レアナの帰還
「ありがとうございました、奥様。後は私どもで頑張ってみます。本当に感謝しか御座いません」
「「「「「「ありがとうございました!!!」」」」」」
今後の予定が立ったことで、レアナはハルと共に王宮に戻ることになった。
「みんなが頑張ったから、村の復興が早かったのよ。私の方こそ感謝してるわ。何かあればすぐ連絡して頂戴ね」
「はい。ありがとうございます」
王都へ戻る際、ゴルドンと村人達が見送りに集まった。みんな最初に会った時よりも顔色が良くなり、心なしかキラキラして見える。
ゴルドンは泣きそうな顔で、何度も頭を下げて感謝していた。
ギャマイラス伯爵夫妻は領地へあまり顔を出さないようで、貴族なのにここまでしてくれたと村人達は最後まで感激していた。
普段から代官任せの様だ。
村には馬車がない為(持っていた者が村を去った為)、今後暫くは定期的に商人へ訪問して貰う予定だ。
ただ馬は何頭もおり、急ぎの連絡は問題なく行えると思われた。少なくとも陸の孤島にはなっていない。
けれど人口の流出が多すぎた。
今後暫くはアン王女との相談により、没落した貴族領の避難民を一時的にギャマイラス伯爵領で預かることにしている。
家屋はそれを見越して多めに立てており、住む場所で困ることはない。
アン王女と彼女の従者ライアンが選別した人員なので、村人達との衝突は少ないだろう。
もし避難民がその村を気に入れば、元の貴族家の整理が整う前に、ギャマイラス伯爵領へ入植する許可も出ている。
元の貴族家では人口が増えすぎたことで、村人に割り当てられる土地が不足し、他領への人口流出が元々あったので良い転機になるかもしれない。
あくまでも土地選択の優先権は、ギャマイラス伯爵領の村人達にある。それは避難民達も分かっていた。
破損した堤防の補強も済んでおり、暖かで村の者も優しい土地だから、きっと人口は増えることだろう。
◇◇◇
村人達に見送られながら、馬車に乗り込むレアナ。互いに手を振り、笑顔のままで馬車は出発した。
カタン、カタンッと馬車は動き出し、村から離れると、彼女は馭者をしているハルの隣に移動してお喋りをしていた。
「さて、王宮に戻りましょうか。少し疲れたわね、ハル」
「無茶するからですよ、自業自得。でもみんなが幸せそうで良かったですね」
「そうね。みんな優しい人ばかりだから、助けられて良かったわ」
「すごい人気ですよ、レアナ様は。婦人達が協力して、美味しそうなお弁当を2人分作ってくれましたから。後で食べましょうね」
「ええ、楽しみね」
レアナはゆっくりと息を吐いてから、新鮮な空気を吸い込む。そして微笑みを浮かべハルに囁くのだ。
「これで私達の目的にも、また少し近付いたわよね。ハルも待ち遠しいでしょ?」
「別に、俺は…………。ただもう、6年も経つんだなと思うだけで」
「でも早く、お姉さんに会いたいでしょ? 私もジャスミンにお礼を言いたいもの。その為に頑張って来たのだから」
「そうだな。でもそうすれば、レアナ様は……」
「良いのよ、気にしないで。ああ、早く会いたいわね」
悲しげな顔を刹那的に浮かべ、悟られないように繕うハルと、屈託なくまた笑うレアナ。
この先を考える時、ハルはいつも胸がしくしくと痛む。
(どうしてそんなに笑えるの? もう生きていたくないの? ねえ、レアナ様!)
6年一緒にいても、未だに心の声を聞かせる勇気が持てない。だって答えを聞きたくないから。
レアナが不思議な力が使えるのには、悲しい訳があった。
守られるべき両親に殺されかけた過去と、その後に続く奇跡の出会いが…………。
レアナを救った代わりに犠牲となった少女ジャスミンと、その弟ハルのこと。
2人は過去を振り返る。




