ゴブリンキングとの遭遇
目が覚めるとこの一週間弱見続けていた白い雪が目の前になく醜悪なゴブリンの顔があった、ファンタジーにあるようなありきたりな表現だが実際そうなのだ、人の顔を殴り続けた後のような顔をしており体からは息が止まるような腐臭がする、その醜悪なゴブリンが一匹目の前1mほどから俺のことをガン見してくる、その他にも広い部屋に目に見えるだけで男女含め50匹ほど。部屋は洞窟をくりぬいて入り口から膨らませた形状をしてるようだ。いや、そんなことは今はどうでもいいのだ。それよりもなぜこんな状況になっているのかとどうこの状況を打破するかである。現在の俺の状況はというと地面に突き刺した鉄の棒に手足を縛られ、鎖を破るために魔力を身に纏おうとすると途端に魔力が霧散してしまい魔力を纏うのが難しい、その上猿ぐつわまでされている。
『何がどうなってる?魔力は極限まで薄くしていたはずなのになぜ見つかった…?』
そう、虎に気付かれないよう細心の注意を払って今まで登ってきたのだからばれるはずがないと高をくくっていたのだがどうにも警戒心の異常に強いゴブリンキングには筒抜けだったようだ。
「オイ、ニンゲン。メガサメタカ?」
と片言で話しかけた後、隣のゴブリンに俺にはわからない言葉で話しけたと思ったら話しかけたゴブリンは走って別の場所に姿を消した。10分ほどゴブリンに見続けられているとひときわ大きなゴブリンがノシノシと歩いてきた。いや、これはゴブリンといってよいのだろうか…なんというか。イケメンなのだ。ゴブリンなのに、ハゲなのに。そう、ナイスガイという言葉がぴったりはまるような。
「おお、目が覚めたようだな。ラリー、猿ぐつわを外してやれ、どちらにしろ魔法は使えん。」
ラリーと呼ばれたガン見のゴブリンが猿ぐつわを外してくれた、息苦しくて敵わないんだな猿ぐつわって。
「さて、人間よここにたった一人で何しに来た?まぁ大方想像がつくが」
「想像がついてるなら嘘ついても意味ないな直球で言う、お前を倒しに来た。」
「ほう、お前たった一人で儂に勝てると?そう抜かすか」
「そうだな、昨日の晩まではそう思っていたさ、でも今は少し違う。」
「ほう?何がどう違うと?」
「お前、俺と契約しないか?実は俺召喚士でな」
「ハッ!人間の召喚士が儂と契約しようなどと片腹痛いわ!知っておるぞ、人間の召喚士はろくな召喚ができぬと!」
まぁ、普通そうなるよな。と内心思いつつ普通に言っても信じてくれなそうなので実力で信じてもらうことにした。
「なーこの鎖ってさ。魔力をどうこうするもんだよね?違う?」
「ぬ?その鎖は魔力を吸い上げて霧散させてしまうものだ。かといって非力な人間では絶対に千切ることもかなわぬぞ」
「あ、そうなの?」
瞬間内包していた魔力を瞬間的に外に放出放出した。MPにしてほんの1000万ほどの量を瞬間的に、無理やり外に出した。この鎖は一度中に魔力を蓄え霧散させる仕組みらしいが蓄えの限界量を一瞬で突破すれば鎖は魔力を霧散させることができずにぼろぼろに砕け散るようだ。近くにいたゴブリンは吹き飛ばされていた、少々やりすぎたようだ。
「どう?これで信じてもらえたかな」
「ば、馬鹿な...人間の小僧如きがこんな魔力を有しているはずがない!!」
「そうみたいだね、まぁ俺はイレギュラーだと思っといてよ。」
「むぅん...しかし今の魔力放出は不味かったかもしれぬな」
ゴブリンキングはニヤリと笑いそう言った。
「何勝ったような顔してるんだよ、まだ勝負すら始まってないのに」
「いいや、勝負ならついたさ。いや、これからつくと言った方が正しいかな?」
瞬間ゾクリと背筋が寒くなり凄まじい怒気を纏った魔力が襲いかかると共にクーロンを召喚しながら後ろに大きく飛び退いた。その瞬間「ズドン」と音がしたと思ったらさっきまで立っていたところを中心に地面が抉られていた。
「全く主殿は何をしておるのだ...」
「いやぁ、全く、こんなつもりじゃなかったんだけどね?いや、ほんとに、マジで。」
召喚されたクーロンから叱られながら音の発信源を見ると洞窟の大広間の3分の1ほどもある身体をもつ白虎が立っていた。額に天に伸びた角を持ち尻尾は二股になっている、さっき地面を抉った爪唸る口元から覗く牙は鋭く引き裂かれてはまず助からないだろう。
「人間風情が我が友に刃を向けるとは命知らずもいい所だな、その命私が摘み取ってやろうぞ!!」