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百花宮のお掃除係~転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。  作者: 黒辺あゆみ
第十五章

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711話 むしろワクワクする

 雨妹ユイメイは皇后のことを接触した短い時間でしか知らないが、抱いた印象としては「真面目な堅物」である。そして多くの問題を同時進行で解決するのは、やや苦手としているのかもしれない。だからこそ、馬というどちらかというと小者の部類であろう女にやり込められる隙を与えてしまったのだろう。

 というか、皇后は皇太后の存在の下で生き抜くことで手一杯で、そういう心の余裕がなかったのではないだろうか?

 これでもし皇太后が円満退職的な隠居であったとするならば、皇后に己の持つ手札をちゃんと引き継ぐことをしたのかもしれない。それとも皇后といえども自身の所有物を欠片でも誰にも与えたくないと、全てを持ったまま去ったのだろうか? 雨妹の中で皇太后の想像図では、後者を選びそうに思える。


 ――自尊心強めな人だと、そうなる場合があるって聞くもんねぇ。


 現状を例えれば、上司が仕事のややこしいアレコレを引継ぎしないまま、退職してしまったようなものであろうか? 雨妹自身には前世でもそんな経験はないが、胃を患って入院していた患者にそういう人がいて、看護師一同で深く同情したものだ。

 まあ皇后もそこは今後、同時進行が得意な信頼する女官に丸投げすれば済むことなので、問題は解決するのだけれども。


 ――つまり、イエ賢妃が一方的に皇后陛下を敵視している形かぁ。


 これも物語としては「あるある」なのだけれど、叶賢妃当人としては面白くないだろうというのは、雨妹にもわかる。


「けれどまあ、これも予測できていたことであるのだがな。やはり特大の餌を眼前にすれば、私の結界札の効果は微細であったな」


このイェン女史の後半の愚痴のような言葉に、雨妹は「なんのことだ?」と首を捻ったが、すぐに思い出したのは彼女と出会って間もない頃の出来事だ。


「それは、以前お見かけした時に使っていたお札のことですか?」

「ほう、よく覚えていたな」


雨妹がそう述べると、燕女史が目を見張る。


 ――あんないかにもファンタジーな出来事を、忘れるはずないじゃん!


 あの時の燕女史はコソコソと誰かを警戒するように、道士として札を貼っていたのであったか。あれが誰を想定して警戒しているのかなど、当時あまり深く考えはしなかったのだけれど。燕女史が主である燕淑妃のみならず、後宮全体のことを見ている人なのだから、守ろうとする範囲に皇后がいたはずだ。

 雨妹が思い出した出来事を、燕女史が改めて解説してくれた。


「あれはな、大地の気脈の乱れを鎮める念を込めているのは当然として、人間相手への牽制もあるのだ。『ここは見張りの目があるぞ』という印だな。もちろん、花の宴で騒動を起こした残党が紛れているのを警戒する意味合いもあり、仲間への合言葉のような役割も果たすのだよ」

「おお!」


雨妹の気持ちが盛り上がってくる。


 ――あれか、暗号的なのが込められているとか!?


 ファンタジーがまさかの変化球となり、雨妹のワクワクが若干隠せなくなってきていた。


「なら、私もあの札が貼ってある場所で、変なことをしないようにしなくちゃですね!」


楽しそうにする雨妹の様子に、燕女史は一瞬きょとんとしてから笑う。


「ふふ、誰かに見られていると心得ておくことだ。まったく、妙に怖がらせてはならぬと言葉を選んでいたというのに、お前という奴は」


燕女史が心底可笑しそうに喋るのに、雨妹も「へへっ」と笑う。

 あれから陳の診察を定期的に受けて薬も飲んでいるらしい燕女史は、少し顔色が良くなっているように見える。首元を隠す襟巻きはまだ外せないようだけれど、次の夏には涼し気な首元になっているといいなと願うばかりだ。


「ではな、約束があるのだろう? 行きなさい」

「ご忠告ありがとうございました。これで失礼します!」


ひらりと手を振る燕女史に、雨妹は礼を述べてからこの場を去った。

 こうして燕女史と別れた雨妹が向かったのは、皇后宮の外れにある井戸端である。


「お~い!」

「あ、雨妹来たな!」


そこへ雨妹が呼びかけると、ひょこりと立ち上がった野猫の姿が見えた。

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― 新着の感想 ―
おお、ここで1年(以上)振りの伏線回収! しかし燕女史から見ると叶賢妃は「女狐」なのね。 >現状を例えれば、上司が仕事のややこしいアレコレを引継ぎしないまま、退職してしまったようなものであろうか? …
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