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百花宮のお掃除係~転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。  作者: 黒辺あゆみ
第十四章 後宮の女たち

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689話 後始末

大事件尽くしの一日が過ぎて、翌朝。雨妹ユイメイがひと仕事を終えてぐっすりと寝てスッキリ起きた朝は、いつにも増して爽やかである。

 朝の元気を注入するべく食堂にやって来た雨妹に、台所から美娜メイナが声を掛けてくる。


「おやおや阿妹アメイ、忙しいのは終わったのかい?」

「終わってはいないですけれど、峠は越えました!」


雨妹は美娜から食事を貰いながら、そう答える。

 ちなみに今日の献立は、油条ユウテオと鶏出汁の野菜たっぷりなタンであった。揚げパンっぽい油条を湯に浸して、とろりとなる食感が雨妹は大好きなので、たまにやって来るこの油条が食べられる日は心がホクホクである。


「よかったじゃないか。ほら、おまけしておいてやるよ」

「ありがとうございます!」


雨妹は美娜に油条を二つほど余計に盛ってもらい、ご機嫌の笑顔で卓に着く。

 この後、雨妹は刑部に呼ばれており、その後にワン美人の屋敷に行く予定である。刑部には、そちらでの預かりとなっている皇后宮次席女官であるマーの様子を見に来てくれと、昨日のうちにミィに頼まれていたのだ。馬も大麻汚染されているかもしれないと念のために告げてあったので、それで呼ばれているのである。その後の王美人の屋敷は父との面会場所で、結末の報告会だ。

 ちなみにチェンは皇后と燕女史の健康管理という大仕事がまだ継続中であるので、呼ばれるのは雨妹一人である。けれど皇帝と顔を合わせる機会を逃すのは、陳にとって幸いなのか、どうなのか。


 ――でもこれ以上偉い人と会うと、陳先生が倒れそうだもんね。


 陳とは成り上がりの欲がない男なのだ。それに皇后の方はまめな診察が必要なので、しばらく陳はそちらから手が離せないはずだ。皇后はいくら野猫イェマオが空気の入れ換えと食料の差し入れ役をしていたとはいえ、十分に重病人である。

 あの状態の皇后を周囲はよく不審に思わなかったなと雨妹などは思うものの、これまでどうしても皇后でなければならない外出の際は、輿で移動させて御簾で隠していれば、他人が成り代わっていても周囲にはバレやしない。なにか話す場合でも、皇后が直答するなんてことはそうそうありはしないだろう。

 こうなる以前の皇后がどのように移動していたかは知らないが、上位の妃嬪にはほとんど歩かない人も多くいるので、たとえこれまで歩いていたとしても、周りは輿移動をする皇后の体調などをさして気にしなかったと思われる。


 ――まあけど、陳先生がいれば皇后陛下も元気になるよね。


 やはり後宮の重要な地位が空いていたり弱かったりするのは、均衡を欠いてよくないことが起きそうではあるのだし。

 雨妹はそんなことを考えながら鶏出汁湯に浸した油条をモリモリと食べ、英気を養ってから家に戻り、三輪車で刑部へと向かう。

 すると刑部へ行くための付き添いに、当然のように立彬リビンがいた。


「おはようございます、立彬様!」

「……あんな事の後なのに、お前は元気だな」


朝の挨拶をする雨妹に、立彬はため息を吐く。どうやらお疲れの様子である。


「昨日は昨日、今日は今日ですよ立彬様。新しい朝じゃないですか」

「お前の気楽さを見習いたい」


雨妹がそう励ますのに、立彬はますますため息を深くする。

 そんなことを言い合ってから改めて刑部へ向かうと、建物の前で既に刑部官吏の謎が待っていた。そしてその隣にイェン女史がいる。こちらも雨妹同様、大麻香の参考意見を貰うために呼ばれたのである。


「揃ったのなら行くぞ」


謎に促されて刑部の建物内に入り、四人でぞろぞろと移動して向かったのは、いつかも来たことのある取り調べの覗き部屋であった。


「もう馬様の取り調べをしているのですね」


壁越しに聞こえてくるボソボソとした声と、時折聞こえる「コンコン」と咳をする音でそう察せられた雨妹は、壁向こうを覗ける穴に目を宛がう。すると取り調べを受けている馬が、憔悴した様子で俯いている様子が見えた。

 皇后宮ではきっちりと着飾り濃いめの化粧をしていた馬であったが、今は簡素な格好をしており、化粧も落ちたままだ。身支度を手伝う側仕えがいないという理由もあるかもしれないが、刑部側としては罪を犯して捕らえた相手なので、衣装や化粧といった贅沢を許す理由はない。

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