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【完結】~人外少年兵が南国でラブコメしながら努力で南海の大怪獣とバトルします~ 護国×少年  作者: 東雲飛鶴
第三章 転校生と島の乙女たち、そしてイクサガミという生活

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【8】イクサガミ、訓練生になる 1

 そんなこんなで終わった転校初日。

 色んな意味で疲れた体を引き摺って基地に戻ると、早速今日から武神器の訓練を始めるとか。


 聞いてないよ? ねえ、聞いてないってば!


 なんつー僕の都合はブッチして、僕とみなもは待ち構えていた難波さんに医務室へ強制連行され、健康診断を受けることになった。

 検査の結果、僕はいたって健康、みなもはちょっと貧血なのでサプリメントをもらっていた。(同時に食事療法も行うらしい)


 検査を終えた僕は、用意されていた野戦服に着替えた。

 おろしたての青い迷彩服はゴワゴワしていて、どーもしっくりこない。

 みなもは海軍の制服……のような違うような、セーラー服にショートパンツ、セーラー帽姿に着替えていた。これはこれで可愛らしい。


 武神器っつーのは、イクサガミ専用のすげー武具で、これがないと抑止力になれないんだ。――詳しくは知らないけど。


 それで、戦巫女は何をする係なのか――これも実はよく知らない。なんで一緒にいないといけないのかも。

 だってイクサガミの仕事なんか、全く興味がなかったんだからさ。


 でも、今の僕は他の何を差し置いても、まずは武神器に慣れないと。

 いつまでも張り子の虎をやってるわけにはいかないからね。


 ☆


 僕がみなもを連れて宿舎を出ると、荷物を山積した軍用トラックと難波さんが待ち構えていた。

 午後の日はまだ高く、着替えたばかりの野戦服には早くも汗が滲んできた。

 トラックの荷台を見ると、ドラムカンがたくさん、それと大きな米袋のようなものが幾つも積んであった。この袋、どうやらセメントらしい。一体何に使うんだろう?


 僕らは乗り心地の悪い車に揺られて数分、滑走路を盛大に横切って、基地のはじっこの空き地に設営されたテントの前で降ろされた。


 テントってのは、いわゆる体育祭の本部のようなもので、机とイス、大型扇風機が置かれ、ご丁寧に野外用の流し台や給水車まで用意してあり、テント内では数人の若い海兵さんが、なにやら作業をしていた。


 ここでお茶会でもするのだろうか?


 ぼろぼろのアスファルトと、砂利、ひび割れたコンクリートが剥き出しになった空き地の周囲は、背後に公道とその境に高いフェンス。前方にぽつんとテントがある。


 右手の二、三十mほど先に高さ十mほどの崖があって空き地を塞ぎ、左手数十メートル先は、さっき難波さんがトラックを入れるのに動かした、低いバリケードで仕切られて、そこから向こうは遠く滑走路に続いている。おそらくここは、使い道のない滑走路のはじっこのようだ。


 そして、前方百mくらいまで空き地が広がり、その先はいきなり海だった。


 海に向かってテントから少し離れた場所に、ドラムカンが数個置いてある。

 そしてその横には、あからさまにアヤシイ人物が棒きれを持って、突っ立っていた。



 ――何なんだ? あれは。



 そのあからさまにアヤシイ人物がこちらに気付くと、大股でスタスタ近づいてきた。

 音楽室の壁にかかっているヘンな音楽家みたいな銀色横ロール頭に瓶底眼鏡、そしてなぜか黄色いエプロンを装備したその人は……


「あーこちら、今日から君のコーチをして下さる……」


 微妙な顔で紹介しようとする難波さんの言葉を途中で遮り、その人物がこう高らかに宣言した。


「今日から君を鍛える、勇者の家庭教師アバンだ。アバン先生と呼んでくれたまえ」


 胸を張り、自信満々にそう言った男は、どこかで見覚えのある人物だった。


「なんだ、店長じゃん」


 みなもさん、正解。

 一カメハメハポイント差し上げます。

 次回のお買い物の際にご利用ください。


「店長、だめじゃないっすか、勝手に入ってきたら。ここ基地の中ですよ?」


 ただでさえ暑いのに、MADAO店長の悪ふざけに付き合うつもりはない。

 だいたいアンタ退役したんだろ?

 この引きこもりめ。


「いや、マジでこの人が君のコーチなんだよ」

 と申し訳なさそうに言う難波さん。


 誰なんですか、貴方をそんな立場に追い込んだのは。

 僕が全力で任命責任を追及して上げます。


「店長ではない。ここではアバン先生と呼べ、少年」


 きっぱりとそう言い放ちつつ、両手を腰に当て、えらそうにふんぞり返るカメハメハクラブ・ニライカナイ店々長の神崎氏。


「まだその(てい)で続ける気ですか。茶番もたいがいにして下さいよ」

「アバンだけに? ぷぷっ」おちゃらける店長。

「アンタにだけは言われたくなかったよ! もういいから店に帰ってくれ!」


 僕のイライラは頂点に達しそうだ。

 というか、今日はとかくイライラさせられる日だ。


「店長さん、それ絶対ヅラですよね、ヅラ」

 と、嬉しそうに言うみなも。彼女のツッコミは遠慮がない。


「言っちゃダメ!」

 店長は口元で人差し指を立てて、シーッと言った。


「もーやですよ。ていうかゴメちゃんどこですか」

 しょーがないので多少付き合ってやる。


「これでガマンしろ」

 と言って店長は、エプロンの裏側からピ●チュウのぬいぐるみを取り出して僕に投げて寄越した。まるで四次元ポケットだぜ。


「最早ドラクエですらないよ! せめてマムルにして」

 僕はぬいぐるみをみなもにパスした。

 急に黄色い物体を放られたので、みなもが短く悲鳴を上げた。

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