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79話 燃えますよ!

「百花宮のお掃除係」、本日発売です!

「俺ぁ船乗りで、この佳の港を気に入っている。

 だから漁師たちには気持ちよく漁をしてほしいし、港も色々な船に使って欲しいと考えている。

 けどあの女がしゃしゃり出れば、金を絞り出すことばかりされて、港がメチャメチャになる未来しか見えねぇな」


利民の心底嫌そうな表情を見ると、その伯母という人は少なくとも利民とそりが合わなそうだということは、雨妹にも分かる。

 というかこれは、完全に黄家内の権力闘争ではないか。


 ――皇帝陛下、もっとちゃんと調べてからお姉様を嫁がせてよ!


 雨妹が内心で宮城に向かって愚痴ってから、利民に尋ねる。


「ではそのような理由で、その伯母だという黄県主は潘公主を虐めているってことなんですか?」


「あん? なんだそりゃ?」


しかし雨妹の言葉に、利民が首を捻る。


 ――ちょっと、まさか知らなかったとか言わないでしょうね?


 初耳という利民の様子に雨妹は嫌な予感がしつつも、そもそも潘公主が体調を崩すことになった原因を説明する。

 減量をしようとした云々は伏せるとしても、肝心の事は伝えておくべきだろう。


「あんのババァ、俺が海へ出ている隙に来やがったな!

 しかも聞いてねぇぞそんな話」


話を聞いた利民が苛立ったように机を拳で叩く。

 どうやら本当に知らなかったようだ。


「潘公主は利民殿に負担をかけまいと黙っていたのでしょう。しかし家人から一言も報告が上がっていないというのは、放置できない事ではないですか?」


立勇が屋敷で問題視していた点を、利民に突きつける。


「くそぅ、俺も舐められたもんだぜ」


すると利民は唸るようにそう言って、宙を睨む。

 ここで、立勇が状況を整理する。


「利民殿の話の通りだとすると、黄県主は佳を欲していて嫁いできた潘公主が目障り。

 だから潘公主が音を上げて離縁を申し出れば、利民殿の立場が悪くなる、というわけですね」


「お屋敷に潘公主のお味方が少ないのは、マズいんじゃないですかね?」


立勇と雨妹の指摘に、利民が無言で頭をガシガシと掻くと。


「その公主サマは、今どうなんだ?」


雨妹にそう尋ねてきた。


「はい、お食事をちゃんと召し上がるようになったので、味覚と風味の問題はだいぶん改善されています。

 これらは栄養失調が原因でしたからね。

 あとは体力と筋力を戻すことですが、潘公主の努力もあってこちらも順調です」


「そうか、そりゃあよかった……痩せようなんざ、考えなくったってよかったのによぅ」


雨妹の説明を聞いた利民がホッとしたように、そして少し不貞腐れたように言った。その内容に、雨妹は眼を丸くする。


「あれ、ご存知だったのですか?

 潘公主が痩せようとなさっていたことを」


これに利民は眉をひそめて、少し声の調子を落として語った。


「女が考えることなんざ、誰だって似たようなもんだろうが。

 けど俺ぁ、体型に不満を言ったことはないんだぜ?

 俺が出した条件は『船乗りなのを否定しない』ってだけだからな」


利民はそう言って、グビッと酒を煽る。

 この夫婦は、つくづく意見のすり合わせが足りていない。

 それをちゃんと潘公主に伝えていれば、状況は変わっていただろうに。

 それに利民が海賊騒動で忙しいのも、状況を悪化させているのだろうが。

 となると、雨妹がやるべきことは見えてくるというもの。

 そもそも自分は、難しい政治のアレコレを考えるために残ったのではない。

 潘公主の身体の回復のために、ここにいるのだ。


 ――よぅし、やってやろうじゃないの!


「ではその黄県主から文句の付けどころが見つからないくらいに、潘公主を仕上げてみせようではないですか!」


唐突に席を立っての雨妹の宣言に、立勇と利民が驚いている。


「まあ、付け入る隙を一つずつ潰していくしかないだろうな」


だがすぐに立勇も同意するが、利民は嫌そうな顔をする。


「おいおい、俺ぁ後宮入りするようななよっとした女は嫌だぜ?」


「ふふん、心配ご無用です。

 私が本当にいい女というものを、見せて差し上げます!」


しかし雨妹は利民に対して胸を反らす。

 美しさというのは、人の内側からにじみ出るもの。雨妹の前世の知識の全てをもってして、真の美しさを見せつけてやろうではないか。

 雨妹は、敵があれば燃える質なのである。

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