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第七話 ②

 威勢よく家を出たものの、式の開始時間まであまり猶予がない。

「特急で間に合うかどうか……」

 というか、式に行って私はどうするつもりなのだろうか。

「……考えても仕方ない! 走って駅まで行こう!」

 その時だった。

 ブロロロロロロ!!

 二人乗りの大型バイクが私の前で停車した。

 二人のヘルメットを被った男が乗っている。

「寺町さん」

 そう言って男がヘルメットを取る。

 きらり。

 男の頭が太陽光に反射した。私は一瞬、目を細めてしまう。

「ザビエル教頭! それに、ブサイク校長も!」

 なんと、二人の男たちは私たちの高校の校長、教頭だった。

 いい年したオッサンが、なんてパンクなバイクに乗ってるんだ。

「乗りな。式場まで飛ばしてやる」

 ブサイク校長が、顔に似合わずハリウッドのイケメン俳優くらいしか言うことを許されていないセリフを言う。

 迷っている暇はない。

「あ、ありがとうございます! でも、どこに乗ったらいいのですか?」

 バイクは二人乗りだ。

 ブサイク校長は少し考えた後、口を開いた。

「ザビエル教頭、降りろ」

「え! 私が降りるのですか!?」

「悪いな。このバイク二人乗りなんだ」

 どこかで聞いたことのあるセリフだが、ザビエル教頭は渋々バイクから降り、私にヘルメットを渡した。

「応援していますよ!」

「……はい!」

 バイクに跨り、ザビエル教頭の言葉に答える。

「じゃあ、行くぞ……!」

 ブサイク校長の一声と同時にバイクは猛スピードで走りだす。




「も~! どうしてスピード違反取り締まられるの!」

 ブサイク校長は少し飛ばし過ぎたため、おまわりに止められた。

 ブサイク校長はその時、「あぁ、これで免停だ……」と絶望感溢れる声で呟いていた。

 だから、私は現在一人で式場までダッシュしている。

 幸い、式場まであともう少しのところだったので、時間には間に合いそうだ。

「はぁ、はぁ、はぁ」

 息が苦しい。心臓が痛い。

 けれど、大切な友達のために走る。

「……!」

 大きな、まるで中世ヨーロッパの城のような建物が見えてきた。

 あそこが式場か。

 あんなに豪華なところで……流石に金だけはあるようだ。

「よしっ! もう少し!!」

 再び気合を入れ、私は走る。

 免停になってまで、私のために飛ばしてくれたブサイク校長のためにも。




「四条葵と鎌瀬犬吉の結婚式に来ました!」

 招待状を手に大声でそう言う。

 普通なら、受付でこの言葉を使うだろう。しかし、今私は城の門番にこれを言っている。

「……」

 門番は黙っている。

 門番といっても普通の警備員ではない。やたらと図体の大きい男だ。

 しかも、五人もいる。

「招待所があります!」

「通すことはできない」

「なぜ!」

 すると、門番は一枚の紙を取り出し、それを読みあげ始めた。

「寺町祇園、嫌がらせのつもりで招待状を出したのだが、まさか本当に来るとは思わなかったよ。俺と葵さんの結婚式の邪魔はさせられない。だから、御引き取り願いたい。まぁ、どうしてもと言うのなら、警備をかいくぐり式場まで来ることだな。鎌瀬犬吉」

 つまり、今のは鎌瀬からの伝言、いや、挑戦状なわけだ。

 しかし、どうする?

 こんなガチムチを突破できるの!?

 式の時間は刻一刻と迫る。

 考えても時間が過ぎるだけ。

 焦る気持ちで頭が回転しなくなってきた。

「ふふ……我が眷属よ、苦戦しているようだな」

 やたらと作りこまれたこの声は……

 振り返ると、やはり彼らがいた。

「眼帯さんとフードさん!」

 もしかして、助けに来てくれた!?

「ふんっ! 助けに来たのではない。お前を倒すのは俺だ。俺以外のヤツに負けるのは許さん。それだけだ」

 フードの男が言う。

 これが俗に言うべジータってやつだね。

「ふふ……我が眷属よ、我らの力、とくと見るがいい!」

 眼帯がそう叫ぶと、二人の手に大きな剣が出現した。

 警備のガチムチどもが彼らを取り押さえようと一斉に飛びかかる。

『中二トルネード!!』

 二人の剣から魔法陣が現れる。そしそこから、突風が吹き荒れる。

「うぉぉぉぉぉ!」

 次々とガチムチ共は吹き飛ばされる。

 だが、彼らもプロ。

 飛ばされては立ち上がり、また向かってくる。

「ふふ……我が眷属よ! 先に行け!」

「で、でも!」

「ふんっ! 我らは無敵。すぐに追いつく!」

 眼帯さん……フードさん……

「ありがとう……皆の協力、無駄にしないから! 絶対」

 それだけ言い残して、私は門を抜け、城へと向かう。

 あと、私はいつの間に眼帯さんの眷属になったのだろうか。



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