表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】~人外少年兵が南国でラブコメしながら努力で南海の大怪獣とバトルします~ 護国×少年  作者: 東雲飛鶴
第四章 護りたい人が出来たんだ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/77

【16】吠える狼、打ち伏す神 1

『ゴスッ!』

 鈍い音と共に、激しい痛み。


 少しして、ぬるーっとした感触が頬を這う。

 ぺろりと舐め取ると、案の定、血だ。


 そして僕の足下にごろりと転がるのは、人の拳くらいの大きさの石。

 今は暗くて見えないが、調べればルミノール反応くらい出るだろう。


「ッてえな……」


 石は結構な早さで飛んできた。

 普通の人間なら、多少は頭蓋骨が陥没してたに違いない。

 痛い、で済むのは僕くらいなもんだ。


 伊緒里ちゃんにお休みを言って、基地までの道を歩いていると、誰かが僕に石をいくつも投げて来る。

 かすったり外れたりしながら精度を増し、そして頭にクリーンヒットだ。


 犯人の見当はもう付いている。


「陸くんでしょ。いーかげんにしてくんないかな。

 もうやめようよ。気持ちは分かるけど、お姉ちゃんだって喜ばないよ」


 視界の外にいる陸に呼びかける。

 そこらへんの木の上からでも投げてんのだろう。


「ふざけんな! 寝取ったヤツが何言ったって説得力あるわけないだろうが!」


 そう叫ぶと、また石を投げてきた。今度は肩に当たった。

 拳くらいの大きさがあるから、マジでけっこう痛い。


 彼が怒り心頭なのは分かる。

 だが最初っからコソコソ隠れて嫌がらせをしてくるなんて、卑怯じゃないか。


「イテテ……、ハッキリ言うけどさ、君はフラれたんだ。身内だとか違うとか関係なく、君は伊緒里ちゃんの恋愛対象じゃないんだ。

 君のせいで伊緒里ちゃん、結構怖い思いやイヤな思いしてきたんだぞ。ぶっちゃけ病む一歩手前だったんだ。お姉ちゃんを病気にしてどうすんだよ。小学生じゃあるまいし、いい加減気付こうよ?」


「後からのこのこやってきて、今日は今日で姉ちゃんとヤりやがって、マジブッ殺す。姉貴の膜は俺がブチ抜いて女にしてやる予定だったのに! 超殺す! 今殺す!」


 つまり彼は、僕が彼女を抱いて帰ってきたところや、彼女が不自然な歩き方をする所までしっかり見ていたってことだ。

 僕が一人になるまで待ってるなんて、チキンなやつだ。


「そーいうとこなんだぞ、陸くん。伊緒里ちゃんがどんだけ身の危険を感じて怯えていたか、お前にその気持ちが分かるか? お前、伊緒里ちゃんが好きなんじゃなくて、所有物にしたいだけだろ!」

「ふ、ふざけんな! 俺は伊緒里を愛してんに決まってんだろ! 殺す!」


 また一つ、石が飛んでくる。

 今度は足下に着弾し、どこかに跳ねていった。


「ウソつくな。お前全然伊緒里ちゃんのこと考えてないもんな! 彼女の前で、面と向かって僕のことも非難出来ない卑怯者。あーもーお前に同情すんのバカらしくなってきた。もーやめやめ。お前、ボコボコにしてやるからかかってきな!」


 僕は腰から、最小サイズにした武神器を引き抜いた。

 パチパチと柄のスイッチを入れ、『双剣・危機と羅良』に変化させる。


 やはりチョイスはこれ一択だ。

 相手は手数が多くて機動力の高い人狼、障害物の多い街中では僕が不利だ。

 せめてこのくらいのハンデは認めてもらわないと。


 警戒しながら周囲をチラと見ると、少し先に基地のフェンスが視界に入った。

 中におびき寄せれば周囲にも迷惑がかからないかも。


 そう思ったとき、ふとミントのさわやかな香りが漂ってきた――


「だれが同情してくれなんて言った! 貴様の喉笛噛み千切ってやる!」


 次の瞬間、目の前にずらりと並んだ鋭い牙が現れた。

 ふっと身を引くと、ガチッと顎が閉じる。


「うわッ! ホントに噛みつきやがった」


 僕は咄嗟に二、三歩バックステップで距離を取った。

 背中にイヤな汗が流れる。


 僕の眼前で、オレンジ色の街灯に浮かんだその姿は、人であって人でない。


 精悍な体躯に犬科動物の頭部、そしてふさふさした尻尾。

 人狼化した陸が、鬼の形相、いや猛獣の形相で僕を睨んで立っていた。


「逃げんな! 大人しく噛まれろ! 南方威!」


 見た目は強そうだが、おつむは高校生のまま。

 どうにも緊張感が維持しにくい相手だ。


 ミント臭の犯人もおそらくコイツだ。

 きっとメントスでも食ってたんだろう。

 狼の口では発音しづらいのか、元の声とは違って聞こえる。


「やなこった! 逆恨みで食われる義理はねえ!

 ギャン泣きすっまでボコボコにしてやんぞ!」


 僕は啖呵を切って、双剣を構えた。

 すこしづつ後ろに下がって、陸との距離をさらに取った。


「伊緒里は俺のもんだ! 貴様を殺して取り返す!」

「殺したってムリだってのが、どうしてわかんないんだこの犬頭!!」

「犬頭言うなああああああ!!」


 激高した陸が突進してきた。


 僕もダッシュを始める。


 陸の手が僕に届きそうになった瞬間――、僕はヤツの足下にスライディングした。


「!?」


 陸が僕を見失った直後、僕はすぐさま起き上がり、基地のフェンスめがけて突っ走った。


 あと三歩、二歩、一歩――


「でやあッ!!」


 僕はフェンスの前で思いっきり踏み切って、三メートルもの高さを一気に飛び越えた。


「ガアアアアアアアァァァ――ッ」


 狼の咆哮が闇夜を裂き、僕の背中を掻きむしる。


 一気に基地のフェンスを跳び越えた僕は、砂混じりの路面に足を取られ、着地でバランスを崩した。


「クソッ」


 毒づきながら僕は、伊緒里ちゃんからもらった腕時計をかばって、ゴロゴロと地面を転がった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=593791139&size=88
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ