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腕が2本しかなくても、頭が1つしかなくても  作者: ニイ
始まりの冒険は力試し
6/13

重軽破砕迷宮「グラビトン」攻略その1

 地下に潜ったウツロウとクチナシを待ち受けるのは小石を破壊したような重圧の罠の数々だった、それに加えて全く逆の性質を持つ浮き上がる罠もまた待ち構えていた。空中に浮遊したままの骨の残骸がその凶悪さを物語っている。足も着かず、ただ浮き続けて餓死するという凶悪さである。


「殺意があふれ過ぎてる……重くなればそのまま潰れて、軽くなれば死ぬまで浮き続けるとか正気じゃない。なんでこんな意地の悪い仕掛けばかりなんだ」

「クチナシが見つける、ウツロウは安心して」

「まさかクチナシがここまで罠を見つけるのが上手いなんて思わなかった、ありがとう」

「ウツロウ助ける、クチナシは嬉しい」


 クチナシの目は暗闇を良く見通し、遺跡に紛れた罠を確実に見つけ出した。その危機察知能力は万が一にもウツロウを死なせないという決意と今まで虐げられてきたことによって培われてしまった悪意を感じ取る感覚によって発現したものである。


「ま、門番みたいな奴がいないことだけは助かったか。こんな罠がある中で殴ってくる奴なんていたらとてもじゃないが対応しきれない」

「っ!? ウツロウ!!」

「うおっ!? なんだ!?」


 クチナシに突き飛ばされるウツロウ、理由なく突き飛ばすことなどありえない事を知っているために緊急事態であると捉えウツロウは愚者のサイコロを取り出した。


「何が来る!?」

「分かんない、でも怖いモノが来る」

「クチナシが怖いモノ、なんだそれ!?」

「ウツロウを殺せるモノ!!」


 頭上より落下してきたのは岩を削り出して作り出される人型、製造時に刻まれた命令を忠実に遂行する最高の僕。


「ゴーレム……か。しかも相当に高級な奴だ」


 目の前のゴーレムは無骨な人形などではなく、素晴らしく精巧に削り出された甲冑の形をしていた。ゴーレムの精巧さはそのまま性能に直結する。ウツロウの見立てではこのゴーレムを作り出した術者は最低でも国家レベルの魔術師である。つまり、とんでもなく強いということになる。


「逃げられねえと来たか」


 ゴーレムの落下と共に退路は塞がれてしまっていた。正面のゴーレムを打倒すること以外に活路はないということになる。


「はぁ……人間以外を相手にするのは苦手なんだ、はったりが通じないから」

「クチナシがあれを壊すよ、ウツロウは死んじゃうよ!」

「うーん、あんまり虚弱だと思われてるのもアレだから手出しは要らない。一応これでも、そこそこの危険から生還してるんだぜ?」


 ウツロウは松明をクチナシに預けると両手にサイコロを握りこんだ。


「ウツロウ……」

「ま、見てろって。ペテン師の戦い方ってやつを見せてやる」


 無防備にすたすたと歩くウツロウに対してゴーレムは腰の剣を抜く。胴に入った構えを取るとそのままウツロウに向かって突進する。


「ウツロウ!!」


 そのままウツロウの首に目掛けてまっすぐに剣を振り下ろす。迷いなき一閃はまさしく一線級の剣士と遜色のない威力を発揮した。ウツロウの首は一太刀のもとに切り落とされる。


「ゴーレムってやつは、決まった動きしかできないもんだ。だから迷わず首を落としに来ると思った」


 首を落とされたはずのウツロウの声が聞こえる、胴体はそのままゴーレムに抱きつくと急激な膨張を始めた。


「え? え?」


 振り切った姿勢に故にバランスの悪いゴーレムは膨らむ勢いに耐えられず足が空中に浮く、その瞬間にウツロウの身体は風船のように爆ぜてゴーレムを壁の側まで転がすことに成功する。


「よし、そこには罠がある。俺じゃあお前を壊せないが、即死の罠ならどうかな?」


 床ののでっぱりに触れたゴーレムは爆発的に増えた自重によって崩壊し、二度と動くことはなかった。


「とまあ、こんなもんだ」

「う、ウツロウ、ぱーんって、今ぱーんって」

「ああ、さっきのは愚者のサイコロでやった。俺の外側だけを象った後に歩かせた、あとはまあ空気で破裂させて罠にぶつけておしまい」

「?」

「あー、えっとな。この愚者のサイコロは色んなモノの表面を好きなようにできる力があって、今回は空気に俺の表面を与えて俺は風景に溶け込んだ。その後は空気を斬ったゴーレムに組み付かせて空気を入れられないくらいに入れてぱーんってした。そしたらゴーレムが転がって罠に当たってぺしゃんこ、分かる?」

「分かった!! ウツロウは凄い!!」

「あ、はい。それで良いと思います」


 説明するのが面倒になったのでウツロウはそこで説明を切り上げた。そもそもアルカナの遺産の起こす現象など使用者本人以外でもとても理解できるような事ではない。


「しかし、ここの罠に助けられたな。まさかとは思うが、こうやって利用するための罠だったりするのか」

「ウツロウ、危ないよ」

「うおっと、やっぱりこれは殺意でしかないな。さて、何か使えそうなもんはあるか……」


 砕け散ったゴーレムより何か役立つものはないかと漁るウツロウ、手から離れていたことで無事だった剣とゴーレムの核らしい赤い宝石を発見する。


「良いなこれ、クチナシはこれを持っておいて」

「これは?」

「武器だ、まあだいたいのものはこれを叩きつければ何とかなる」

「こっちのキラキラは?」

「それは宝石って言ってとっても価値のあるものだから持ち帰る、俺が持つと落とすかもしれないから持っておいて欲しい」

「うん、持つね」

「頼む、こっから先はもっと辛そうだからできる限り軽くしておきたい」


 力の遺跡の深層へと歩みを進めるクチナシとウツロウ、ゴーレムの襲来という新たな懸念事項を抱えより一層の警戒を強めて進むのだった。


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