鍵よし……鞄よし、っと。行ってきます」
悠斗は持ち物の最終確認をして、家の前から目的の場所へ歩いていく。
通学中、同じ学校の学生やサラリーマン、中学生や小学生などとすれ違う。
中学生と思われる少年少女達とすれ違う時、悠斗はため息が出た。
その理由は悠斗の背丈だ。制服こそ高校のものだが、身長が中学生並に低いのだ。
今の悠斗は高校一年生、入学してまだ一月も経っていない新入生だ。なのに、何度か中学生と間違われてしまう。平均的な高校一年生よりだいぶ低い悠斗の身長は、まわりが勘違いするほどである。
そのことについてはもう諦めている悠斗。まだ成長期ではあるが、望みは薄いだろう。
悠斗の親はどちらも長身だったりする。その遺伝子が受け継がれているはずなのだが、一向に伸びる兆候を見せない。それが三年も続けば諦めてしまうだろう。
そのため、クラスの男子にチビと呼ばれて、よくからかわれている。悠斗は気にしていないが、まわり女子が悠斗を庇うため、男子は躍起になってからかうのをやめないのだ。まだ中学生という気持ちが抜けきっていないため、精神的に子供なのだろう。そう悠斗は思って学校生活を送っていた。
悠斗も最近までは中学生だったが、とあるクラスにいたため、精神的にそこらの少年よりは成長している。
といっても、大人と比べるとまだまだ子供だ。
さっきから大人の女性たちが、悠斗の事をチラチラ見ながらすれ違っていく。
その理由として、第一に顏だろう。童顔というのもあるが、母性本能をくすぐる可愛い顔つきをしている。
そこに低身長も相まって、守りたくなる何かがあるのだろう。 クラスの女子が庇うのもそれが理由の一つになっているだろう。
歩き始めて五分ほど経つ。悠斗の学校は家から徒歩三十分ほどでつく距離にある。
そろそろ学生たちの集団がチラホラ周りを談笑しながら歩いていくのが見えてくる。
だが、悠斗はいつもと別の道を通ることにした。なぜかそんな気分だった。
「今日はこっちの道通ろうかな」
一人呟き、他の学生たちとは違う道を歩いていく。
すると、その道はサラリーマンとたまにすれ違うだけの人通りが少ない道だった。
静かな道だ。どこかの住宅街だろうが、悠斗はあまり通らない道だ。一応学校の方向へ歩いているため、門が閉まる前には学校へ着くだろう。そんなことを呑気に考えながら歩いていると、ふと横の塀を見た。
なんとなくだ。なんとなく見たのだが、悠斗は気になるものを見つけた。
「……穴? と、なんだろう……。紋章かな、翼……」
悠斗が見つけたのは、塀に五百円ほどの穴とその穴の上に書いてある紋章だ。
その紋章は円の中に一対の翼が描かれていた。
悠斗は徐にその塀に近づき、その紋章に触れた。
「なんでこんなところに描かれてるんだろう? 誰かの落書きかな。落書きだったらこの家の持ち主に言った方がいいかな……」
塀の中の家を見上げた。普通の一軒家のようだ。家に人がいるかはわからないが、一応家を尋ねて落書きの事を伝えよう、そう思って悠斗はその場を離れようとした。
――その時、塀に描かれていた紋章が強い光を放って輝き始めた。
「うわっ! なんだ!?」
その光を目に受けた悠斗は、眩しさに負けて目を片手で庇うように塞ぐ。
すると、徐々に光がおさまっていった。
「なんだったんだ……?」
悠斗は光を放った塀へ目を向けた。
すると、そこには大きな穴が出来ていた。奥が全く見えない。どこまでも深い深い、そんな印象を受ける穴だった。悠斗は突然出現した大穴に驚き、一歩後ずさる。紋章の方にも目を向けると、ある変化に気づいた。
「さっきまでこんな穴なんか絶対になかった。それに、書かれてる紋章が仄かに光ってる……? 一体なんだっていうんだろう……」
悠斗は困惑して今の状況を考えるが、なにも思いつかない。
一旦この場を離れて考えようと思い、振り向こうとしたその時、紋章が一瞬光る。だが、先ほどの光よりは
弱い光量のため、目を庇わなくても見ることができた。
悠斗が目にしたのは、手のような何かだった。一言で言うと光の塊が手の形をしている。
その手は、紋章から生えるように伸びていき、大人の腕ぐらいまで伸びていく。
そうして生えてきた手は、何かを探す様に右往左往していた。
悠斗は驚きながらも警戒して少しずつ、少しずつ後ろに下がっていく。
(一体あれはなんだろう……。手……に見えるけど、それにしたってあの紋章から生えてる事自体おかしいし、あの穴もなんなのかわからない。……とりあえず逃げたほうがいいかな)
悠斗の考えが逃げることに至る。
クマと遭遇した時のように、一目散に逃げずに少しずつ後ずさっていく。
だが、手に変化が起きた。今まで左右に揺れていた手が悠斗の方に向けられたのだ。
(なんだろう? 僕のほうに向けられて……)
突如腕が伸び、悠斗の方へ向かってくる。
「!?」
悠斗は即座に振り返り逃げようとする。が、どうやら手が迫ってくる速度の方が勝っていたようだ。
逃げていた悠斗の上半身を掴んで拘束され、そのまま引きずられていく。掴まれる瞬間、悠斗の体に合わせて大きさが変わっていた。
「ああ!! 離せッ! 僕をどうするつもりだ!?」
悠斗は必至に抵抗するが、拘束されている力はまったく緩まない。
悠斗は薄々気づいていた。引きずられて行く先はさっきの大穴だ。
奥が見えない暗黒の空間に恐怖し、抵抗を更に強めるがやはり拘束が解けることはなかった。
「嫌だ! 離してくれッ! 誰かーッ! 誰か助けてください!」
悠斗は必死に助けを叫ぶ。だが、まわりを見渡すが人っ子一人いなかった。
どう考えてもおかしいと思った悠斗。空を見上げてみた。空には鳥が飛んでいない。
それどころか雲が動いていなかった。
「なんで僕がこんな目に……!!」
諦めずに抵抗を続ける。
そして遂に、大穴の目の前までたどり着いてしまった。
だが、その大穴を目の前に手は悠斗の拘束を解いた。
「へ?」
間抜けな声が洩れた。
悠斗は怪訝そうな顔をしてから、急いでその場を離れようとした。
(なんで離してくれたのかわかんないけど、逃げるチャンスだ!)
足に力を入れて一気に逃げようとしたが、再度悠斗は体を掴まれる。
その時、どこからか声が聞こえた。
『ごめんなさいね』
「えっ……? うわっ!?」
掴まれた悠斗は大穴に向けて投げられた。
穴の中は真っ暗だった。なにも見えない。自分が放り投げられた穴の光しか光源がない。
だが、それもすぐに無くなった。穴が塞がってしまったのだ。
何も見えない状態で悠斗はパニックになった。
「ああああああああ!! 出して……出してください!!」
パニックになった悠斗は叫びまくる。
手足を振り回しながら叫ぶ。
いつのまにか鞄が無くなっていることに気づいたが、直ぐに助けを求めて叫ぶ。
その間数十秒。突然変化は起こった。
悠斗の体が下に落下しているのだ。あきらかに下に向けて落ちていく。
「落ち……落ちて……………」
悠斗の意識はそこで途切れた。
自由落下をするように、頭が下方向に向く。
そのまま暗い暗い底に消えていった。
誤字や脱字、おかしなところは気づき次第修正します。




