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544話 ワンオペはダメ、絶対

リフィとジャヤンタのこじれた関係を強引に解決しようと試みた、翌日。


「酷い目にあった……」


ユウが連れてきた胡天フー・ティエンが多少元気になったようで、若干ヨレヨレながらも友仁ユレンに挨拶をしにやって来た。

 雨妹ユイメイとは、佳で会って以来の一年ぶりの再会だ。


「友仁殿下、こちらは黄家の利民様のご友人で、新しいものを作るのが得意な胡天さんです」

「友仁殿下にお目にかかれ、光栄でこざいます」

雨妹が友仁に紹介してから、胡天が膝をついて礼をとる。


「楽にしてね。

 雨妹からあなたの話を聞いて、会うのを楽しみにしていたんだ」


友仁がそう言いながらニコニコと微笑むのは、自分専用の三輪車を作ってもらおうと考えているのかもしれない。

 後宮で何度か雨妹が乗っているところを目撃した際に、友仁はすごく羨ましがっていたのだ。

 胡天には、力の弱い子ども用の軽い三輪車をぜひ開発してほしい。

 まずは胡安フー・アンにお茶を淹れてもらって喉を潤わせたところで、雨妹は胡天に尋ねる。


「馬を飛ばして来たんですって?」


これに、胡天が死んだ魚のような目になる。


「利民から急かされて馬の背に括りつけられ、荷物みたいに運ばれてきたんだ」

「それは、ご愁傷さまでした」


なんとも可哀想な胡天を、雨妹は拝むようにした。



それから、早速ジャヤンタとの面会となる。

 ジャヤンタはリフィから身を隠す必要がなくなったものの、狙われていたことには変わりないため、やはり隠し通路を使って移動する部屋となった。

 この離宮の隠し通路がどこまで敵に知られているかわからないが、入りやすい場所よりはマシだろうというリュの意見が採用された形である。

 だが、リフィを誤魔化す手間が省けたために、友仁の同行は必要なくなった。

 代わりに同行したのが宇だ。

 ジャヤンタ回復のための意見が欲しいからである。

 というわけで、雨妹とお目付け役の立勇、胡天と宇、そしてフェイという面子でジャヤンタの部屋へ向かった。

 呂はあまり飛に自由にうろつかれたくないようで、通訳係を押し付けてじっとさせるつもりらしい。


「こりゃあ、ずいぶんと痩せちまっているなぁ。

 元は立派な肉体だったんだろうに」


ジャヤンタと対面をした胡天が、その身体を見ての感想がそれだった。

 確かに元々痩せている人と、筋肉モリモリだった人が急にやせた人とでは、見た目に違いが現れる。

 元は痩せていない人が痩せると、どうしても皮膚がシワシワになってしまうのだ。


「ウチの公主様よりもさらに痩せているし、これだと移動が難しいな。

 移動できるような身体になるのを待てば、いつになることやら」

「身体を鍛えてもらうのは当然やってもらうとして、軒車を改造するほうが早そうじゃなぁい?」


胡天のボヤキに、宇がそう助言すると、次に雨妹に目をやる。


「身体の均衡をとれていないよね?」


怪我のせいで片腕がないことでの不便とは、使える手が一つ無いという以外に、左右の重さが違うので、動きの均衡がとりにくいという点がある。

 もちろん、均衡を取りながら歩く訓練も必要になるが、ジャヤンタの場合は歩く足の筋肉も弱っている。


「つい最近まで寝たきりだった人だもんねぇ」

「それでも、ここまでとはね。

 雨妹さんが一人じゃあお手上げなの、わかるなぁ」


そう述べた宇が、雨妹へ同情するように目を向ける。


「あれでしょ、胡天さんから道中にちょっとだけ聞いたけれど、公主様はすごく素直に話を聞いてくれた感じだったんでしょ?」

「そう、そこなんだよ」


雨妹は基本的に我儘王子なジャヤンタとまず意思疎通をするのにすごく気力がいるため、より具体的な改善策を考えるまで気合が続かないというのが正直なところであった。

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