プロローグ~第一話
小説初投稿です。至らない点、拙い点、多いかと思いますが、どうか暖かい目で見てやってください……!作品については、タイトルの通り少女同士の友情、バトル、コメディーの要素を含みます。そして、どうしようもない百合ギャグも。
プロローグ
今日も、いつもの通学路を機械的に辿る。
背中の鞄は、私には重たすぎるような気がする。
太陽はこれでもかというほど元気に私を照らす。
「はぁ……」
前に歩く学生グループに目をやる。
私と同じ制服。
タイの色が同じだから、学年もきっと同じだろう。
名前は知らない。
彼らは、まるで強いられているかの様に騒ぎながら歩く。
誰かと一緒に騒いで騒いで騒いで騒いで騒いで……
この行為に本質的な意味はあるのだろうか?
馬鹿だなぁと思う。
いや。
彼らを馬鹿だと思い、そして自分こそが、自分だけが利口である思うことで、私は私を正当化しているのだ。
こんな自分が大嫌い。
でも、きっと、私の好きな人ランキングを作ったとしたら、そこに断然トップで記載されるであろう名前は、私の名前。
そんなことを考えながら、今日も学校へ向かって歩く歩く歩く。
「……ん?」
銀色……?
かすかに銀色が見える。
私は目を細める。
それは、少しずつ私に近付いてきた。
人だ。
銀色の髪。
赤い瞳。
そして、変わった服装だ。
「着物……?」
そして、その着物少女は私の真正面に立ち止まり、私の目を見て微笑んだ。
「私と、友達になりませんか?」
第一話
私の名前は寺町 祇園。
高校二年生。
プロフィールに変えて、私の今日一日の行動を紹介しようかな。
一時間目。体育。
朝からの体育は憂鬱すぎだよ……
今日はバスケのパス練習。
ペアを組む相手がいないから、先生と組んだ。
二時間目。現代文。
今日は漢字テスト。でも、前回の授業を風邪で欠席しちゃってて、テスト範囲が分からない。
範囲を聞く友達も、大して仲が良くないクラスメイトに聞くコミュ力もないから、ぶっつけ本番だったんだ。
三時間目。ホームルーム。
再来月にある文化祭の話し合い。
一言も発言しないで終わる予定だったのだけれど、リア充系のクラスメイトに「寺町さんどぅ思ぅ~?」って聞かれたから、「多数決で決めたら」って言おうと思ったんだけど、今朝から一度も声を出していないこともあって、思うように発声できなかった。
四時間目。科学。
今日は実験だった。私は遠くから見ていたんだけど、最後のレポートに『この実験における、あなたの役割』という欄があって、凄く戸惑った。
無難に、「監督」とか書いておいた。
そして、今、昼休み。
私はいつもの場所へと向かう。
これだけ言えば想像つくかな?
そう。トイレだよ。
個室でぼっち飯だよ。
ほとんど誰も使わない西館三階のトイレを目指す。
到着すると、周りに誰もいないか念入りに確認してから個室へと入る。
そして、お弁当を広げた。
「あ、大好物のエスカルゴ入ってる~!」
こんな独り言を呟いても、虚しさは増すばかり。
「どうやったら、友達ってできるんだろう……?」
本当にこれは謎だよ。
専門家は何をしているのかな?
ピラミッドの謎とかもういいから、こっちを解明してよ!
世の中への不満を抱えながら、エスカルゴを頬張る。
その時だった――
『緊急警報です! 緊急警報です!』
スピーカーから教頭の声がした。
確か、名前は……ザビエルだったかな。
禿げてるしね。
『校内に不審者が侵入しました! 不審者は西館三階に向かっています! 生徒は今すぐにグラウンドへと避難してください!』
え? え?
西館三階って私がいる所だよ!?
ここ、人が普段来ないから、私しかいないよ!?
これ、やばいよね!?
「い、急いで逃げなきゃ……!」
捕まったらきっと、エロ同人みたいにされちゃうよ! きっと!
個室を押し開け、急いで階段へと向かう。
普段、運動をしないから、足が思うように動かない。
やはり、と言うべきか、世の中は非常だ。
私の目の前に二人の男が立ちはだかった。
「ふふ……ようやく追いつめたぞ、教会の犬め」
眼帯を付けた男が囁くように言った。
ジョ○ョ立ちのようなポーズを取っている。そうとう自分に酔っているようだ。
「ふんっ! 闇と光、双方の力を宿す我らに敵などいない……」
フードを目が隠れるほど深く被った男も言う。
口元にうすら笑いを浮かべ、不気味さを演出している。
「――!」
この人たち、絶対不審者だ!!
だって、いまどきこんなステレオタイプな中二病見ないもん。
私は、その圧倒的なまでの中二力を前に、怖気づいてしまった。
「私と契約してください!」
その時、背後から声がした。
藁にもすがる思いで私は振り返る。
「あ、今朝の……」
今朝の着物少女が息を切らして立っていた。
「私と契約したら、その中二患者と戦えます!」
「契約!?」
え、どういうこと?
もしかして、ダイナミックな中二ごっこ!?
「時間がありません!」
着物少女が叫ぶ。
あ、これってもしかして、一種のドッキリなのかな?
ならば、ここはオタクとして悪ノリしてみようかな。
「じゃあ、契約しよっか」
「あ、ありがとうございます!」
私の手を取り喜ぶ着物少女。
その瞬間、私と着物少女を光が包んだ。
そして、私の手にはいつの間にか旧式のケータイが握られていた。
「これで戦えます!」
見ると、着物少女の手にも同じものが。
しかし、戦うってどうやるのかなあ?
あっ、私が着物少女に命令するとか!?
「ゆけっ! キモノショウジョ! でんこうせっか!!」
「私はポケ○ンでも、着物少女でもありません!!」
「そ、そうだよね。ごめんね……」
そんな茶番劇を繰り広げる私たちを、まるで、変身シーンは攻撃をしない悪役の如く、ぼーっと見ていた中二男が、遂に行動を起こした。
「ふふ……行くぞ」
「ふんっ! 見せてやる!」
次の瞬間、中二男たちの手に、やたらと大きい剣が現れた。
そのデザインもやはり中二的だった。
「ほら! 私たちも戦いましょう!!」
「で、でも、どうやって……?」
「今は説明している時間はありません! 戦いながら覚えてください!」
なるほど。チュートリアル付きかぁ。
これなら説明書を読まなくても大丈夫だよね。
「まず、あなたのお名前を教えてください!」
「名前? 寺町祇園だけど……」
「祇園ちゃんって呼んでもいいですか?」
「え、い、いいけど……」
うわぁ! うわぁ!
家族以外の人に名前で呼ばれたの初めてだよ!!
嬉しいなぁ……
その時、嬉しい気持ちに呼応するかの如く、ケータイが振動した。
「祇園ちゃん! ケータイを中二に向けて、ボタンを押してください!」
私の感動をよそに着物少女が叫んだ。
「う、うん!」
かぱっとケータイを開く。
『友情』とディスプレイには記載されている。
変わった待ち受けだね。
言われるがままに適当なボタンを押す。
すると……
「うぐわぁぁぁぁぁぁ!」
「くはぁぁぁぁぁぁっ!」
ケータイから光線のようなものが放たれ、中二にヒットした。
吹っ飛んで、うずくまる中二。
うずくまり方も、左手を抑えていたり、心臓の前で拳を作っていたりと妙に中二的だ。
「ふ……なかなかやるな」
「ふんっ! だが、我らの力の前にはゴミ同然!!」
そう言うと、二人はすぐに立ち上がり、さきほどの剣を交差させるように掲げた。
「闇に堕ちた天使よ、三千年の時を経て……」
「封印を破り、今、我らに力を与えたまえ!!」
痛々しい詠唱が終わった瞬間。
彼らの剣から大きな黒い羽が出現し、私たちに向かってすごい速度で飛んできた。
「痛ったぁぁぁぁぁぁい」
「いやぁぁっぁぁっぁ!」
痛い!
すごく痛い!!
これ絶対どっきりじゃないよね!?
「もしかして……本当に黒魔術……?」
だとしたら一大事だよね?
やばい戦いに巻き込まれた……?
もしかして、私、ここで、死…………
「違います! 黒魔術なんかじゃありません! これは『リンクバトル』です!」
「『リンクバトル』……?」
「彼らのリンクポイントは中二病です! つまり、二人が息の合った中二を披露することで、攻撃になります!!」
何そのバトル!!
意味わからないよ!
でも、早くこれに順応して中二を倒さないと!!
「じゃあ、私たちも中二っぽいことを――」
「いいえ! リンクポイントはペアによって異なります!」
「そうなの!? じゃあ、私たちのリンクポイントは!?」
「おそらく、『友情』ですね……!」
そういえば、さっき、ケータイのディスプレイにも表示されていた。
すなわち、私と着物少女の友情が戦闘力に直結するのだろう。
「友情……」
絶望感が脳を支配する。
これまで、私は友情とは無縁の生活を送ってきた。
そんな私が、初対面の着物少女とどうやって友情を築けと。
「どうしよう……」
「大丈夫ですよ! さっき一回攻撃できたじゃないですか!!」
「そ、そうだけど……私に友達なんて……」
「そんなことありません! 祇園ちゃんからお名前を聞いた時、少しですけど、私は確かに友情を感じました! 温かい気持ちになりました!」
そんなこと言ったって……
できないものは、できないよ。
「ふふ……もたもたしていると、こちらから行かせてもらうぞ……!!」
「ふっ! 見せてやる! 混沌の力を!!」
今度は剣を使い、床に魔法陣を描いた。
正直、剣の切っ先を器用に扱いながら魔法陣を描く姿は、あきらかに滑稽だった。
「混沌の魔女、ウィキッドよ……」
「今、我らに力を与えたまえ!!」
魔法陣から、緑色の魔女が出現し、杖を振る。
杖から赤い稲妻が私たちに向かって放たれた。
いやだ!
いやだ!!
死にたくない!
恐怖で目を瞑った。
「――!」
痛く、ない……?
恐る恐る目を開ける。
そこには、私を庇って攻撃を受けた着物少女がいた。
ぼろぼろになり、足をふらつかせている。
でも、決して笑顔を崩さずに言う。
「大丈夫ですよ……! 私が付いてますから!」
「あ、あの、あ……」
声が出ない。
ありがとう。大丈夫?
この一言が言えない。
いつもそうだ。
大切な言葉は必要な時に出てこない。
それを後から思いついて、自己嫌悪に陥り、よけいに人間関係に億秒になる悪循環。
「ご、ごめんなさ――」
「謝らないでください……友達を守る、当然のことをしただけですから!!」
「――!」
あぁ。私はなんて情けないのだろう。
こんなに心配かけて、良くしてもらって、歩み寄ってもらって……
それでもまだ怯えているなんて。
今、彼女のために、そして、自分のためにできることは一つ――
「あの――」
「葵です」
「え?」
「私の名前です」
葵って言うんだ。
祇園と葵。
良い組み合わせだよね。
「葵、あのね……」
「私、コミュ力なくて、ぼっちで、オタクで、臆病だけど……」
すぅと息を大きく吸い込む。
「こんな私でよければ、葵の友達にしてください!!」
目を閉じて下を向いてしまいたい衝動にかられる。
でも、それに抗い前を向く。彼女の目を見る。
「はい! 喜んで!!」
屈託のない笑顔で葵が言う。
安心すると同時にケータイが再び振動する。
「祇園ちゃん! 行きますよ!!」
「うん。葵!」
二人でケータイを中二に向けて標準を合わせる。
「「友情トルネード!!!」」
二人で同じ言葉を叫ぶ。
打ち合わせなんかしていない。でも、言うべき言葉は直感で分かった。
巨大の竜巻が発生し、中二男へと進撃する。
あっと言う間に彼らは渦に飲み込まれた。
「あぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「気持ちぃぃぃぃぃぃぃもっとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
竜巻が消滅する頃には、彼らは気を失い倒れていた。
ってか、フードの男の叫び声、おかしいよね。明らかに。
「祇園ちゃん!!」
「あ、葵……!?」
葵に抱きつかれる。
潰れそうなくらい強い力だった。
でも、不思議と嫌な気はしなかった。
私たちの友情は、これからどうなるのか想像もつかない。
でも、きっと大丈夫。そう感じる。
ネガティブな私がそんなことを思うなんて、珍しいかな。
でも、これまでにないほど胸がドキドキして、葵となら、どんな困難だって乗り越えられるって、本気でそう思ったんだ。
「ここが祇園ちゃんの部屋ですか~」
きょろきょろと部屋を見回す葵。
今日は私にとって記念日だった。
なにしろ、友達を人生で初めて部屋に招き入れたんだから。
「祇園ちゃんのお姉さん、大丈夫ですか?」
私のぼっちをいつも心配していたお姉ちゃんは、嬉しさで卒倒しちゃったんだ。
もう。相変わらず過保護なんだから……
「大丈夫。ソファーに寝かせたから」
…………。
熱くもないのに汗が出る。
なんか、とてつもなく緊張する。
こんなキレイで可愛い娘が私の部屋にいるなんて!
「って、私は思春期男子かっ!」
「祇園ちゃん……?」
あ、ぼっち特有の特殊スキル『一人ノリツッコミ』が発動しちゃったよ。
はてなマークを頭に浮かべる葵。
「な、なんでもないよ! 椅子がないから、ベッドにでも座ってよ……!」
「ありがとうございます」
そう言って腰を掛ける。
しかし、着物で銀髪の超美少女がベッドに腰を掛けていると……なんていうか、特殊なビデオの撮影でも始まるのかなぁと――
「って! 私は思春期男子かっ!!」
マズイ、マズイ……
初めての友達の訪問に興奮(性的)しちゃったよ。
でも、どうやって気持ちを落ち着けたらいの!?
「落ち着け、落ち着け、落ち着け、落ち着け……」
呪文のように落ち着けコールをする。
全く気分は良くなってこない。
「祇園ちゃん。まずは、ゲームでもしませんか?」
「落ち着け、落ち着け、落ち――!! ゲーム!?」
「はい! お互いを知るためにも!」
「そ、そうだね! やろう、やろう!!」
ゲームは得意分野だよ。
二人プレイはしたことないけど、いつ友達が来てもいいように、コントローラーも持っているしね。
「じゃあ……鉄板のスマ○ラでどう?」
「いいですねぇ! 負けませんよ!!」
ゲームを開始する。
キャラクターセレクト画面が表示された。
「でっていう使うんだ」
「はい。かわいいですよね。でっていう」
「私は、桃姫かな」
「あっ、桃姫いいですよね~。特に、パンツが見えるところが良いですよね~」
「思春期男子かっ!!」
あははと二人で笑い合う。
少し緊張が解けたような気がする。
もしかして、気を使ってくれた……?
それから、私たちはゲームを楽しんだ……
「楽しかったですね!」
「そうだね!」
「やっぱり、ガチムチのレーサーが美少年剣士に掴み技をすると、なんていうか……捗りますよねぇ……」
「分かる! すっごい分かるよ!! でも、逆もいいと思うよ!!」
「確かに! 華奢な少年に思い通りにされてしまうガチムチ……イイです!!」
葵はBLの基礎が分かってるなぁ~。
私たち趣味も合うみたいだね。
「あと、桃姫×宇宙美女戦士もいいですよね!!」
「そうだよね!! スーツを脱いだらすっごい美人だもんね!」
「二人の熱い絡みが見たいです!」
「薄い本はよ!!」
百合もイけるなんて感激……!
あぁ、こんな話を友達とできる日が来るなんて……
ちなみに、葵は音速ネズミ×宇宙飛行士キツネもイけるんだって。私にはまだ到達できてない領域だなぁ。
「またね。葵」
「はい! 今日は楽しかったです! また今度!!」
葵は手を振りながら帰って行った。
しばらくゲームを楽しんだ後、私は『リンクバトル』について、説明を受けた。
葵も、多くを理解している様子ではなかったけれど、その話をまとめると……
一、『リンクバトル』とは、そのペアの『リンクポイント』を戦闘力に変えるバトルである。そして、『リンクバトル』の資格を持つ者を『リンクバトラー』と言う。
二、『リンクポイント』は、ペアにより異なり、中二、友情以外にも、多く存在する。
三、中二の剣、私たちのケータイのように、ペアにはそれぞれ、武器が存在する。
四、『友情トルネード』のような、必殺技もあるらしい。
五、これらの知識は全て、『リンクバトル協会作成ルールブック』に記載されていたらしい。
六、そして、この協会から葵のもとにルールブックとバトルへの招待状が届いたらしい。
葵から聞いた話は以上だ。
「う~ん。『リンクバトル協会』っていうのが、このバトルの主催者なのかな?」
なんのために、こんなことを?
謎は多いね。
「というか……」
『リンクバトル』とか、『リンクポイント』とか、『友情トルネード』とか、取り立てて言うほどのことじゃないんだけど……
「少し、センスが古いよね……」