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第四話 弱いものいじめは見過ごせない







「フェイ。最近は妙な気を感じる。今日は特にだ。寄り道せずに気を付けて帰るんだよ」






魔道具店の婆さんにそう言われたが、おそらく死霊術師のアンデット達の事だろう。もしかしたら村の周囲にまで近付いてきているのかもしれない






今日は真っ直ぐ家に帰り、剣を持って見回りに出て見ようか。アンデットなんて一度も見たことが無いし、是非、一目見ておきたいと思い、いつもよりも周囲を見渡しながら帰り道を歩いていると、なにやら悲鳴と嫌な笑い声が聞こえてくる







「…お前はいつもいつも…」






「おい、ここじゃ人目につく。場所を変えるぞ」






声の方向へ忍び寄り、木陰から顔を出し覗く。ちらりと確認できたのは、騎士団の団員が同僚相手に暴力行為を及んでいる光景であった。此方の視線に気が付かれてしまったのか、奥の方に隠れられてしまったが、見間違いでなければ、殴られていたのは俺に情報を流してくれた騎士だ







まさか俺に情報を漏らした事がバレたのか? 原因が俺にあるのだとすれば、これは俺が解決しなくてはならない事案だ。なにより、言わなくても構わない情報を、独り言という体でわざわざ教えてくれたあの騎士が強いたげられていると言うのに、見過ごすなんて出来ない







なにか…武器になりそうな物は…辺りを見渡してみるが、そんな物あるわけがない。仕方ないので小石をいくつかと砂を左手に握り締め、騎士達の後を追う






「これはこれは騎士サマ方。こんな所で、なにをなさっているので? 」





騎士? はは。俺は勇者の末裔だぞ。そりゃ強敵に間違いはないだろうが、勝てない相手じゃないだろう。声を掛けて、意識を此方に向ける。踞っている騎士は鎧と武器を奪われてしまっているらしく、頭を抱えて堪え忍んでいるようだ






「なんだァ、お前? 田舎の平民が何の用だ? 」






「まさかとは思うが…俺達に指図しようってんじゃあ、ねぇえだろうな? 」






俺が退けるべき標的は二人。武装は一瞬見た様子、身を守る鎧と、腰に剣を吊るしているくらいに見えるが、油断は禁物だ。まずはあの倒れている騎士に近付かなければ、この場から逃げることも出来ない






「いえいえ、そんな。しかしながら騎士サマ。死霊術師の脅威が迫っていると言うのに、仲間同士で争うなんて、騎士団長が知ったらどう思われるか、少しはその足りない頭で考えた方が宜しいのでは? 」






「平民風情が…」





「…後悔させてやるよ」






必殺、虎の威をかりる羊作戦。なんて冗談を吐ける僅かばかりの余裕はたった今、使い潰された。流石に殺しは不味いと理解しているらしく、剣は抜こうとしていないのでラッキーだ





しかし流石、腐っても王国を護る騎士なだけある。重量のある鎧を身に付けているにも関わらず、身軽な俺以上に素早い動きに、重量の乗った一撃。今は何とか回避できているが、もうしばらく続けば攻撃を食らってしまうことは間違いないだろう






そうなれば後は殴られるだけ。逆転の芽など存在しない。ここまでの実力差が存在する相手と、形だけでも戦えているだけで半ば奇跡のようなものだ。一歩間違えば、致命傷は免れない。まぁ、しかし、大丈夫。なんたって俺は、勇者の末裔なのだから






「ちょこまかと…だがこれで、仕舞いだ! 」






二人の騎士に前後ろから挟まれる形。ギリギリまで二人を引き付けて、温存していた左手の砂を前方の騎士の顔面目掛けてばら撒き、視界を奪い、後方の騎士には小石を数個投擲し、意識を散らして、地面に倒れる騎士の元へと向かう






「大丈夫ですか? どこか痛むところは? 」






「ッ…早く逃げて」






瞬間後方から風を切るような音が聞こえた直後、彼女に腕を引っ張られる形で何とか攻撃を回避する事に成功したが、あの野郎、俺の事を剣の鞘で殴ろうとしてきやがった。チャンスを広げる為に、冷静な判断能力を奪うつもりだったが、どうやら上手く決まりすぎたようだ






「おい、これ以上は不味い。騒ぎすぎだ。じきに団長がやってくるかもしれねぇ」





「チッ、場所を変えるぞ。逃げれるなんて、思うなよ」






向けられた目線からは、粘着質な殺意のようなものが感じて取れた。別に奴らに着いて行く必要は無いと思うのだが、傷だらけの騎士は、彼女の目は、未だ死んでいない。先程までのような、諦めた人間の目ではなかった






なら、俺だけで逃げたってしょうがないし。二人で騎士を倒して、悠々と食堂で祝杯を挙げるとしよう。実力が足りない? おいおい、俺はあの、勇者の末裔なんだぜ。現に未だって騎士の野郎共をちぎっては投げ、ちぎっては投げ…






















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