表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
571/624

567話 案外付き合いがいい

「道士様って大きな組織とかあるんですかね? なにか巨悪的な敵がいるのですか? 世界の平和のために戦うんですっ!?」


無礼だとかは空のかなたに飛ばしてしまった雨妹は、かぶりつくように詰め寄ってしまう。

 女官で道士だなんて、華流ドラマ好きとしては見逃せない属性持ちである人だが、何故今まで雨妹の耳にその存在が入ってこなかったのか? そして雨妹の目に見えていなかっただけで、どこかにファンタジー世界は存在するのだろうか?


「は、あ……?」


若干息まで荒い雨妹の様子に女官が少々引いていたが、「ゴホン!」と咳ばらいをして気を取り直す。


「道士はどの師に属するかで教えが違うな。あと巨悪についてはわからぬが、世の平和は皇帝陛下に願うがよかろう」


そして一つ一つ真面目に答えてくれた。


「確かに、平和を願うなら皇帝陛下にですよね」


雨妹も現実的な答えを聞かされ、興奮を落ち着かせる。

 それにしても、雨妹のこうした暴走会話に付き合ってくれるなんて人は、実はそうそういない。こういう会話をした場合、大抵の相手は「あ、私用事があったんだった!」とか言って逃げられる。付き合いがよくて的確に突っ込みを入れてくれるのは、仲の良い宮女仲間以外だと立彬くらいだろうか?


 ――やっぱりファンタジー要素はないのかなぁ?


 雨妹としてはガッカリだけれど、ちゃんと相手をされて嬉しいので、心情としては相殺だろう。


「最後に、お前が興味を示した札であるか。札はな、書いてある内容はさして重要ではない。心から天地に祈り、念を込めることが大事なのだ」

「ほうほう!」


しかしまたもやファンタジーへの希望が出てきて、雨妹の中で期待が高まった。

 一方で、女官の方も雨妹を怪訝そうに見る。


「お前、わたくしを道士と知っても怯えぬのだな」

「怯える、ですか?」


そう言われて、雨妹の方こそ怪訝顔になる。今の雨妹は「興味津々」しかないのだが。まあ、あの皇太后の腰巾着だった道士には「イラッとする」の一択だけれど。


 ――怯えとはなんぞな?


 心底不思議がる雨妹に、女官が苦笑する。


「今や道士とは後宮――いや、宮城においての厄介者だ。やたらに恐怖を振り撒き、立場が悪くなれば権力の後ろにすぐに隠れてしまう。皇太后のせいで、道士とはそうした連中だという認識が広まってしまった。悲しいことにな」

「ははぁ」


言われてみれば理解できる。雨妹にとって「道士」とは前世ドラマでの憧れのファンタジー職であるが、今の宮城では皇太后の権威の下で好き勝手していた男こそが、道士の代名詞なのだ。


「あのお方が道士代表だなんて、ほとんどの道士様にとっては迷惑この上ないでしょうに」


ほぅ、と息を吐く雨妹に、女官が「まったくだ」と頷く。


「わたくしの師兄方も、さぞ心を痛めておられることだろう」


そう言って女官は悲しそうに目を伏せた。

 雨妹はあの皇太后お気に入りの道士はやたらに「呪いだ!」と決めつけるので嫌いだが、道士という人々全てが憎らしいわけではない。むしろ医術にとって道術とは隣人なのだから、仲良く助け合うのが世のため人のためだ。

 雨妹がそんな風に考えていると、女官がさらに言う。


「それにあの医局の医官は良き医者のようだった。その者が道士に関りありと思われる事態は避けねばならぬ。でないと助けを求める者らが医術を疑い、結果疫病が流行ってしまうだろう」


真剣な顔の女官に、雨妹は目を瞬かせる。


 ――なるほど、陳先生を心配したのか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
>――やっぱりファンタジー要素はないのかなぁ? 今まで呪術的なモノが出てこなかった時点で察して欲しかったですな( ー`дー´)キリッ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ