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隕石投稿

作者: 谷 風汰
掲載日:2026/05/28

 1;名無しさん

   隕石w


 『東京都上空に巨大な隕石が確認されました。

  都民はいち早く避難してください』


 レポーターの声が響く。

 何度もマイクを落としそうになりながら、必死に状況を伝えている。

 少しだけ楽しそう。


 俺は、PCに浮かぶ文字列を眺めていた。


 2:名無しさん

   アホw


 3:名無しさん

   やばいってw


 4:名無しさん

   もっとやれw


 5:名無しさん

   いや、俺達も死ぬぞ?


 6:名無しさん

   まじやん


 7:名無しさん

   やばいって


 8:名無しさん

   >>1マジでお前ふざけんなよ。

    死んでも恨むわ


 9:名無しさん

  >>1孫子の代まで呪ってやる

    クソが


 10:名無しさん

   俺、アメリカに住んでるからモーマンタイwwwwwww


 11:名無しさん

   アメリカにも落とすよ

 

 12:名無しさん

  >>10 は?死ね


 

 俺はコーヒーを飲みながら、再びキーボードを叩き始めた。

 目標はロンドン・パリ・北京・ニューヨーク・デリー・カイロ。

 満遍なし。



 100:名無しさん

   隕石w



 PCを閉じた。

 背もたれによりかかる。

 

 「はぁ」


 一人ため息をついた。

 天井を見ると、小さなシミがいくつかあった。


「東京・ロンドン・パリ・ニューヨーク⋯⋯」


 呟きながら指を指す。

 一つずつ消滅していくことを妄想する。


 笑みがこぼれた。

 このまま部屋の中にいよう。

 テレビは見ない。

 どうせ騒いでいるだけだ。

 混乱はいらない。

 この充足感が大切だ。


 立ち上がった。

 台所に向かい、冷蔵庫を開ける。

 冷凍のハンバーグを取り出した。


 何の変哲もないシンプルな冷凍食品。

 子どものころ、母親が作ってくれた弁当によく入っていた。

 新潟の実家にはもう五年は帰っていない。

 

 母は、何をしているだろうか。


 ハンバーグを取り出し、レンジに入れる。

 四分でセット。

 ボタンを押す。


 レンジの中が赤く光った。

 燃える街のように見えた。

 ハンバーグはぐるぐると回っていた。


 時計の音が響いた。

 一定のリズムを刻んだ。

 霧に包まれた時間が過ぎる。


 あと一分か。


 俺は、タイマーの数が減っていくのを眺めている。

 じっと、ただそれだけ。


 10

 9

 8


 くだらない。

 

 7

 6 

 5

 4


 どうでもいい。


 3

 2


 あと一分あったほうが良かったかも?


 1


 ハンバーグは隕石に押しつぶされた。

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