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無料で報復?  作者: ねこまんまときみどりのことり


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6/11

堤防が修復された

 朝からご婦人達の元気な声が響く。


 レアナが提供した食料で朝食を作り、みんなに配っていたのだ。


「おいで、みんな。まずは食べてからだよ。たらふく食べて頑張ろう!」


「おおっ、すごいな。今日はパンもあるのか? ありがたい」

「そうよ。発酵させてないから、膨らんでないけどね。少し硬いけど美味しいから食べな」



「温かいご飯、嬉しいね」


「俺、頑張る。すぐに堤防を直して見せる」


「まあ、威勢が良いね。無理せず頑張りな!」




 残った村人は、大人子供合わせて100人。

 ゴルドンの話だと、他の村人達からは「この地は復興しない」と言われ、既に周囲の貴族家の領地へ籍を移したらしい。

 彼らが住んでいた家には、何も残っていないそうだ。



  堤防の寝ずの番には子供もいたから、本当に厳しい状況だったのだろう。


「働き盛りの若い男衆が少なくて気になったけど、村を捨てたのね」


 幸い怪我人だけで、亡くなった者はいないと聞いたから、ここにいるのが全村人なのだろう。



 ゴルドンは援助が届かない状況で、彼らを止めることも出来なかった。長くここを治めてきた彼だから、きっと酷く裏切られた気がして悔しかったことだろう。


 だけど彼は逃げなかった。

 それが全てなのだ。




◇◇◇

 食事を終えた後、堤防の決壊へ麻袋に砂を詰めた土嚢を当てて補強をしていく。先に土で川の縁を整え、麻袋を積み上げていく。そして周囲をさらに土で覆う。


 カーブで水圧に弱い部分を拠点にして補強していく。


 雨が降っていなくて助かった。

 水嵩が増え越水したり、ぬかるんで足場が悪ければ、今日のように早く作業はできなかった。



「やったぞ。これで川は当分大丈夫だ!」


「すごいぞ。こんなに早く修繕できるなんて」


「奇跡だな、本当に。ありがたい、本当に」


「父ちゃん、やったね!」

「おおっ、お前も頑張ったな!」

「うん。うえ~ん、良かったぁ」


「良くやったよ、あんた達。今日はご馳走にしようね」

「ありがたい。けど、平気なのか、食料は?」


「ああ。ハルが鹿を狩って来たんだ。立派な牡鹿だから、焼いて汁にして、余った分は干して保存もしとくさ」

「ハルさん、助かります。ありがとう、みんなもありがとう。うお~ぉ」


「気にしなくて良い。狩りは得意なんだ」

「良い奴だな、お前。ここに住んで欲しいくらいだぜ」

「済まんな。俺も仕事があるから」

「そうか……。ずびっ、頼りになりそうでついな。すまん」


「ぐすっ、男が泣くんじゃないよ。もう川は直ったんんだ。人なんかすぐ戻るよ! 元気出しな」

「ははっ。ルルファには敵わんな」

「頑張るぞ、みんな!」

「「「「おおっ!!!」」」」




 緊急な危機は去り、安堵が周囲を包んだ。

 壊れた家の修繕に、大木や枝や土砂が流れ込んだ畑の整備、減った村人の畑分けなど、やることは山積みだった。


 けれど、みんなの顔は明るかった。



 次は川の中腹で一時的に水を貯め、河川へ流れ込む水量を減らす、遊水池を作る作業だ。


 これは先に穴を掘り、池を作る作業が必要だ。川が補強されたことで、同じ場所から越水はないだろう。

 急ぐことはないけれど、遊水池があれば格段に安全性は上がる。そして今、みんなの気持ちもそちらに向いていた。


 

 スコップも100本ある。

 使いきれないくらいだ。



 ゴルドンも遊水池を掘る作業に参加し、レアナは芋の皮むきを手伝う。今は食事がみんなの励みになっているから、力になりたい。


「奥様は休んでいて下さい」

「大丈夫よ。私はずっと自分で食事を作ってきたから、意外と上手なのよ」


「そんなこと……。いや、貴族だっていろんなことがあるものね。良いわ、じゃあどんどん頼みます。よろしくお願いします」


「ええ。任せておいて」



 40代くらいのきびきびして痩せた美人は、ルルファと言うらしい。朝もみんなに発破をかけていた、気持ちの良い女性だ。彼女が笑うのにつられ、レアナもいつの間にか微笑んでいた。




 ハルはと言えば、山で木を切って集会所に運んでいる。ロープで括り、何本も引っ張って来ていた。


「どうするの、それ」


「簡単な家を作るんだ。荷馬車じゃ休めないだろ?」


「ええ。でも大丈夫なの。徹夜で川を見張っていたのでしょ?」


「ああ、平気さ。相手が人間じゃないから、少し気楽だったくらいだ」


「まあ、それは……。苦労をかけるわね、いつも。でも疲れたら休んでね」


「ああ、分かってるって。それより、ほっかむりして皮むきか? いつもの書類仕事より楽しそうじゃん」


「ええ、楽しいわ。お喋りしながらの作業は良いわね」

「まあ、怪我しないようにやんなよ」



 そう言って、作業に戻るハル。


 土もずいぶん深く掘って杭を打ちつけ土台を作り、長く使えるものになりそうな気がする。

(村の人が使えるように、ちゃんとしたものを建てているのかしら? 真面目な子だから)


 微笑んでハルを見ていると、ルルファが「彼氏かい?」と聞いてきた。レアナは慌てて否定する。


「まさか。あの子とは10(歳)も違いますわ」


「別に、20と30なら変わらないわよ。急に結婚したのも政略だろうし。ダグラス様は当てにならないから、どうせ伯爵に頼まれたんだろ?」


「それは…………。まあ、いろいろですわ。ふふっ」



 鋭いなと思う。

 けれどみんながそう思っているなら、ダグラス様は本当に困った人なのかもしれない。


(私も条件を付けたし。もしかしたら、私の方が酷いかもしれないわね。それに彼女には、ハルが恋人に見えるのかしら? あんなに若い子供が)



 レアナは怒ることはなく、ただただ意外な言葉がおかしかった。









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