02 返事
あれっ、返事が来てる。
ただのメーワクメールじゃなかったのかしらね。
母親が大好きだった。別にマザコンでは無い筈だ。
小学生の頃は根暗で、友達なんかいなかった。中学生ではいじめられた。ただ、唯一喋っていた少女は事故で死んだ。
それと同時に引きこもりがちになり、母にはずいぶん迷惑をかけた。その母も、一年前死んだ。
ネットの世界にこもりきり、現実を見てみれば、ろくに働きもしない自分と、尽きて来た金しか目に入らなかった。
死にたかった。
『昨日のメール、みました。死にたいんですか。そーですか。私はもっと生きていたかったですよ。』
ああそうかい。
お前と俺は違うだろうよ。
『何でですか。私の仲良かった人はもっと辛い思いしてますよ。多分それでも、まだ生きてると思いますよ。
あぁそれか、死んで、私と一緒にジョーブツします?なら死にましょう。』
死にたいだって。
知らんがな。
返事がこなかったら放っておくつもりだった。だって画面の向こうの見ず知らずの人間だもの、わたしゃみつをか。
でも返事は返した。
話くらい聞いてやるか。
もし、別に死にたいとも思ってないデブならそれはそれでいい。
あの、タッチーみたいな人かもしれない。あの、幸福になりたいといっていた、不幸な綾乃かもしれない。
「これ、どう思う?」
「幽霊?何、これ。こんなオカルト私に相談されてもね。あぁ、ニートのボッチだからしゃべる人居ないのか。従兄を大事にしなさいね。」
従兄の綾乃。
彼女は、自分が死んだら悲しむだろうか。
奴に
『とりあえず人と話してアタマ冷やしたらどうです。あっ、ヒキニートにお友達なんていませんか!すみまへんね。(≧∇≦)』
と顔文字つきで言われた。
確かにそうかもしれない。何年も人と接していないと頭がおかしくなるのかもしれない。
「やめなさいよ、いつかウィルスとか請求とかくるよ。」
「・・・うん。ちなみに、ちなみに聞くよ。俺が、もし、死んだら・・・、悲しむ?」
鼻で笑われた。
「何よ急に。悲しむんじゃない?あんたのお母さんも死んだんでしょ?あんたが死んで、悲しむ人なんて私と、誰だっけあの子。唯一仲良かった、」
雪乃のことか。
「雪乃?あいつ、だいぶ前死んだよ。」
綾乃は少し驚いて、
「なら、あんたが死んで悲しむ人は私しかいないじゃん。193人分位泣いてあげようか?」
それは、肉親だからか。少なくとも、「従兄」と言う関係があるからか。
綾乃は、ふと思いついた様に言った。
「なら、その自称幽霊の子が悲しんでくれるかもね。画面の奥の子とはいえ、少しでも知った子なんだし。」
んな訳あるか。だいたい、ウィルスとか言ってたのはどいつだ。
「私も死神に付きまとわれててね。幽霊もいるんじゃないかっておもって。」
死神?なんだそれ。
ついにアタマにお花畑が咲いたか。
自分が死んだら、綾乃は悲しんでくれるのか。
とにかく、幽霊野郎と関わるのはこれっきりにした方がいいかもしれない。
綾乃の言うとおり、ウィルス等の類かもしれない。死ぬのなら、余計な物は遺さず死にたい。
しかし、今日の事で死にたくないなんて思ってきたじゃないか畜生。
『こんばんは。まだ生きてますか?私は死んでます。名案を思いついたのですよ。』
『もしもーし?電話じゃないか。返事こないってことは死んでるって事ですよね?』
『返事が来なかったら最期のメールにしますね?』
もうコイツとは関わらない。
それなのに、
俺はパソコンの前に座り、返事を打ち始めていた。




