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545話 頼りになります

 ――やっぱり、介護をなんでも一人でやるのは無理なんだってば。


 リフィもひょっとしたら、ジャヤンタをひっそり匿っている間にどうにか動けるようにしようという気持ちだって、少しはあったのかもしれない。

 けれど介護の心得などないお姫様には荷が激重過ぎて、心身ともに潰れてしまったのだろう。

 介護生活に必要なのは、助けの手を伸ばす勇気と、伸ばせ合える相手の確保である。

 その介護の緊急助っ人たる宇が、ジャヤンタについて意見を述べた。


「下半身の筋肉を取り戻して、それから歩行訓練だね。

 それで、正しい歩き方を覚え直すためには、歩行器がいいと思う」

「やっぱりそうだよね……っていうかユウくん、妙に詳しいね?」


雨妹ユイメイは自分から頼っておきながら、ここまで宇に介護関連の知識があるとは思っていなかった。

 問われた宇が「ふっふっふ」と笑みを漏らす。


「実はその手の事業をしたことがあるもんね!」


なんと、宇は前世で裏稼業だけをしていたわけではなかったらしい。

 道理で詳しいはずである。


「歩行器とはなんだ?」


尋ねる胡天フー・ティエンに歩行器のなんたるかを説明すれば、彼はいちいち頷いて木簡に書き込んでいく。

 そう複雑な作りでもないので、すぐにでも作ってもらえるだろう。


「で、身体に合った杖もいると思うんだよね。

 この国じゃあ杖って案外作りが雑で、大きさとかに無頓着だし」

「確かに杖にも、握りやすさとか重さとか、色々あるかぁ」


足の歩行機能に問題ないとはいえ、やはり身体の均衡が悪いのが通常なので、歩けば人よりも疲れやすい。

 残った腕に杖を持つことで、身体を支えて休むことができるようになるのだ。

 今も一応ジャヤンタに杖を渡しているものの、その大きさが彼に合っているとは言い難い。

 ちなみにこのように雨妹と宇が話し合っている間、ジャヤンタはフェイに拘束されてから、胡天に身体の大きさを詳細に測られていた。

 以前は身体に触れられるだけで大仰に騒いでいたが、今はとても大人しい。

 気持が落ち着いたのと、騒げば余計にややこしくなると学習したのと、両方かもしれない。


「杖は一時期凝っていたことがあるんで、ササッと作れるぞ」


ジャヤンタの手の大きさを計っていた胡天が顔を上げて自慢げに言うが、杖の一体なにに凝るのだろうか?

 仕込み杖とかかもしれないが、一体誰がそれを使うのだろうか?

 それになんとなくロマンを感じてしまう雨妹なのであった。

 それから話を詰めて、ジャヤンタの移動のために早急に必要なのは、揺れの少ない軒車だろうということになった。

 これへの対策として、軒車の車輪を四つに増やすことにした。

 二輪に比べれば安定感が増すので、乗り心地もずいぶんと違うはずだ。

 胡天にとって車とは二輪であるという常識があり、四輪にする発想がなかったらしい。

 しかし四輪の車の安定感を知っている雨妹と宇から激推しされ、「三輪車を作ったのだから四輪車があってもいいと」雨妹が言うと、「それもそうか」と納得していた。

 四輪に改造する軒車については、そもそもこの話の依頼主である沈が用意してくれるだろう。

 あとはさらなる衝撃対策として、軒車の中にたくさん座具を敷き詰めるか、いっそ寝台軒車にしてしまうという手もある。


「よし、では早速設計図を描いてみよう」


胡天の中で四輪軒車の想像図ができたのか、その顔がやる気に満ちていた。

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