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現代社会忍法帖

 突然だが私は現代社会に生きる忍者。名を三越(みこし)。いわゆる、くノ一という奴だ。現在はレクセクォーツというIT企業で働いているが、勿論これは仮の姿。私は忍者なのだから、いつどのような事態にでも対処出来ねばならない。


 そう、例えば頭上から植木鉢が落ちてきても、私は華麗に……


「きゃー! よけてー! ブラキオザウルスを落としてしまったわ!」


「……ん?!」


 私は咄嗟に、秘儀「ワームホール発生装置を一瞬で作るなんか凄いワザ」を発動。

 自身を一瞬で別の場所へと移動させる!


「っく、あぶなかった……」


 というかいきなりブラキオザウルス降ってくるとか……無いわ。

 

「貴方、大丈夫だったかしら?」


 その時、ブラキオザウルスを落としてしまったと思われる、小学生なみの体系の先輩社員が。

 この会社でアイドル扱いされる程に可愛い……らしい。私にはよく分からないが。


「……大丈夫でござる。ところで先輩、ブラキオザウルス、一体どこで入手したので? まだ生きてるし……」


「実は……昨日、偶然ネットショッピングで格安のPS4コントローラーを見つけたのよ。今もうプレミアついて結構高いでしょ? 中々の強運だと思わない?」


 5が出て4はもう作られなくなったからな。


「いや、というかブラキオザウルスはどこから……」


「フフっ、面白い子っ」


 そのまま小走りで愉快そうに去っていく先輩。

 どうでもいいけど、この小説の行く末がとても心配になってくるのは私だけだろうか。



 ※ブラキオザウルス、ゴルフ場で飼います




《セクハラ!》




 忍者としてあるべき姿。それは全ての事柄を完璧に熟す事である。こんな一般人でも出来る仕事など、私の手にかかれば朝飯前。私は超エリート社員として名が通っている。入社一年目で社長賞も獲得した。


「三越さーん、悪いんだけどお使い頼まれてくれる? 開発部に」


「了解でござる。この封筒を渡せばいいのでござるね」


「うん。僕の秘蔵……とても女の子には言えない卑猥な写真集さ!」


 次の瞬間、私はその封筒をワームホールに捨てた。


「あぁ! なんてことを! 冗談に決まってるじゃないか!」


「最低の冗談でござるよ。セクハラで訴えたら何も言い訳出来ないレベルでござる」


「ご、ごめんごめん。本当のお使いはこっち」


 言いながら渡されたのは、キャバクラの名刺。

 私はその名刺をワームホールに捨てた。


「あぁ! なんてことを! 冗談にきまってるじゃないか!」


「お前もワームホールに捨ててやろうか?」


「ご、ごめんごめん、本当のお使いはこっち」


 そして渡されたのは、私の朝起きた直後のパジャマ姿……




 ※ワームホールに捨てました




 《飲み会!》



 社員である以上、ある程度の付き合いは必要な事柄だ。社長賞を頂いた優秀な社員の私は、一週間に一度は幹部と一緒に飲み会へと付き合わされる。


「三越君、君はお酒強いな」


 テキーラのボトルをがぶ飲みした私へと、課長はにこやかな笑顔で言ってくる。

 実は飲んでいない。ワームホールに捨てているだけだ。


「お褒めのお言葉、ありがたく頂戴するでござる。課長、ギョーザ頼んでいいでござるか?」


「いいよいいよ、好きにしなさい」


 本日のお会計は課長持ちらしい。私は遠慮がちに、店員へとギョーザを人数分頼み、ついでにカツオのたたき、イカの刺身、マグロのステーキ、夏牡蠣、サンマの塩焼き、ゴリラ、串盛り、タコキムチ、エイヒレの炙り、ほうれんそうと鳥皮の……


「滅茶苦茶食べるね、三越君」


「今日は沢山動いたので……栄養補給でござる」


「フフっ、たくさん食べる女の子って……可愛いよ☆」



 ※ワームホールに捨てました(課長を)




 《お悩み相談!》



 忍びとは、主君に尽くす存在。主人のためならば、どんな汚れ仕事でも熟す。しかし私は今、明確に主君と呼べる存在を持っていない。私は退屈にも似た感情を常に抱いていた。この身を削ってでも尽くしたい、そんな相手が現れれば……


「三越さん……! ぼ、ぼくとお付き合いしてください!」


「……分かったでござる。とりあえず、貴方はもう会社辞めてほしいでござる」


「えっ、なんで……」


「尽くすからでござる。私が養うでござる。もう働く事は許さないでござる。家でドンと構えてくれればいいのでござる。さあ、辞表を書いて提出するでござるよ」


「……ご、ごめんなさい!」


 そのまま逃げてしまう彼。


 フフッ……


 逃がさないでござるよ!



 ※ワームホールで追い掛け回しました




《ブラキオザウルス!》



 なんやかんやあって、ブラキオザウルスの飼育係に任命された私。

 今はワームホールで池の水を浴びさせつつ、体を洗っている。


「きもちいでござるか? 暑いから、しっかり水分補給もするでござるよ」


 背中に乗り、ゴシゴシとデッキブラシで体を磨いてやる。

 しかしその時、突如として目の前に黒い霧が!


「フォッフォッフォ、堕ちたのぉ、我が娘よ」


「……! 父上!」


「修行のためにと現代社会へと放ってみれば……ブラキオザウルス洗いとは! それが忍者のやることか?!」


 まあ、たぶん違う。


「愚かなり、我が娘。かくなるうえは……お前が五歳の時にオネショした動画をネットに流してやろう! そして闘争心をめざめさせ



 ※ワームホールに捨てました(父を)





《ふたたび!》



「ふぉ、ッフォッフォフォ……あまいぞ、わっが娘よ」


「父上……! また来たでござるか。文字数そろそろヤバいからオチを付けてほしいでござる」


「よかろう。ならば父と勝負せい。ワシが勝ったら、里へ帰り父の世話をするのじゃ」


 まあ、それは別にいいけど……


「父よ、寂しいでござるか? なんだったら、もう私帰るでござるよ。お婿さんも見つけたでござるし」


「お、お婿さん?! どこの馬の骨だ、そいつは!」


「ワームホールでストーキングして落としたでござる。今はもう私にベッタリでござるよ」


「ゆ、ゆゆゆゆるせん! 娘よ! 父が勝ったなら……その男を殺す! よいな!」



 ※ワームホールに捨てました(父を)




 昔、酸素ボンベも持たずエベレストに登頂した老人が居た。

 周りの人間に「死にたかったのか?」と尋ねられた老人は、こう答えた。


「それが私の生きる道」


 

 私もそうあろう。

 忍として生きていく、どんなに過酷であろうとも、それが私の進むべき道なのだから





終わりよければ? 全てよし!

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