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第22話 再会?

 俺が言うと、空気に緊張が走った。

 天草は眉をひそめ、凶撫は顎に手を添え考える。他の武家達は『なに言ってんだコイツ……?』って反応だ。


 仕方ない。補足しよう。


「俺の抜刀術なら最悪、灼華を()()()


 ここまで言えば天草と凶撫には通じるはず。


「そうか! 君の剣は『斬れない物が無い』んだったね。君が灼華まで辿り着ければ最低でも灼華を破壊し、凍獄を守れる」

「成程。脱出できなくとも目的を果たせるわけだ」


 言ってから天草は失笑する。


「すまない。今の発言は無遠慮だった」

「いえ、大丈夫です。自分が言いたいのはそういうことですから」


 武家六等という代わりの利く存在且つ、灼華を破壊できる人材。

 俺以外の適任者は居ないだろう。


「うん。とりあえず吉数君は確定で良いんじゃないかな?」

「ああ」


 よし、欲しいポジションにつけた。

 ()()()()()()()()


「もちろん、灼華を持って脱出できるようならそうします。あくまで破壊は最終手段、ということで」

「それなら僕も吉数君について行こうかな。僕も居れば作戦はほぼ確で成功するよ」


 天草が首を横に振る。


「……ダメだ。認めたくはないが、お前の存在は不知火にとって大きい。妖刀と同価値、あるいはそれ以上の価値がある」

「大丈夫。どんな状況だろうと意識だけは帰還させる術を持っている」


 その術の詳細をぜひ聞きたいが、話の進行を止めてまで聞くことではない。


「――はぁ。いくら止めた所で、お前は聞かないのだろうな」

「あっはっは、良くわかっているじゃないか」

「残りの面子はどうする?」

「必要ないです」

「だね。邪魔にしかならない」


 この作戦は俊敏に動ける人間しか参加できない。ヤスや雪凪は足が遅いから作戦の速度についてこれないし、他の武家の人間も同じだろう。俺と凶撫についてこられるのは妖刀衆の人間くらいだ。


「わかった。お前達二人に任せる」

「明日の朝出発したとして、僕と吉数君の二人なら三日で舞魏の近くまではいけるだろう」

「私達はいつ仕掛ければいい?」

「三日以内に氷塔に炎が走ったら、三日後の二十四時に頼む。それ以降なら炎が走った日の二十四時だ」

「夜中なのは隠密行動がしやすいからか?」

「その通り」

「承知した。作戦は決まりだな」


 天草は俺に視線を合わせ、


「そういえば空蔵、お前の仲間に治癒術に()けた人間がいるようだな。周布の兵に聞いたぞ」


 雪凪のことだな。


「ええ、まぁ」

「我が軍の魔導衆に加えてもいいか? 治癒の使い手は貴重だ」

「……雪凪が望むなら止めません。ただ、決して無理はさせないでください」

「いいだろう。魔導衆にはそう伝えておく」


 これにて解散。

 俺と凶撫は周布城から出て、宿屋に向かう。


「しかし君という人間は狂ってるね」

「どこがだ?」

「……君は常に、自分が一番戦えるポジションにつこうとしている。今回の作戦もそうだし、王馬と対峙した時もそうだ」

「……」


 やはりコイツには俺の本質を見破られている。


「率直に聞かせてくれよ。君の快感はどこにある?」


 面倒な質問だな。適当に躱してもいいが、舞魏への道中にしつこく聞かれても面倒だ。


「この抜刀術で敵を斬った時、それもより強者を斬った時に快感を感じる」

「やっぱりねぇ。君のような人間をなんと言うか知っているかい?」

「さぁな」

「戦闘狂、だよ」


 否定はしない。

 前世で静かに生きすぎた反動かな。戦いに身を投じるのを楽しんでいる自分がいる。


「お、アレは」


 凶撫は遠くを見つめる。

 無数の足音が近づいてくる。不知火兵が列を成してこっちへ来る。

 先頭は馬に乗った……小柄な女子。傘を差している。


「妖刀衆、神楽坂(かぐらざか)神楽弥(かぐや)


 凶撫がその名を口にする。

 天草凛音、叢一刀斎、雲禅氷雨。この三人に続く妖刀衆最後の一人か。


「ごきげんよう。凶撫さん」


 小柄な見た目ながら、その話し方は丁寧で、纏っている空気も大人びている。

 桜色のミディアムの髪に灰色で大きな瞳。背は140cmほどで、体つきも細い。一見すると可愛らしい容姿だ。だが目に光が無い。俺は思わず一歩引いた。蛇に纏わりつかれているような、嫌な感覚があった。


「これはこれは神楽弥殿、お久しゅうございます」

「あなたのご活躍は聞いていますよ。わたくしが何度誘っても首を縦に振らなかったのに、凛音さんには尻尾を振るのですね」

「別にあの子に尻尾を振っているつもりはございませんよ。僕が尻尾を振っているのはこの少年です」


 神楽坂の視線が俺にスライドする。


「空蔵吉数様……ですよね?」

「……はい。そうです」

「やはりそうでしたか! これはこれは……本当に()()()()()ですね。お互い七つの時以来ですか」


 神楽坂は両手を合わせ、微笑む。


 ――やばい。


 もしやコイツ、空蔵吉数の知り合いなのか?


「十八になったらあなたを迎えに行くつもりでしたが、凶撫さんと並び立っている所を見るに、わたくしの手を借りずとも自力で成り上がったようですね。流石です!」


 て、適当に話を合わせるか?


「どうです? あなたの野望は叶いそうですか?」


 野望? 野望ってなんだ? 成り上がることか?

 なんとか誤魔化そうか。


 ……やめよう。自分に正直に生きよう。下手な嘘はどうせバレる。鈍感なタイプじゃ無さそうだしな。


「すみません。あなたのこと、一切記憶にございません」

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