53話 旅立ち
王さまから旅券をもらった。事情が事情だし、国境の関所までは王さまが馬車を出してくれる。
「マウリオは妃を描いてくれた恩人だ。余も無事であってくれることを願う。もしも、隣国で困りごとがあれば、親善大使のタルヴァン伯爵をたずねるがよい」
そう言われて、金一封も受けとった。
本日は旅立ち。
フィーリオさんは一足さきに自分の馬車で発った。ジルブラン家の侍従は辞めたらしい。読めない人だ。でも、ほんとはすごく身分が高いんじゃ?
わたしの旅にはレイ兄さまとマクシミリアンさんがついてくる。見送りにはウィリアムさん、バリヴィエさんやセルディアも来てくれて、にぎやかだった。
「サリエラ。僕の女神。マジックオイルが切れたら、隣国まででも買いに行くよ。だから、さみしくないよ? 待っててくれたまえ」
「別にさみしくないですけど?」
「……」
「お嬢。工房はあんたの家だ。いつでも帰ってきてくれ」
「そうだよ。てっきり、お嬢さんが継いでくれると思ってたのに」
「女はギルドの会員になれないから」
「でもさ。なんか知らないけど、王さまに恩を売ったんでしょ? 特別におゆるしを願えたんじゃないの?」
「まあ、そのうちにね」
ガルシニエさんがお年寄りの一人暮らしになっちゃうのが心配だけど、セルディアがちょくちょく手伝いに行くと言ってくれた。
「じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい。気をつけて」
「お嬢。旅のあいだは変なもん食うんじゃねぇぞ」
「お嬢さん、食いしん坊だからなぁ」
もう! レイの前でなんてこと言ってくれるのよ。恥ずかしいったら。
レリドゥはクスクス笑ってる。
また思いだした。そういえば、昔もこんなふうに、よく笑われたっけ。子どものときはバカにされた気がしてたけど、でも、今は嫌いじゃない。この笑い声。
馬車が走りだす。
祖国としばしの別れだ。
窓から見える街なみが、じょじょに遠くなっていく。
了
なんとか〆切までに第一部完結まで書けました。今回ほど危なかったの初めてです(^v^;)
この話はたまたま、カクヨムさんのお知らせで恋愛小説大賞の『異世界でお仕事をする女性の恋愛』っていう部門が目にとまって、「僕ならどんな話にするかなぁ」から始まったやつです。ふとそう思ったあと、するすると基本の設定が浮かんでしまって、「これなら書けるんじゃない?」という軽い気持ちで書きだしてしまいました。まあ、書けたんですけどね。
異世界で働くヒロインの恋——で、まず頭に浮かんだのが、『ヴァイオレッド・エバーガーデン』
恋愛小説大賞的にはダメなのかもだけど、あれって、恋愛もからんではいるけど、そこまで濃厚じゃない。むしろ、お仕事のほうがメインっていうか。恋愛は最後のほうだけ。あっ、原作読んでません。テレビで映画見ただけ。
連作短編集で一話ずつ読み切り形式。ちょっと泣ける話とか、心のあったまるハートフルな話にすれば、書きやすい。
次に考えたのは、それだけでは恋愛がからんでこないので、大筋部分に該当する何かが必要。
で、ふっと思いだしたんですよ。
ずーっと昔にこんなアニメがありました。『花の子ルンルン』っていう。
それが、昔すぎて細かい設定は忘れたんですが、たぶん、ルンルンは花の精……または、ただの花好きの女の子。憧れの王子様がいるんですが、それがたぶん花の精霊の王子様……かなんか。こっちはたぶん、ほんとに身分高い。たぶんの三連発。
ルンルンはその王子様を追って世界中を旅しながら、一話ずつ花にまつわる事件に出会って、解決していく。最後に花言葉とか言うんですよね。王子様は毎回、ひと足さきに旅立ってしまったあと。
王子様はたしか、幻の花を探してた。世界で一番美しいと言われる花。もしかしたら、ルンルンもその花を探して旅してたかも?
でも、王子様が好きだったんで、いつも会えそうで会えないのが、子ども心にじれったくw
最終回でやっと出会って、二人は結ばれまましたとさ。めでたし。めでたし。
よし。恋愛パートはこれで。
最後に思いついたのは、『薬屋のひとりごと』
これは最近の流行りですからね。参考にしようかと。と言ってもアニメの第一期しか見てないんですが。
あれも、そこまで濃厚な恋愛部分はないですよね。一話完結のミステリー。そうか。ミステリーっぽい話もあっていいかな。ヒューマンドラマだけじゃ枚数が規定に届かないかも。
そんな感じでシャッフルしたのが今回のこのお話です。
あ、そうそう。頭のどこかに乙女ゲームがずっとあって、まわりのキャラクターと親密度を深めれば、どのキャラも堕とせる、みたいな。
なので、出てくる男は悪役以外、基本イケメン、と。いろんなタイプがいいなぁ。年下可愛い系。頼れるマッチョ系。残念イケメン系。なんなら、ダンディなロマンスグレーもアリか。もちろん、本命くんがいて。女性モテモテ系。王さまとか。とどめは破滅型超絶美青年だー!
てな感じ。
書いてて、自分的に好きなのはフィーリオでした。すいません。はい。ワレスさんタイプですね。牙と毒をぬいたワレスさん。けっきょく、このタイプが好きかぁ。
最後のほうでようやく、自分らしい話になってきたんですが、これでいくと、第二部はお店が一回も出てこない可能性が。お仕事の話じゃないじゃん! 冒険じゃん!
この話は短くまとめれば、たぶん3冊くらいに。長くしようと思えば、どこまででも。
続きもできれば近いうちに書きたいです。
ではでは、楽しんでいただけたでしょうか?
イベントの関係上、いったん完結表示にしますが、続きを書くとしたら、この話のあとに更新していくと思います。
2025/08/30




