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ユウキの庇護者

書き溜めはないので、書いたら出す方式で。

プロットと本文が同時進行。次々現れる用語に自分で用語集を作りながら執筆。

何一つ計画通りではない展開ですね。

王の間を辞したユウキは、城の中をルドルフに先導され移動していた。

「ユウキ、と呼ばせてもらうがよいな」

「よろしくお願いします。えっと、ルドルフさん」

ユウキの返答にルドルフは頷いた。

「私もユウキって呼ばせてもらうわ。よろしくねユウキ」

ユウキの後ろを付いてきたのは先程の少女。

「えっと……」

「あ、名乗っていなかったわ。私はユカ。お祖父様―カグラ王の孫娘よ」

ユカと呼んでちょうだい、と続けた少女をまじまじと見るユウキ。

キメ細かい肌。薄いピンクの唇。華奢な身体を持つ少女。

最も印象的なのは肩に届かないくらいの燃えるような赤い髪。


王の間で対面した時はユウキと距離があって細部まではわからなかったが、やはり美人である。

「ユウキよ。先程陛下にも伝えたとおり、貴殿の保護は私が担当となる。暫く面倒を見るがよろしく頼む」

「すみません。右も左もわからなくて……。それで、どこに向かっているんですか?」

ルドルフへの質問だったが、答えたのはユカだった。

「ルドルフは王国騎士団長。王の懐刀だから城内に詰所、というか部屋を1つ分けて住んでいるのよ」

「ユウキには家で暮らしてもらおうと思ってな」


一行が廊下を歩いているとやがて1つの部屋に辿り着いた。

「ここだ。少し待っていてくれ」

ルドルフはそう告げると、部屋に入っていった

「アルマ、戻ったぞ。客人がいるので茶を用意してくれ」

「わかりました。姫様ですか?」

「姫様ともう一人別にいる。よろしく頼む」

ルドルフと若々しい女性の声が聞こえる。

「ルドルフさんの家族かな」

「そうよ。とても優しい方なの」


ユウキがユカと話をしていると、扉があいてルドルフが顔を出した。

「ユウキ、姫様。待たせて申し訳ない。どうぞ入ってくれ」

ユウキが案内された部屋は広かった。

3つに仕切られた部屋は、真ん中に丸テーブルと椅子があった。

「椅子にかけていてくれ」

ルドルフに従い、ユウキは座った。

ユカは1つだけ装飾が付いている椅子に座った。

「もしかしてその椅子って……」

「私もよくここに遊びに来るの。いつからかアルマが用意してくれていたわ」


「姫様にせっかくお越しいただくのですから当然です」

奥の部屋からパタパタと茶器を持って現れたのは長い金髪の美人。

ルドルフの娘だろうか。

「アルマ、済まなかったな」

「いえいえ、せっかくのお客様ですもの。ようこそおいでくださいました」

「は、初めまして。ユウキといいます」

「ユウキ、彼女はアルマさん。ルドルフの奥さんよ」

「お、奥さん!?!?」

ユウキは驚いた。どう見ても親娘にしか見えない。

「初めまして。ルドルフの妻のアルマといいます」

柔和な笑みを浮かべた美女。


「アルマ、実はこのユウキを今日から私が預かることになった」

「あらあらまあまあ」

ルドルフがアルマに、王の間であった出来事を説明する。

話を聞いたアルマは、ユウキに言った。

「大変でしたね……。大したお構いは出来ないですが、どうかお家だと思ってゆっくりしていってくださいな」

「あ、ありがとうございます。アルマさん」

アルマの優しい言葉に、どこか緊張感が顕れていたユウキは破顔した。


しばらく雑談が続く。

ユウキのいた世界に話が飛ぶと、ユカが言った。

「ユウキは元々学生だったのよね?」

「そうです。私の国では18歳まで学生生活を送ります」

「あと2年間は学生生活を送るところだったのか……」

考え込むルドルフとユカ。


「そうよ! ユウキも学校に通えばいいのよ」

「学校ですか?」

そうよ、とユカが話始めた。

ラパナ王国にも教育機関が存在する。

初等教育として7年間。高等教育として5年間を過ごす。

初等教育で生きていくための知識・経験を積み、一部の学生は更に高等教育に進むことが出来る。

「ユウキは多分高等教育の残り2年分を過ごせばいいのよ」

日本で受けていたときと同様に12年間の基礎教育ならば、きっと同じようなカリキュラムで進むはずだ。

ひとまず腰を落ち着けられそうな環境を与えられたユウキは、異世界での生活に好奇心が湧き上がってきていた。

「学校、行ってみたいです」

現代知識があれば、魔法は別としてもある程度理解が出来るはずだ。

魔法も勉強してみたいと思っていたユウキは前向きな答えを返した。


「ですが姫様、転入の手配は……」

心配するルドルフにユカが返す。

「大丈夫よ、そろそろ来るはずだわ……っと」


部屋の扉が叩かれる。

ルドルフが応じると、青年が一人入室してきた。

「失礼します! 内務局の者です。ユウキ=オミツカのパスポートを用意しました」

「パスポート?」

ユウキが手渡されたそれを開くと、ユウキの情報が事細かに書かれていた。

名前、誕生日、年齢。現住所はこの城になっている。

「さっき指輪で調べたデータがすべて記載されているの。他の人は基本的に読み取れないようになっているわ」

このパスポートが、生活の上での必携装備となる。

「生活していくならば、これがあれば大丈夫よ」

「ユウキさん、後で家の情報も確認させて頂戴ね」

ユカとアルマから説明される。

「このパスポートは決済機能もあるの。王国政府からある程度の準備金が与えられているはずよ」

ユカの言うとおり、次のページに数字の記載があった。

「あっ、そうだわ。最初に設定を済ませておかないと」

「設定?」

「そう。パスポートの表紙の真ん中にある丸印を親指で触ってみて!」

ユウキは言われたとおり、少し窪んだ場所に触れた。

すると、パスポートの周りに白い文字が顕れた。

「初期認証を行っているの。文字が消えたら手を離していいわ」


2分ほど待つと、文字が消える。

「もう一度パスポートを開いてみて」

ユカの言葉を聞いたユウキが開くと、最初のページにユウキの顔がプリントされていた。

「おぉう……ハイテクだ」

思わず溢すユウキ。

「これは魔法具なの。身分証明も兼ねているから無くさないでね……といっても、紐付けされているから万が一盗まれても大丈夫なんだけれど」

ユウキはこの世界の技術力が気になった。

「魔力がなくても使えるんだ」

「ええ。魔法具は大体その中に魔力が封入されているから、魔力がない人向けの道具なのよ」

「なるほど」


ページをめくっていくと、ユウキは見慣れないものが書かれていることに気がついた。

「あの、このグラッドストーン学院3年生っていうのは」

「ほう、グラッドストーン学院に行くことになったのか」

「あらあらまあまあ」

どうやらさっき話にあがった、ユウキが通う学校のようだった。

「多分内務局で手配してくれた学籍よ。結構有名な学校だから、きっと楽しいわ」


ユウキにパスポートを渡した内務局員が言った。

「ユウキ殿の転入は次の学期からとなります。現在は丁度休暇期間に入っていますので」

「あらあら、それは7日後ですね。ユウキさんの転入準備をしないと」

「そうだな……。すまんがアルマ、用立ててやってくれないか」

「わかりました。ユウキさん、明日お買い物に行きましょう」

「よろしくお願いします」

ユウキはアルマと買い物に行くことになった。


「それでは失礼いたします!」

内務局員が去ると、入れ替わりに年配の女性が入ってきた。

「姫様!探しましたよ!お勉強の時間です」

「げっ、何でわかったのよ!」

ユカの表情が変わった。

「ルドルフ騎士団長から連絡がありました。さぁ、予定の時間はそろそろですよ」

「ルドルフ、図ったわね!」

ユカの睨みにもルドルフは気にすることなく答えた。

「陛下からも言われております。姫様、どうか」

「姫様、そのお茶はどうか飲んでいってくださいな」

アルマに言われたユカはお茶を飲み干して部屋を後にした。

「アルマ!お茶美味しかったわありがとう! ユウキ、またね」

女性―教育係に連れられていった。



「今晩はユウキさんの歓迎会ですね」

ユカが出ていった後、アルマが言った。

「そうだな、細やかで済まないがどうか楽しんでいってくれ」

「ありがとうございます」


アルマが手ずから作った晩餐は、ユウキをホッとさせるのに十分な美味しさであった。

ルドルフとアルマの下に預けられてよかったとユウキは心底思ったのだった。

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