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その14 群青劇 卯月桃

私は白だ。白でしかない。

私は嘘をつき続ける。


人が喜んでいるのが好きだった。

どんなことをすれば喜ばせられるのかもなんとなくわかってた。

小さいころ、お母さんによく褒められた。

「いい子だね。」「手のかからない子で助かるよ。」って。

じゃあ、迷惑をかけたら悲しませちゃうんだ。

そう思って笑った。笑い続けた。


中学生になっても私は魔法が使えるままだった。

その時救った子の笑顔は今でも覚えている。

「ありがとう!」

たったその一言が何よりも嬉しくて、私の生きる道はこれなんだ!

と昔は思っていた。

……今はもう聞きたくない。


高校生のころ、ある男の子に告白された。

それを断ると、友だちにぶたれた。

私の友だちがその男の子のことを好きだったらしい。

友だちは「私に奪われた!」と泣いて回っていた。


大学生になって教授に魔法を褒められた。

気づくとまた私が悪者だという噂が広まっていた。

私が教授に色目を使ったことになっていた。


「卯月さんって白々しいよね」と言われ、笑顔でごまかした。

怒り方なんて、教えてもらわなかった。


私は白だ。白でしかない。

私は嘘をつき続ける。

それでしか生きられない。生きちゃいけない。

他人に迷惑をかけちゃいけない。みんなを助けなくちゃいけない。

いつしか「私」なんてなくなっていた。


実家で一人泣いていると、いつも猫のみかんが励ましにきてくれた。

この子にだけはいろんなことを話してたと思う。

だからみかんが死んだ時、しばらく大学に行けなかった。

きっと言ったって理解はされないだろうから、病気だったと嘘をついた。

そうすると私は「かわいそうな子」になっていた。


猫が好き、という動機が楽だったからペットショップの店員になった。

事実、動物とのふれあいは楽しかった。

いつもみたいに、同僚は魔法を褒めてくる。

……もう、飽きたよ。その言葉。

それでも私は笑顔を作った。


グールと呼ばれていた人間を切った時のことが忘れられない。

包丁で思いっきり力をこめて、豚肉を切った時のような感覚。

ケーキが地面に落ちたような音。

……お肉もケーキも好きだったのにな。


そうして魔法が使えなくなった。

みんなが心配してきた。

大丈夫。そういうとみんなどこかへ去っていった。

私は大丈夫だ。

心配の言葉のはずなのに胸が痛む。


その言葉を自室で吐き続けた。

祥也くんが何かを叫んでいたのを覚えている。

困っているみたいだ。立ち上がって、笑顔を作ろうとしていた。


気づくと知らないベッドの上にいた。

咲希ちゃんが心配そうに手を取ってくれた。

凛さんが悔しそうに自分の手を握りしめていた。

祥也くんが恭しく何かを言った。


誰かが壊れたみたいだ。

ああ、私、か。

大丈夫、だっていつもの嘘だった。


……私はなんのために生きてたのかな。

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