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婚約者の本音がダダ漏れで、今日も愛おしい。

作者: 有梨束
掲載日:2026/05/19

手と手が触れた時だけ、その人の本心が伝わってくる。


だから、僕の婚約者はそれを使って、僕を揶揄ってくるのだ。


「ねえ、ルーベルト」

僕の名前を呼ぶと、自分から手を握ってきた。


『今日もかっこいい。ルーベルト大好き。初夜の時は、絶対メガネを外させるんだから』


ブランカは淑女の微笑みを携えながら、赤裸々な本心を僕に聞かせてくる。


「君、本当に顔に出なくてすごいね…」

「あら、愛の告白は聞こえたかしら?」

「僕が食べられそうって話?」

『だって、余裕なさそうに乱れているところを、早く見てみたいんだもの』


にこっと笑っているお淑やかな令嬢が、そんなことを思っていると誰が気づくというのだろうか。


はじめて手を繋いだ時からこんな感じなので、もはや僕も照れることがなくなった。


いい意味でブランカは、表と裏がはっきりしている。

それは令嬢としては、かなり頼り甲斐のある人だと思っているけれど。


『早く結婚して、1週間くらいルーベルトのこと閉じ込めておきたい』


これだから、ブランカは…。

僕の脳内でブランカが舌舐めずりをして、獲物(僕)を狙っているようにしか見えないのは、気のせいではないと思う。





「ファーストダンスを踊っていただけませんか?」

「喜んで」

ブランカを誘って夜会で踊ろうとした時、ふいにブランカの声が聞こえてきた。


『あの女、またルーベルトのこと見てる…!手を出してきたら、絶対に消してやる』

不穏な声が聞こえてきて、ブランカを見た。


そんな相手、いるのか?


僕の思っていることがわかったのだろう。

これ以上ないくらい綺麗に微笑んで、僕のリードで美しく舞った。


『最近、男を誑かしているって噂の子爵令嬢よ!顔がいいから、ルーベルトのことも狙っているの!ほっんと身の程知らず!頭の弱い殿方たちに囲まれているだけで満足しなさいよ、この股ゆる女…!』


最後の罵倒は聞かなかったことにしよう…。

でも例の子爵令嬢かぁ、厄介だな。


最近社交デビューしたばかりの令嬢のはずなのに、彼女のことはよく耳にする。

ブランカの言う通り、いい噂はあまり聞かないので、お知り合いにはなりたくないところだ。


秘密を隠せない女など興味はそそられないけれど、ブランカに靡く可能性があると思われているのは面白くない。


「僕には、ブランカだけなのに」

そう言うと、僕にしかわからないくらい少しムッとしてみせた。


ブランカはわかっていないのだ。

こんなおかしな能力を持っているというのに、これを使って想いを伝えてくる君だけに、僕が救われているということを。


『あの女にちょっかいかけられたら、ルーベルトを殺して、私も死ぬから』

僕の婚約者は、すこーし過激なのである。




ブランカが化粧直しに行っている間、ブランカの言うように例の子爵令嬢が近くまでやってきた。

さて、僕の方が身分が上だというのに、どうやって話しかけるつもりなのかな。

お手並み拝見とばかりに、視界の端に入れていると、躓いたように体を傾けてきた。


まるで、僕の腕の中に入ってきそうで、仕方なくその腕を掴んで距離を取った。


相手の令嬢は思ったようにならなくて驚いたようだったが、すぐに可憐な少女のような照れた笑みを浮かべた。

う〜ん、これならブランカの方が何枚も上手だな。


「も、申し訳ありません。緊張していて、足元をよく見ていなかったようです…!」

「そうですか、お気をつけて」

そう言って腕を離すと、え?それだけ?みたいな顔をされる。


それだけだろう、なんで何かあると思っているんだ。

これで簡単に誑かされるなんて、体の関係に都合がいいと思われているだけだろうに、そのことに愉悦を感じるタイプなのか?気が知れんな。


「ああ、メガネがずれてしまいましたね。すみません」

そう言って、勝手に手を伸ばしてきて僕のメガネを取ると、にっこり笑った。

男の物に気安く触るなんて、どんな教育を受けてきているんだか。


「返していただけますか」

「ルーベルト様は、メガネを外してもお美しいんですね」

会話が通じないタイプかぁ。これ以上探っても何もなさそうなくらい、頭空っぽらしい。


触りたくないが、仕方なく彼女からメガネを取ると、次々と声が流れ込んできた。


『ああっ、跪かせたい!貢がせたい!ボロボロになるまで、掻き乱してやりた〜い!こんなに可愛い私が相手してやってもいいと思っているのに、つまんない男〜!』


つまらない男で、結構です。


メガネをかけ直した時、ちょうどブランカが戻ってくるのが見えて、「では失礼」とさっさとその場をあとにした。

今度関わらなくてよさそうな相手だとわかったので、これ以上はいいだろう。


「ブランカ、おかえり」

「……」

「どうかした?」

僕が顔を覗き込んでも、笑みを貼り付けたまま何も言わない。


「手、握ってもいい?」

僕がそう言うと、コクリと頷いた。


『あの女がよくなっちゃったの…?』

「え」

思わず声が漏れたけど、ブランカの目が揺れているから、たまらなくなって抱き締めてしまった。


壁の隅で恋人が抱き合っていても、誰も気にしないだろう。

気にされても、特に問題ないし。


「早く帰ってきて欲しかったくらいだよ。僕を1人にしないで、ブランカ」

「…男として、それはどうなの?」

いじけているとわかって、嬉しくなってしまう。


僕は再びブランカの手を握り直すと、ブランカはやっぱり笑みは崩さなかった。


『あの女、あなたのメガネ、外してた…』


そこなの?


『私があなたのメガネを外したかった。その時は、初夜だと決めてたのに。そしたら一晩中愛せるのに…!』

「それは結婚がますます楽しみだね」

『あんな女に揺らがないで!』

「僕の声も、君に聞こえたらいいのにね」


僕がそう笑うと、ブランカは僕の手を引いて会場を出て行った。


「あれ、もういいの?」

「帰りましょう、あなたの胸の内を聞く方が大事だわ」

「それは、馬車の中で熱烈に口説いていいって話?」

『口説くのは、私がするの!他の女に目がいかないように、私だけを見てもらうんだからっ!』

「ずっと前から、ブランカしか目に入っていなんだけどなぁ」


僕がそう言っても納得しないようなので、ブランカの気が済むまで付き合うことにしよう。


『初夜でメロメロにするのは、私なんだからっ!』



こう、どうして、初夜にこだわるのかは、ついでに訊いてもいいのだろうかと、いつものように悩んでしまうのだった。






お読みくださりありがとうございました!!

毎日投稿139日目。


(追記)誤字報告ありがとうございました!修正いたしました!(2026.5.21)

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― 新着の感想 ―
ブランカ、思い込みが強そうだなぁ 将来苦労しそうw まぁ本音筒抜けなんで解決策は立てられそうですが
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