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無料で報復?  作者: ねこまんまときみどりのことり


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4/11

工事の準備

 レアナの計画は二つ。


 川から越水しないように、麻袋に砂を詰めた土嚢を当てて堤防の補強をする。

 川の中腹で一時的に水を貯め、河川へ流れ込む水量を減らす、遊水池を作る。



「ねえ、ハル。私、丁度良く麻袋を持っているのだけど。誰かこの中に砂を入れてくれないかしら?」



 りんごを入れる木の箱を逆さにして座り、毛布にくるまるハルとレアナ。

 ここには今、二人しかいないのだ。



「誰かって。俺しかいないのに、それ聞いちゃうの?」


「あらっ、本当ね。お願い出来るかしら?」


「はあぁ~。まあ、やりますけど。でもレアナ様は無理しちゃ駄目ですからね。良いですね!」



 呆れ顔のハルに、曖昧に頷くレアナ。きっと言うことなんか聞かないだろう。



 ザクッ、ザクと、麻袋に土を詰めて紐で入り口を括る。


 それを見たレアナは「さすがはハルね。手際が良いわ」と、褒めてから毛布を木箱に置いて立ち上がった。そして土嚢に手を触れる。


「倍になれ土嚢。バイバイバイに、増えなさい!」


 命令のような懇願のような声が響くと、土嚢は3つ増え、合計4つとなったのだ。



 そんな感じでかけ声を続けるレアナのまわりには、土嚢が1000個並んでいた。




「はぁ、はぁ。まずはこんなものかしら? 後はスコップと……。何がいるのかしら?」


「ああ、もう良い。休みなよ、レアナ様。これだけ素材があれば十分だ」



 疲労を隠せないレアナに、水筒のスープを差し出すハル。


「ほら、少し飲んで。全く無理ばかりするんだから」


 その言葉には諦めも入っていた。




「無理はしていないわ。本当よ。この体はあの時から、痛みや苦しみを感じなくなったのだもの。だから少し疲れただけよ」


 微笑んでいるレアナに嘘はない。きっとそうなのだろうけれど、あまりにも残酷な事実にハルは一瞬だけ目を強く瞑った。


 レアナはそれに気付かなかった。


「ヨイショ」の声で立ち上がり、近くに置いてあったスコップに触れ、また数を増やしていく。


 止めても無駄だと知るハルは、唇を強く噛んで見守るしかない。





 

 その後も彼女はふらつきながら、近くまで寄せて置いた馬車の荷台にあがり、野菜や小麦の袋に手を乗せた。

 そして先程と同じく「バイバイバイに増えなさい」の声に応じるように、その袋は中身ごと増え続けたのだ。


 馬車の荷台いっぱいになった食料は、村人達の飢えを凌ぐことだろう。

 それを確認したレアナは、満足そうに頷いて地に膝を突いた。


「ごめんなさい、ハル。後はよろしく…………」



 その声が終わる前に駆けつけ、既に意識のない彼女を抱き支えたハルは呟く。



「何でそこまで頑張るんだよ。もう、良いのに…………」



 荷台の運転席に彼女を横に寝かせ、彼は深く息を吐いた後に涙を落とした。


「姉ちゃんのことは、レアナ様のせいじゃないんだ。もう無理しないで欲しいのに…………」



 星空が煌めく空の下で、レアナの浅い寝息とハルの押し殺す嗚咽だけが聞こえていた。










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