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576話 なんとかオチがついた

多少引き下がって見せたイェン淑妃側に、その皇后宮の筆頭女官らしき人がニコリと微笑む。


「そう? お忙しい身でございましょうし、どうぞお行きになって」


彼女がそのように述べて道を開けるのに、他の皇后宮の面々も慌てて従う。燕淑妃側はその開いた道を進もうとして、女官二人が目を合わせる。


「幼子の面倒をみるのも、苦労であられるな」

「そちらも、無駄に焚きつけるような真似は控えていただきたいですわ」

「ふん、礼儀を弁えておれば。では、失礼いたします」


そんなやり取りをしてから燕淑妃の一団は去っていったものの、あの女官は己の言葉通り一切頭を下げなかった。


 ――ふわぁ~、ゾクゾクしたぁ!?


 どうやら危機は去ったらしいとホッと安堵しかけた、雨妹ユイメイを始めとする居合わせた人々であったが、ところが危機はまだ去っていなかった。


「あなた方」


燕淑妃側を行かせた後に残された皇后宮の一団を、女官がじろりとねめつける。


「わたくしの顔に泥を塗ってくれましたね」


全く潜めていない声でそう脅す女官は、先程までの朗らかさを消して無表情であった。


 ――っていうかさ、宮に戻らないでここでお説教を始めちゃうの!?


 せめて雨妹たち外野が移動をしてからにしてほしかったのだが、流れるように説教の時間になってしまったので、頭を下げていた人々は皆その場を動けないまま。公開説教とはなかなかの度胸である。


「そなた、頼んだ使いにどれだけ時間をかければいいのですか? しかも、その人数はなんです? どこぞでお茶会でも開くのですか? それとも、一人では満足に使いもできぬ無能であると、そう言いたいので?」


説教をされる側の面々は当然ながら、羞恥で顔を真っ赤にしていた。


「そっ、そなたはっ、余所者が大きな顔をして、何様だ」


なんとか言い返している人がいるが、声が震えているので迫力に欠けている。がしかし、気になることを聞いた。


 ――およ、あの女官様は古株ではないの?


 雨妹が驚きつつも耳を澄ませて会話に聞き入っている前で、説教は続く。


「わたくしは皇帝陛下の命令故に、そなたたちの面倒を見てやっているのです。わたくしを拒否すれば皇后宮は閉鎖。皇后宮の者たちはそれをすぐに忘れる鳥頭のようですが、わたくしは鳥を飼った覚えはなくってよ」

「なっ……!?」


こちらもまた、選ぶ言葉がいちいち強い。今までチヤホヤされるばかりであった皇后宮の人では、太刀打ちできないであろう。実際、なにかを言い返したいが言葉が上手く出て来ずに、結果口ごもっている。


「挙句に、余所の宮に喧嘩を吹っ掛けるような真似をするとは。これでは幼子の方がまだ言うことを聞くでしょうに。なんと情けないことか」


流れるように侮辱され、全員唇を噛み締めているものの反論できないでいた。口でなんと言っても、この場では恥の上塗りをするだけだと、遅まきながら気付いたからだ。


「とにかく、早う戻るがよい!」


女官がそう言ってパン! と手を叩くと、憎々しそうにまなじりをつり上げるものの頭を下げて、みっともなく足音をバタバタとさせて足早に去っていく。女官は彼女たちの後姿を見届けてから、ゆったりと歩き去っていった。

 そして、ようやくこの場に平穏が戻る。


「ふぁ~!」


今度こそ安堵の息を吐いた雨妹だが、あちらこちらから吐息が聞こえたので、気持ちは居合わせた全員が同じだったようだ。


 ――怖いって、なにあの女官様!?


 あのままだともっと長々と絡んでいそうな皇后宮の人たちを戻してくれたのはありがたいが、やり方が怖すぎるのだが。


「……って、早くしなきゃ!?」


今の件でだいぶ時間を取ってしまったので、急いでごみ焼きにいかなければならない。雨妹同様に、周囲で待機させられていた人たちが慌ただしく動き出した。

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― 新着の感想 ―
皇后の座が開くと色々と面等臭いから残されてるだけ、ってのを理解してない面々ですな。 真面目に人形でも置いておいたほうがまだマシなのが笑えない
考えてみれば、皇太后が失脚した今、明らかに皇太后以下の皇后に皇帝が目付役を用意するに決まっていますな。 皇后の役割は、ただ志衛にとってお飾りであればいいだけ。 余計な事をせず、皇后の地位に座っているお…
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