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百花宮のお掃除係~転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。  作者: 黒辺あゆみ
第十三章 新たな後宮模様

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606話 まだまだ衝撃はある

 ――貴妃って、野次馬が弱めな人なんだな。


 というかこれまでの行動を見ていると、自分の興味があることにしか意識が向かない性質と雨妹ユイメイは見た。


文芳ウェンファンならあの宮に伝手があるのではなくって?」


いきなり核心を告げる秀玲シォウリンに、文芳は「ふぅん」と首を傾げる。


「伊貴妃としてなら、交流は全くないわね」


文芳の答えが期待できないものだったのに、雨妹は内心でガックリとする。やはり、そう上手く話は進まないものらしい。


「あらそう」


けれど秀玲は軽く返事をするのみで、あまりガックリそうではない。さらには文芳が雨妹にニッコリと微笑みかけて告げた。


「だから雨妹、あなたは明日改めていらっしゃいな」

「……は?」


文芳に言われたことに、雨妹は思わず呆けた声を漏らす。


「格好は着飾らないこと、これを守ればいいわ」

「え?」


雨妹はなにかを突っ込みたいのだが、それが言葉にならずに口をパクパクさせる。


「この娘は掃除係だから、仕事着でいいかもしれないわね」

「なら、そうしてちょうだいな。来るのは裏門にね?」


秀玲と文芳で話をさくさくと進めているが、混乱中の雨妹は置いてけぼりだ。


「え、え、え?」


首をグルグルとして秀玲と文芳を見比べる雨妹は、だんだんと目が回ってきた。

 その後、秀玲に連れ帰られた時にどんな話をしたのか、雨妹はさっぱり覚えていなかった。



そんなわけで翌日になったのだが。


「おはようございます……」


雨妹は言われた通りに、朝から今度は一人で再び伊貴妃宮を訪ねている。一人な上に昨日と違って裏口なので、三輪車で移動した。そして自分は今からなにをするのだろうか? と未だに謎が謎のままである。


張雨妹チャン・ユイメイですか?」

「あ、はい!」


そんなあからさまに不審人物に見えるであろう雨妹に、裏門で待っていた風の宮女が呼びかけてきた。名前を当てられたので、どうやらここに雨妹が来ることがあらかじめ知れていたらしい。


「しばし待ちなさい」


その宮女にそう言われて、雨妹が大人しく待つこと少し。裏門から先程の宮女とは別の人物が出てきた。格好は袍を着て髪を雑に括り上げているだけという、宮女よりも質素にしていて、日差しを避けるように頭から布を被っている。


 ――えっと、誰?


 伊貴妃宮は戸惑うことばかりだな、と雨妹は若干悟りの域に差し掛かりながらも、とりあえずその人物に対してペコリと礼の姿勢をしてみせる。するとその相手も礼を返してきた。そして――


「ちょうど合う格好だわ、よくってよ」

「え?」


その人物の口から聞こえた声に、雨妹はギョッとするどころではない。


「伊貴妃!?」


そう、この声は紛れもなく文芳のものだったのだ。この雨妹の驚きに、被った布の下から文芳がこちらの顔を覗き込んでくる。


「しぃっ! わたくしはただの『ウェン』、伊貴妃宮で仕事をしている石細工職人よ」

「はぁっ!?」


文芳がそのようにたしなめてくるが、雨妹はなおさらに意味がわからない。しかし文芳は雨妹の混乱を全く気にする風ではない。


「さあ行くわよ、この箱を持ってちょうだい」


文芳からポスンと箱を渡され、雨妹は反射的に受け取ってしまう。そう重い箱ではないが、中からカラカラと音がする。


「なんです、この箱?」

「石見本よ。これから意匠の要望を聞き取りに行くの」


雨妹の質問に答える文芳が、箱の蓋を開けてみせた。たくさんの仕切りで空間を分けられた箱の中に、たくさんの種類の小石が入っている。色合いも様々揃っており、見ていて楽しくなってくる。


「石の色も様々でしょう?」

「はい、すごいですねぇ」


雨妹は素直に感想を述べるが、いや、そうではないだろう自分。


 ――ひょっとしてこの人、本気で石細工職人として活動しているの!?


 父はなんという人を貴妃にしているのだろうか?

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 なるほど、伊貴妃としての訪問ではなく、石細工職人としての伝手ならあるとw それで雨妹ちゃんを助手として連れて行くのは有りなんですねw もしかして太子様のアクセも文芳様作でしょうか…
もう一度言わせて。 青州は他に妃候補いなかったの!? この人実家のために働くタイプじゃないよ!? 男子産んだら国の金で石細工三昧だよって言われて来た人じゃん!
>父はなんという人を貴妃にしているのだろうか? いや、だからこそ気に入られていたのかもですね。 美しい容姿ではなくおもしれー女枠として。
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