表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百花宮のお掃除係~転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。  作者: 黒辺あゆみ
第十四章 後宮の女たち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

689/728

685話 あの人が来た

 ――この姉妹の拗れ方を、父がどうにもできていなかったのもわかるよね。


 こういうのは誰かに頭ごなしに言われて解決するものではない。特に皇帝なんていう人が仲介に入れば、むしろ姉妹両者ともに口を閉ざしてしまうだろう。なにしろ話題が二人とも不敬をギリギリ越してしまっているのだから。

 しかしなるほど、イェン淑妃の望みである「姉の助命」というのが、父にとってはなかなかの難問だったわけか。燕淑妃は単純に、姉を燕家内の敵から助けてほしかったのだろうが、父の立場になれば道士でもある燕女史とは、先の戦乱の戦犯の仲間でもある。燕女史は燕家道士の罪について思い詰めていたが、そうなってしまうのは自然なことだ。

 けれどあの父は得だから助命を引き受けたのだと、雨妹は思うのだ。皇帝である人が、完全なる善意で燕姉妹を助けるとは考えられない。いや、多少の同情はあったであろうが、それと同時に利益もあったはず。

 そしてやはり気になるのは。


 ――燕家がいっそ出来過ぎなくらいにみみっちい悪路線なのがねぇ。


 そう、ここである。

 雨妹ユイメイも「古い家柄」と「賢い人たち」は同意ではないとわかっているが、それでも道士という知識集団を抱えている燕家を考えれば、違和感を禁じ得ない。この違和感は燕女史が燕家の中心に属しておらず、語られた内容が大きな事実の端しか見えていないためなのだろうか?

 だが雨妹の華流ドラマ脳では、これを補完するのが困難だ。


 ――こんな時こそ、ユウくんの解説が欲しい!


 あの人は雨妹とは違う中華ジャンル脳であるので、きっとなにか別視点での妄想回答を示してくれることだろう。しかし今の宇は佳にいるはずで、海を満喫する続きを楽しんでいる少年を当てにしても仕方ないと、そう気持ちを仕切り直す。


「難しいお話は、皇帝陛下なり李将軍なりを相手にしてもらうとしましょう。きっと有益な議論ができますよ」


雨妹はそう言ってニコリとする。姉妹の行き違いが解けつつある今、燕女史にチェンの受診を受け入れてもらう流れに持って行きたい。


「お前は全く……」


この雨妹のあっけらかんとした言葉に、立彬リビンが呆れて息を吐いた、その時。


「まあ、賑やかですね」


そこへ部屋の扉の方から、新たな女性の声が割り込んだ。


「……!?」


驚いて振り向けば、いつの間にか開いている扉から、小さな包みを持った人が案内役の宮女に連れられていた。ゆったりとした足取りで部屋へ入ってくるその姿は、日よけの布を目深に被って顔を覆い隠し、袍を身に纏ったいかにも職人の風体をしている。それが貧相な格好であっても堂々たる歩みである彼女は、石細工職人のウェン――その正体は貴妃・文芳ウェンファンだ。


「まあ」

「なんと」


内密な話をしていた場へ突然第三者がやってきた状況に、燕姉妹も驚き固まっている。


「誰だ……?」


一方で立彬は文芳の姿を見て訝しむと同時に、どこか既視感を覚えている風でもあった。


 ――そうか、そもそも立彬様は太子の乳兄弟だもんね。


 文芳は引きこもりで表舞台に立つことは稀であったらしいが、それでも主の母親のことを見知っていないわけがない。それでもあの伊貴妃がこのような姿でいることなど、想像もしていないから思い至らず、ただうろ覚えな感覚だけがあるのだろう。


「話は終わったのかしら?」

「文、どうして?」


姉妹に問いかける文芳に、燕淑妃が涙に濡れたままの目を瞬かせる。


「どうしてなんて仰るとは。あなたが急かした仕事を、こうして持ってきたのではないですか」


これに雨妹はギョッとする。


「え、依頼の耳飾りがもう出来たんですか!?」


あれからそう日数も経っていないのに、石細工とはこうも早く出来上がるものなのか? いや、そんなわけがないと、雨妹が被った布の下の文芳の顔色を窺おうとしていると、当の本人が胸を張って告げた。


「気が付けば二日寝てなくて、気絶していたわね」

「それ、叱られるヤツじゃないですか!?」


決して威張って良いことではない台詞を堂々と言う文芳に、雨妹は思わず突っ込む。


 ――この人は、誰かが見ていないとダメな人だ!?


 幼い頃の秀玲シォウリンの苦労がわかろうというものだ。きっと今もヨレヨレになって作業小屋から出てきた文芳を、お付きの人たちが大慌てで見られる姿に整えたのだろう。二日の徹夜で気絶した主を発見した人に、雨妹は心底同情する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
健康診断一人追加ですね。 ※気がついたら数日立っているような人が健康なわけないですし、きちんと診断しなくては…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ