白虎との戦闘?
一般人が対面したらまずチビる、間違いなく。それほどの恐怖をまとわせた存在が目の前にいた。
「おいおい、まじかよ。来ちゃったよ。どうしようかクーロン?」
「どうしようも何も、逃げれると思うかてか?」
「無理、だってあの巨体であの速さだぜ?一歩で追いつかれるわ。」
そう、気配を感じた後一瞬だったのだ。いくら魔力で身体強化を図れたとしたとしても目の前の白虎からの逃走はまず敵わないだろう。では、どうするか。
「すいませんでした!!!」
全力の土下座である。
「オイ、貴様儂らを馬鹿にしておるのか?え?」
「滅相ももない、僕はクエストでゴブリンキングの討伐を引き受けましたがあなた様みたいにお強い方がバックについていると露知らずでして…」
もちろん嘘である。白虎がいることを承知できたのだからこれで見逃してもらえるのであれば万々歳、見逃してもらえないならその時はその時だ。
「ほう、そうであったか。では見逃すしかないな…などというとでも思ったか?ここに来た以上友の居場所は知れてしまった、ここで帰らせ仲間を連れ帰ってきたとあってはともに顔向けできぬ。なのでな、死ね。」
無慈悲な宣告と共に振り払われる剛腕、振り払われた後には肉片一つ残っていない。それも当然。
「ぬ?感触がないな、どこに行きよった、小童!」
「ここだよ、ここ。」
白虎が声の聞こえたほうに振り向くと天井に蝙蝠のように逆さにぶら下がっているスバルの姿があった、龍の鎧をまとわせた姿で。
クーロンはあらかじめ召還していたので慌てて呪文を唱えて緊急大脱出。というわけでる。
「いやぁ、危なかった危なかった。危機一髪ってこういうことを言うんだな」
「ほう、人間風情が召喚獣をまとわせるとは、儂も甘く見すぎたかのう、小手先の攻撃では貴様には通じぬということか。では、どこまで耐えることができるのか試してやろう。」
「そりゃありがたいね、是非ともお供させてもらおうじゃねぇの。」
そう言い終わると同時に白虎がとびかかってくる。それを天井を蹴って避けた先に振るわれた二尾を受け流してカウンターで魔力弾を撃つもひらりと避けられて攻撃に転じる白虎。そんなやり取りを幾分かした頃。
「貴様なかなかやりおるな、人間風情がここまででやるとは思わなんだよ。どれ、儂も本気で相手してやらねばこりゃ失礼かの。何、案ずるなここまで耐えた敬意を表し楽に殺してやろうぞ!!」
瞬時に膨れ上がる魔力が洞窟を轟かせ白虎の殺意が俺に牙をむく。しかし
「悪い、本気を出すのはいいんだけどさ、この洞窟崩れそうなんだけど」
「な!?」
俺と白虎が繰り広げた攻防で元の姿よりだいぶ変形した洞窟に白虎が魔力を膨らませた影響で洞窟全体が振動、それがトリガーとなって洞窟の全体のバランスが崩れたのだ。
洞窟内は阿鼻叫喚。そりゃあそうだろう。自分たちが死ぬかもしれないのだ。
「相手はモンスターだからいくら殺してしまっても構わない」
そんなことは断じてない。此処のゴブリンたちは普通に生活していただけなのだ。俺だって生活するために仕方なくやっているだけでそんなことは思ってない。ならばどうするか
「オイ白虎、手を貸せ。」
「ぬん?儂に何をしろというのだ」
「いいからしゃがめ。お前はこいつらを死なせたいのか?」
「いや、そんなことは断じてない!しゃがめばよいのだな!」
「よし、じゃあゴブリンども!よく聞け!今から白虎の背中に自力で乗れるものは乗れ!女子供はこっちにこい!白虎に乗せてやる!余力のあるものは手伝え!乗ったやつは白虎の毛を死んでも離すな!時間がない!急げ!!」
さすが集団生活を営んでいることがある。指示をしたとき一瞬困惑していたがすぐに行動を始めた。学校や会社の避難訓練なんて目じゃないほど早かった。ほんとに1分もかかってないと思う。
「よし、全員乗ったか!?」
「はい!点呼も済ませました!」
「じゃあ白虎、俺は落ちたやつ拾うから急いでで出口を目指せ!」
「承知した!」
白虎は出口まで落盤をものともせず駆け、洞窟が崩落するより早く脱出した。落盤は魔力弾で後ろから砕きながらいったのでそこまで大けがにはなっていないだろう。白虎から落ちるゴブリンを心配したが意外にみんな無事にしがみついていれたようだった。ちなみに俺はというと崩落ぎりぎりに脱出したのでかなり冷や冷やした。
7/5加筆修正しました。