七話「空中スタートは不幸じゃない」
……重力を感じないな。
下見たら一発で分かるが、現在自由落下中だった。
真下には広大な森、川、山といった大自然。
右の方には微かに、光を反射する海だか湖だかが見える。
さらに前方には近くの山と同サイズの巨大な亀と、それより少し小さい雷を纏った馬が戦っている。
オイィぃいいいいッッッ!!!!
お約束?お約束なの?
やめてくんない?そういうタチの悪いの。
こんな展開の対策なんて練れるわけないじゃん!受け身でも取れっての?飛行魔法陣?空中でタブレットいじれるか!できてもそんなん書けるか!
……ていうかあそこ行った奴とか絶対巻き込まれて死ぬだろ!
考え事をしていても少しずつ近づいてくる木々、その隙間から銀色(全く比喩ではなく)のドラゴンが顔を出しており、龍也と目が合う。
もしかして受け止めてくれちゃったりするかなー、とか思ってニコっと笑ってみると、
ガパァ
(何で口開けてんの!?)
ドラゴンはデカい口を開けて歓迎してくれた。
美味しく頂く気満々のようだ。
な、舐めやがってッ!
俺を……じゃなくて位置エネルギーを舐めてやがるぞ、このトカゲがァッッ!!!
龍也は半ギレ気味になりながら頼もしい味方の存在を思い出し、ベルトに挟んでおいた聖銀の剣を逆手で左手に、いつの間にか背負っていたリュックサックに入っていたタブレットを苦労しながら右手に持ち、【魔力強化】で両腕を強化する。
ーーそしてドラゴンの牙が目前になった時、
「オラァァアアアアアッッ!!!」
龍也はタブレットを勢いそのままに頑張って回転とかして上の牙に叩き込む。
バキィッ
バキャッ
タブレットが牙にめり込み、そのまま歯茎までたどり着き、上顎が押し上げられ、顎が外れると同時にドラゴンの頰が裂ける。
ドラゴンはこの時点ですでに瀕死の状態、緋々色金製は伊達じゃない!
しかし、龍也は追撃する。
「死ねトカゲェぇええええッッッ!!!!」
ザシュッ
続けて龍也は叫びながら上顎に剣を突き刺す。
そしてそのまま下顎の牙を蹴って跳躍し、
ボォ、ボォ、ボォ、ボォ、ボォ
「五指爆炎弾ッッ!!!」
残りの魔力を五本の指に均等に分け、「五指爆炎弾」をドラゴンの眼球付近に叩き込む。
「ガァァアアアアァアア!」
ドラゴンは苦痛の所為か、それとも断末魔か、もの凄い音量で叫び、
ドサッ、と音を立てて倒れ、ピクリとも動かなくなった。
龍也は受身を取って着地する。
「位置エネルギー……いや、認めざるを得んな。………空中スタート強え」