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初クエスト

ギルドに行くまでクーロンは終始ご機嫌だった。訳を聞くと


「我を召喚するような人間が今まで居なかったのでな、人間の世界に来るのは初めてなのじゃ!」


興奮しながらクーロンが答える。今のクーロンに犬の尻尾が付いていたら間違いなく激しく左右に揺れていただろう、その光景を想像して可愛さに身悶える。クーロンは周りに興味が行っているので気付かれずに済んだようだ。クーロンには気付かれなかったが周りの通行人からは「なんだこいつ」と思われていたのは言うまでもない。資金が潤った後にクーロンとショッピングするのもいいかもしれない。

ギルドに着くとなんだか前に来た時より人が多いような気がする。近くに居た人に尋ねると


「あと五分ほどしたらクエストの更新なんだ。いいクエストは早い者勝ちだからね。実績で評価されると言っても底辺の冒険者はどんぐりの背比べだから余計なのさ」


ということらしい、運がいいのか悪いのか。これは争奪戦に参加しない手はない。5分が過ぎようとしたときギルドのカウンターの奥から紙束を持った女性が出てきた。この前見た受付嬢の一人で金髪の髪を後ろで纏めており背は170cmほどありスレンダーな美人という印象だ。


「只今より新規クエストを掲示します!クエストは早い者勝ちですが暴力や破壊行為を行った方には処罰があります!怪我に気をつけて下さい!私が貼り終えたあとカウンターの扉を締めたら受注開始と致します!」


皆に聞こえるよう大声で叫びながら迅速にクエストの受注用紙を掲示板に貼っていく。女性が全て貼り終えカウンターに戻り扉を閉めた瞬間、人が掲示板に殺到する。


「ちょっ、嘘だろっ!?」


タイムセールの主婦のごとく冒険者が掲示板に向かっていくのだ。そんな中俺は揉みくちゃになりながらなんとか進もうとするが流石屈強な冒険者達。なかなか前に進まない。掲示板の前にたどり着いた時には既に3分の2以上の新規クエストが消えていた。その中で1枚なんとか掴みとりカウンターに叩きつける


「お願いします!」

「クエストの受注手続きを始めます。」


聞き覚えのある声がしたと思って顔を上げるとユイだった。


「さっきぶりですね、資格条件は大丈夫ですか?」


なにせ何も見ずに掴みとったので内容なんぞ見ていないので不安がちに聞いてみると


「ええ、満たしてます。満たしているのですが...」


なんだか嫌な予感がした。


「受けれる中で最も難度が高いですね。」


外れて欲しかった。しかしこちらには龍族の長クーロンがいる。


「えっ、そうなんですか!?ちなみに内容はどんな?」


クーロンの存在はできるだけまだ秘密にしておきたいので驚いた振りをする。


「えーっとですね、こんな内容です。」


パーフェクトラビットの討伐

依頼主 傭兵団長

ラングリスの北東5km先に出現した[兎の楽園]のダンジョンボス”パーフェクトラビット”を討伐して欲しい。


報酬 白2 金50

参加資格 無制限

期限 一月


ダンジョンボスの討伐だった。今度こそ素面しらふで驚き、泣きたくなった。いくらクーロンが優秀だとしても主が先にやられては本末転倒である。クーロンに意見を仰いでみると


「主様は魔力の使い方を覚えればダンジョンボスぐらいなら討伐出来るだろう。幸い期限は一月とある、それまでは我の取ったこのクエストをこなしながら我が鍛えよう」


そう言って差し出した5枚ほどの受注用紙、それも俺のレベルに合わせているが段階的に難しくなっているような気がする。クーロンってなんて優秀な召喚獣なんだ!というかいつの間にとったのかと言う感じである。そんなにスパルタじゃなくても…と思うかもしれないが戦い方を覚えることも資金調達に並ぶ急務だ。働かざるもの食うべからずということわざもある。なのでここは当然


「じゃあ俺のと合わせて6件の受注をお願いします」


受注するに決まっているだろう?


「かしこまりました、しかし大丈夫なのですか?この量にダンジョンボスまで…何よりスバルさんは今日初めて冒険者になったのでしょう?」


まったくもって正論だった。

(そりゃLV1だもんなぁ…)

そう、今日冒険者になった俺もきついと思っているぐらいだ。ユイがそう思うのも無理はない。


「大丈夫です。スパルタの教官がいるので。あとすいません、お仕事何時に終わりますか?少しお話ししたいことがあるんですが。」


決してナンパではない、相手がいくらかわいかろうとこれは秘密を貫く上で必要なことなのだ。ギルドに協力者がいるだけでずっとクエストを進めやすくなるのでユイに話そうと思っただけだ。


「はえっ?仕事はあと17時ほどになれば終わりますが…」

「そうですか、それまでには帰ってこれるように頑張らなければなりませんね。では俺はクエストに行ってきます!」


今は正午過ぎ、今から5時間もあるのだから死ぬ気でやれば何とかなりそうだ。

その後クエスト地点に向かう道中でクーロンが勝ち取ったクエストを改めて見せてもらった。


①アンドラシカの狩猟。

②ゴブリン20体討伐

③オーガ10体討伐

④ゴブリンキング討伐

⑤キラーラビットの捕獲


残りは俺のとったパーフェクトラビットの討伐だ。今俺たちはアンドラシカの狩猟のためアンドラシカを含めた多数の動物達が集まる湖に向かっている。道すがらクーロンに召喚士の他に暗殺者の職を持っていることを打ち明け隠蔽と投擲のスキルの使い方を聞いてみた。


「そうさなぁ、我は人間の職業なんぞにあまり興味がない為あまり多くは言えぬ。しかしどんなスキルでも共通していることがあるのじゃ。」

「共通していること?」

「そうじゃ、どんなスキルもマジックポイント、主様達人間がえむぴぃと読んでるあれじゃな。マジックポイントを使って魔力を高め工夫し、研究する。そうして技を磨いたり個性を出したりする。それをスキルと呼ぶのじゃな。」

「ということは工夫次第でどんなスキルにもなっていくってことか?」

「うむ、そうなるの。ただしそれぞれの職は個性があるため棲み分けはあるがのう」

なるほど、じゃあ俺の場合は召喚と暗殺に関してのスキルが発現しやすいということか。

「スキルについてはよくわかった。でもクーロン、そもそも魔力ってどうやって扱えばいいんだ?」

「そうさなぁ、魔力が体を巡っていくイメージをしてみてはどうじゃ?主殿の場合は隠遁と投擲のスキルがあるから¨気配を殺す¨や¨あの対象に当てる¨と言ったイメージをしながらだと上手くいくかもしれぬ、魔力についての説明はこんなところじゃ」

「ありがとう、少しやって見る。クエストにも役立つかもしれないしな」


相手は動物だ、警戒心が強いし人間の気配なんかがしたらすぐに逃げてしまう。そういう意味では隠遁は最適だし投擲も遠くから仕留めるのに有効だろう。

(血が体を巡るイメージ...こうか?)

クーロンが言った通りに血が体を巡るように意識して気配を殺すようなイメージと、心なしか足音を殺すように歩いてみる。うーむ、これはあんまり実感がわかないな。


「クーロン、今少しやってみたんだけどできてたか?」

「うむ、まだまだ拙いながらもできておったぞ。しかし戦闘の時に敵は待ってくれぬので常日頃からの訓練が物を言うことは言うまでもないの?」


確かにそうだ。戦っていたら意識して発動させるなんて余裕はそうそう出ないだろう。意識せずにスキルを発動できるようになる、これは戦闘する上で必須のスキルになりそうだ。


「ああ、そうだな。常日頃から魔力の操作には慣れるように頑張るよ。」


そうこうしているうちに目的地が近づいてきた、湖から少し離れたところで様子を伺う。

(あいつか?)

体長100cmぐらいと150cmくらいの鹿がいた。ただし片方には50cmほどもある雄々しい角が、もう片方は生えてきた所のようですかなり短い、親子かもしれないが仕方ない。念のためクーロンにも確認したが正解のようだ訓練も兼ねて一人でやって見るように言われた。どうしようかと考えいると直径5cmほどの石が目に止まった。周囲にはこのサイズの石がゴロゴロ転がっている。

(投擲を試してみるか)

命中率にはそこまで自信はないため保険のために多めに集める。10個ほど集めたあとその内の1つを拾い上げ構える。構えたまま魔力を身体に巡らせるイメージをしながらアンドラシカの親に狙いを定める。狙う部位は足だ。アンドラシカの親子には申し訳ないがこれも生きるためだ。


「よし。」


魔力を十分に循環させたので振りかぶって、投げる。狙いは少しずれて胴体に当たり鈍い音が響いた。周りの動物達な何事かと警戒し逃げ始める。アンドラシカの親はうずくまって逃げられない、親鹿の傍に小鹿がより心配そうに鳴くが親鹿が力強く鳴いたあと小鹿は逃げた、小鹿に逃げるように言ったのかもしれない。何度もいうがこれは生きるためだ、決して親子の仲を好きで引き裂いているわけではない。

(せめて苦しまずにすぐ逝かせてやるからな!)

もう一つ石を拾い上げ今度は素早く魔力を練り上げて頭を狙い、投げた。今度は狙い通り頭に当たり沈黙。そのまま動かなくなった。


「これで、クエストクリア...か?」


半ば独り言のようにつぶやくと


「そうじゃの。」


クーロンは淡々とそう答えた。

これで、4話目完結です。(2回目)

あれ、なんでこんな暗い終わり方なんだろう。

うーん、でも前のよりはいいか。楽しかったらそれで満足です←

一応魔物ではない一般の動物だったので結構感情移入出来るなぁと思いまして...え?いらない?やだなぁ、そんなこと言わないでくださいよー。

とりあえず5話に向けて頑張ります

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