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百花宮のお掃除係~転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。  作者: 黒辺あゆみ
第十四章 後宮の女たち

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680話 燕女史の話

姐姐ジェジェ、ごめんなさい……!」


イェン淑妃が肩に顔を寄せて謝るのに、燕女史はその頬を両手でそっと挟んで顔を上げさせた。


「なにを謝る? わたくしが今の立場を悔いているとでも言うのか? そんなはずはない、わたくしは自らの意志でここにいるのだから」


そしてずっと堅い印象を与えていた鋭い目元を、ふわりと和らげる。


「けれど、確かになんとかように話が重なるのかと、好機が転がり込んできたことに驚いたのであった。それがまさか、妹妹メイメイが危ない橋を渡っていただなんて」

「わたくし、必死で」


仕方がないという顔で話しかける燕女史に、燕淑妃は多少ばつが悪そうにする。


「まったくもう。思えば妹妹は昔から引っ込み思案であったのに、時に無茶なことをする娘であったよ。わたくしが何度ヒヤヒヤしたことか」


燕女史の愚痴に、雨妹ユイメイも一度燕淑妃の無鉄砲なお忍びに遭遇した身として、「確かに」と心の中で同意する。燕淑妃は内気で気弱なのは確かだが、それと無茶が同居する稀有な人なのだ。


 ――けど、そんな人だからあの父の心に刺さったんだろうな。


 きっと当時四夫人候補は、燕家のみならず他家からも大量に紹介状があっただろうし、父も自分の敵にならず丁度良い塩梅の妃を探していたところへ、燕淑妃の手紙が転がり込んで来たのだろう。いわゆる鴨葱というものだ。それに燕淑妃も正規の手順で皇帝に手紙を出したのならば、当然宮城の官吏が「相応しくない内容だ」と破棄したであろうが、独自に届ける手を持っていたことも幸いした。世の中で上手く行く流れとは案外、こうした運が八割だったりするのだろう。

 雨妹がそんな風に考えていると、燕女史が燕淑妃をちゃんと椅子に座り直させている。


「それに、謝るのはわたくしの方です。燕家の長老方とどのように渡り合うかに腐心し、大事な妹妹の心に寄り添うことを怠ったわたくしの落ち度。だがそうか、そうであったからこそ、あのようなことに――」


燕女史はなにかに気付いたかのように独り言ちると、雨妹たちを見渡す。


「雨妹や皆もどうか、今度はわたくしの話を聞いておくれ」


そして決意をするように告げて、大きく深呼吸する。


「これを話すには勇気がいる。だがもう、我々も前に進む時が来たのだと、今しがた我が妹妹に教えられたよ」


このように前置きをした燕女史は、一度ぎゅっと目を閉じてから、どこか遠くを見るような表情で語り出した。


「そもそもわたくしを情婦にと望んだ長老方に、良からぬ欲があったのは確か。だが燕家の道士もまた、問題を抱えていた。燕家の道士は皇帝陛下に、世の民たちに贖罪しなければならない立場である」


こちらもまた急展開な話に、雨妹は突っ込みそうになるが、先程の燕淑妃の時と同様にそれを堪えて後回しにする。

 その様子を見て、燕女史は話を続ける。


「古来道士を抱える燕家は長い歴史があり、宮城とのかかわりも深い。故に歴代の長老方には『我らこそが国の礎である』という自負があった。その自負が燕家を驕らせ、歪んだ意識を根付かせてしまっていた。その歪みが、戦乱をいたずらに長引かせてしまったのだ」


話が燕淑妃とはまた違う方向の不穏さを感じさせる。


 ――ここにきて、内乱期の話か。


 その時期の話を聞くならば、当時を知る李将軍やら明やらがいれば事情がわかって理解がしやすいのだが。けれど今ない物ねだりをしても仕方ないと思い直し、雨妹は燕女史の言葉に耳を傾ける。


「道士は命にまつわるあらゆるものの扱いに長けています。怪我があれば秘薬にてたちどころに癒し、敵があれば毒を持って制する。尊師曰く、戦乱においてその力はどの陣営でも重宝されたそうだ」

「……そうなんですか?」

「戦場にて燕家の道士が活躍したのは、事実であると聞いている」


燕女史の言葉に雨妹がひそりと立彬リビンに聞けば、あちらもひそりと答える。道士一派を抱える燕家は、戦乱を生き抜くために右往左往する諸侯たちから知恵者として頼りにされたのだろう。

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 燕淑妃は一生懸命お姉さんを助けようとして無茶したんですねぇ・・・ 郭比さんは帝に妃に良い娘を探す密命でも受けていたのかな? 燕家の妹を淑妃に、姉を補佐にというのは、皇太后が好き勝…
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