クエスト報告
動かなくなったアンドラシカから立派な角と毛皮をはぎ取り様のナイフではぎ取る。このナイフはギルドで冒険者登録をしたときに支給されたもので機能は最低限だが初心者に渡されることもありかなり使いやすい設計になっている。上位の魔物なんかになるとこの初心者用はぎ取りナイフでは刃が通らなくなるため上質な素材で作られたものを買わなければならないのだそうだ。試行錯誤しながら毛皮を剥いで角をたたき折る。毛皮の剥ぎ取り方なんかはあまり知識がなかったのだが結構うまくできたのではないのだろうかと思う。この毛皮と角は狩猟した証拠として必要なのでギルドに納品することになる。ただ、この時に納品する素材が質のいいものだと報酬にプラス効果が働くのだそうだ。角と毛皮を剥いだ残骸を適当な大きさに切り分けて袋に詰めていく。しかし量がとてつもなく多い。
「さすがにちょっと多いな…ユイさんから持ち帰り用の袋はもらったけどさすがにこんなにいらないかも。どうしようかな」
そう、ギルドに出る前にユイから必要かもしれないと特殊な袋を渡しく照れたのだ。なんとこの袋魚や肉といった生物を入れた時の状態を保持してくれるらしい。そしてそんなことを考えているとこの袋と一緒に渡された携帯の肉焼きセットの存在を思い出した。この肉焼きセットは火種を起こす道具と肉を焼く脚立がセットになっており薪を集めて火種を放り込んで肉を均等にぐーるぐる回すだけステーキができる。ちょうど腹も減ってきていたのでちょうどよかったのだ、そうと決まればさっそく薪を集めていく。
「そういえばクーロンって何食べるんだ?」
「我か?我は下位の魔物を食したりしてたぞ、大抵は縄張りに入ってきた愚か者だったがそれがどうしたのじゃ?」
「いや、今から余った肉を焼いて食おうと思ったんだがクーロンは食えるのかと思ってな。」
「なんじゃ、そういうことか。我はだいたいのものは食えるので安心してほしい。」
「そうか、よしこんなものかな。」
話しながら薪を集めてある程度たまったので火種を作って薪に放り込み慎重に火を大きくしていく。火が安定してきたら脚立に肉をセットして肉をぐーるぐると回していく。いい具合に焼けたら脚立から肉を外しクーロンに手渡す。次いで自分用の肉をセットし同じように作る。こんがりと焼けたら脚立から取り外してかぶりつく。噛んだ瞬間中から肉汁があふれて口内を満たしていく。この世界に来て初めての食事だ、何とも言えない感動もあり大変おいしい。食べ進めるとあっという間に無くなった。クーロンに目を向けるとすでに食べ終えたようだ。なんか恍惚としている。そろそろ戻らないと約束している17時に間に合わくなってしまうので帰る旨をクーロンにも伝える。
「ご馳走様、クーロンそろそろもどうか。」
犠牲になったアンドラシカに感謝を示し手を合わしながら言うと。
「あいわかった。しかし人間界の食べ物はとても美味じゃの!」
魔物ってよっぽどまずいのだろうか。いろいろと片付けながらそんなことを思う。
ギルドに帰る道すがらずっと魔力を体に巡らせる練習をしていたせいかギルドについた時には持続時間がかなり伸びたような気がする。町に着いた時に広場の時計を見ると16時40分だった、よかった間に合ったようだ。そのままギルドに行きクエストの報告を行う。
「すいません、クエストの報告をしたいのですが」
そういってアンドラシカの毛皮と角、クエストの受注用紙を受付嬢に手渡す。
「クエストの報告ですね!アンドラシカの狩猟ですか、少々お待ちください。」
今回の受付は赤い髪をショートにした元気な子だ、背は160㎝ぐらいで胸は残念な感じだ。
「お待たせしました、こちらが報酬になります!」
帰ってきた女の子から渡されたのは銀貨10枚銅貨50枚だ。アンドラシカ1体ぐらいならこんなものだろう。兎に角初のクエストクリアだ。最低限の資金は確保したし今日は宿に困らなくて済みそうだという事実に安堵する。
5話完結です。
一応ある程度話数がたまったらつなげようと思ってます。読みにくいと思いますので。