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魔法絵師のミーラークルム  作者: 涼森巳王(東堂薫)
九章 大秘密通路

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44話 シャーリーンのメッセージ



 兄さまじゃないのに、どうして兄さまのふりをしてるの?


 ガルシニエさんの知りあいだっていうし、何より、フィー兄さまと子どものころによく会ってたのは事実だ。それはわたしの記憶にもある。だから、双子のこの人だって、悪い人じゃない。父さまのこと、本気で心配して探そうとしてくれてるのはまちがいない。


 わたしをだまそうとしてるわけじゃないんだ。きっと、何か言うに言われぬ事情がある。信じよう。いつか、ほんとのことを話してくれるまで。


「……兄さま。約束してね。絶対、ムチャしないでね。もう二度と、わたしをひとりぼっちにしないで」

「約束する」


 それで機嫌をなおして、事件のお話だ。父さまを一日でも早く助けないと。


「兄さまとガルシニエさんは、なんで父さまが生きてると思うの? つれだされたあと、殺されてはないよね?」


 兄さま(ほんとの名前わかんないし)とガルシニエさんは目を見かわした。


「最初は私たちも敵の目的がわからなかった。でも、今なら推察できる。大量のマジックポピーを持っていて、それをオイルにする方法があれば、あと必要なのはなんだ?」


 ドキリとした。それで何もかも腑に落ちる。


「魔法画家……?」

「そう。それもマウリオ叔父さんなら、魔法画家のなかでも一流中の一流だ。ひそかに魔法絵を描かされているに違いない」

「なんのために?」

「それはまだわからない。でも、よくない目的のためだろうという推測はつく」


 そうだよね。おおっぴらにはできない目的があって、父さまの力を悪用してるんだ。魔法絵でできる悪いことってなんだろう? よくわかんないけど、とにかく、早く助けないと。


「父さまがどこに捕まってるかわかる?」

「それはまだ。でも、アダマンテ付近が怪しい」

「アダマンテ……」


 この前、二階でガルシニエさんと兄さまが話してた。外国の都市だなっていうのはわかったんだけど。


「どこの国だっけ?」

「隣国だよ」


 マジックポピーを横流しされてるのも隣国。そうだ。アダマンテはそこの王都だ。これは怪しい。


「わたし、行ってみる!」


 あわてて兄さまがわたしの手をつかむ。


「君は夢中になると暴走するな。昔からだ」

「だって——」

「アダマンテと言っても広い。そのどこにいるのか見当をつけてからじゃないと」

「そうだけど……」

「ベルディナルの悪事の証拠、または現場を押さえて、マウリオ叔父さんの居所を吐かせるつもりだ。そのためにも、ジルブラン家の秘密の出入り口を知りたい」


 あ、そうだった。


「わたし、もしかしてだけど、心当たりがあるの」


 前に魔法絵の奇跡が起きたときに見せたシャーリーンの行動。あれが本体のいなくなったときの再現だとしたら。子猫だけが入りこめるすきまがあって、秘密の通路に迷いこんじゃったんじゃないだろうか?


 その疑問を兄さまになげかけてみた。


「それは考えられなくはないね」

「ララベラさまのお部屋から下をのぞいたら、カリカリしてた。だから、姫さまの部屋が見えるお庭まで行けば、何か見つかるかも」

「行ってみよう」


 というわけで、再度、ジルブラン伯爵家だ。今回はコッソリと。兄さまは伯爵家の裏木戸の鍵を持ってた。たぶん、フィーリオさんが用意して渡したんだろう。


「このへんが姫さまのお部屋の下かな?」

「……まだ反対側だ。庭木づたいに隠れていかないと」

「えっ? 違うの?」

「そういえば、サリーは方向音痴だったね」


 うっ。そういうのは忘れてほしいんだけど。わたしって、子どものころから、こうなんだ?


 でも、今回は兄さまがいるから迷わなくてすんだ。わたし一人なら、絶対たどりつけなかった。


「さあ、ここからなら姫君の部屋が見える。シャーリーンの幻が走っていったのはどこ?」

「壁にむかってカリカリしてたから。えっと……窓からのぞいたとき右側だったから、ここからだと……」

「左手のほうか」


 姫さまの部屋の窓をのぞくけど、人影は見えない。ほかの部屋の窓にも人間がいるようすはない。貴族のお屋敷って、ほんとムダに広いなぁ。侵入者には助かるんだけど。


「このへんだ。茂みのすぐそばだった」


 豪勢な建物のほぼ端っこだ。半地下になった小窓がある。

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