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魔法絵師のミーラークルム  作者: 涼森巳王(東堂薫)
九章 大秘密通路

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48話 暗闇の邂逅



 兄さまのようすが変。わけを聞きたいけど、そんな空気じゃない。それに声を出すと、さっきの男たちに気づかれちゃうかもしれないし。


 あんまり近づけないから、遠くから追ったけど、カンテラの明かりが目印になって、見失う恐れはなかった。どのくらい男たちを追いかけただろう。たしかに途中、足元の道が細くなり、絶壁になってる場所などあって、わたしの足ではかなり大変だった。でも、ここで兄さまとはぐれたら、二度と会えない気がする。そっちのほうが怖い。必死についていく。


 しばらくして、前方の光が見えなくなった。一つ、また一つと消えていく。明かりを消したわけじゃない。まがって枝道に入ったのだ。そのさきのほうがぼんやり明るい。


 兄さまとわたしは目を見かわしあって、うなずいた。きっと、あそこに男たちの保管庫があるんだ。道は平坦になっていて歩きやすい。急いで追っていく。


 枝道の手前まで来て、兄さまは立ちどまった。わたしもうしろから、のぞいてみる。

 よく見るとマル印の部屋だ。細長い一室みたいに入口以外、岩壁でかこわれている。湿気が少なく、コウモリもいない。少しさきで行きどまりらしく、予想以上に男たちがすぐそばにいて驚いた。悲鳴をあわてて飲みこむ。


 男たちは麻袋を次々、置いてる。あれ? 終わったら、またこっちに来るんじゃ? この場所って逃げ場がない。


 兄さま。早く逃げよう。殺されちゃうよぉー。


 グイグイと袖をひっぱると、兄さまはためらった。逃げだしたいけど、でも、心残りがあるって感じ。何が兄さまをそんなに迷わせてるの?


 グズグズしてたせいで、フードの男がこっちをふりかえった。わたしが頭ひっこめるのが遅かったのかも?


「誰だ!」


 気づかれた。どうしよう。

 逃げようとするわたしと反対に、兄さまは男たちのあいだへとびこんでく。


 やめて! 何するのっ? 危ないよ!


 ふいをつかれたんだろう。兄さまの手が素早く伸び、リーダーのフードをはずす。地底の暗闇だけど、カンテラが四つにロウソク一つ。フードの下のおもてを明々と照らした。


 その瞬間のわたしの驚愕は生まれてから一度も経験したことのないものだった。

 まさか、こんな場所で、こんなふうに見るなんて。

 そしてやっぱり、たったひとめ暗がりのわずかの光のもとで見ただけでも、それが誰なのかわかった。


 ああ、そうだよね。ほんとに好きだったんだもんね。家族も同然で、憧れて、ずっと帰りを待ち続けてた人……。


「ヴィヴィ兄さま……!」


 兄さまのふりをしてた兄さまやファーリオさんもすこぶる美青年だ。でも、この人の繊細な美貌はまた一味違う。悪魔とか天使とか、精霊とか、なんだか人間離れして見えるほど。女性の服を着てたら絶世の美女そのものだろう。男性服だと永遠の少年みたいな、どこか儚い美しさ。泣きぼくろもしっかりある。瞳は澄んだブルーだ。アンナの宝石の瞳に匹敵するくらい透明。


「ヴィヴィ兄さま。生きてたのね。兄さま——」


 でも、兄さまはわたしを見たとたん逃げだした。

 もう一人の兄さま(えーい。わかりにくいから、フィーリオさんの弟ってことで、仮にフィーで)が追いすがると、反転してすりぬける。わたしをさけて反対へ逃げてく。来た道とは逆方向だ。もちろん、わたしにはそれがどの方角かはわかってない。北とも、南とも、なんとも。


「待て! ヴィヴィ!」


 男たちは雇われただけなのか、あぜんとしてる。そのすきに、フィーはヴィヴィ兄さまを追う。わたしもついていった。


 いったい、なんでヴィヴィ兄さまが悪者に加担してるの? 父さまの行方を探してたんじゃなかったの? わたしを見る目もどこか冷たかった。


 ああ、こんなの悪い夢だ。きっと、悪夢を見てるだけ。目覚めたら、『白い花の奇跡』のベッドのなかだよ。

 そうであってほしい。

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